双子の妹は私から全てを奪う予定でいたらしい

佐倉ミズキ

文字の大きさ
上 下
1 / 1

最後に笑うのは…?

しおりを挟む
双子の妹、リリアナは小さい頃から私のものを奪うのが大好きだった。
お人形に靴、ドレスに好きな人。
それは数えきれないくらい。

お父様もお母様も「姉なんだから我慢しなさい」とばかり言って、私は自分のものをいつもリリアナにあげてばかりだった。

「見てお姉様。やっぱり私の方が似合うわ」

私が注文した新作ドレスも、さっそくリリアナが目を付けた。
どうしてこんなに違うのだろう。
私と同じ容姿なのに、リリアナははつらつとしていて笑顔が可愛い。
地味で本ばかり読んでいる私とは正反対だった。

「お姉様、私結婚が決まりましたの。侯爵家のエリオット様ですわ」
「エリオット様って……」
「そう、お姉様の婚約者でしたわよね。でもエリオット様がどうしても私が良いとおっしゃるの。仕方ないでしょう」

リリアナは私と同じ顔で、キラキラとした表情を見せる。

「私の方がお姉様よりも良いって、ね」

ふふっと微笑む笑顔は、満足感で満ちていた。

また、か。
私は度重なる妹からの仕打ちに、疲れていた。
もう、好きにすればいい。
幸いなのは、エリオット様を愛する前で良かった。

「わかったわ、おめでとう」
「ごめんなさいね、お姉様」

そうしてリリアナは、最後に私から人生の配慮となる婚約者を奪って家を出て行った。
そして、見せつける様に盛大な結婚式を挙げたのだ。

それから一年後。

「どういうことなの!」

リリアナは顔を真っ赤にして両親に怒鳴っている。
悔しくて悔しくてたまらないといった表情だ。
そうだろう。リリアナは私に勝つことが生きがいだった。
侯爵家に嫁いだ自分と、独身の姉。
それだけでも満足していたのに……。
リリアナは予想だにしなかった出来事に混乱しているようだった。

「なにを起こる? 喜ぶところではないか」

そう言う両親は誇らしげで、嬉しそうにしている。
リリアナは肩で息をしていたが、落ち着かせると微笑みながら振り返った。

「私は姉と同じ顔です。姉でも良いなら私でもよろしいでしょう。お望みならば夫とは離縁いたします。きっとあなた様にも姉より全てが優れた私の方がふさわしいかと……!」

リリアナは私の隣に立つ婚約者に自分をアピールしだした。
夫と離縁したまで私から奪おうというのか。
しかし、私の隣に立つ婚約者は愛おし気に私を見下ろした。

「同じ顔でも、俺はマリアンナの優しい心根に引かれた。俺はマリアンナを愛しているのだ。人のものを欲しがり奪うような君ではなくて……ね」

見目美しい私の婚約者にそう言われて、言葉をなくすリリアナ。

「リリアナ、陛下の前で頭が高いのではなくて?」

私が静かにそう言うと、さらに顔を真っ青にした。

「妹よ。これからは滅多に合うことはないけれど、私は陛下のため国民のために王妃として尽力していくわ。元気でね」

私がそう言って微笑むと、リリアナは膝から崩れ落ちた。
そう。
私はこの国の国王陛下に見初められ結婚する。
これから王妃となるのだ。
私はリリアナの前にしゃがんでこう言った。

「まだ頭が高いわ……。これからは私を王妃様と呼ぶように」

心の中で、ざまぁみろと笑った。
私はもう奪われることはない。
これからはもう、リリアナが私から奪えるものなど何一つないのだ。


END


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

〖完結〗妹は私の物が大好きなようです。

藍川みいな
恋愛
カサブランカ侯爵家に双子として生まれた、姉のブレアと妹のマリベル。 妹は姉の物を全て欲しがり、全て譲ってきたブレア。 ある日、ダリアル公爵家長男のエルヴィンとの縁談が来た。 ダリアル公爵は姉のブレアを名指しし、ブレアとエルヴィンは婚約をした。 だが、マリベルはブレアの婚約者エルヴィンを欲しがり、ブレアを地下に閉じこめ、ブレアになりすまし結婚した...。 主人公ブレアがあまり出てきません。 本編6話+番外編1話で完結です。 毎日0時更新。

〖完結〗親友だと思っていた彼女が、私の婚約者を奪おうとしたのですが……

藍川みいな
恋愛
大好きな親友のマギーは、私のことを親友だなんて思っていなかった。私は引き立て役だと言い、私の婚約者を奪ったと告げた。 婚約者と親友をいっぺんに失い、失意のどん底だった私に、婚約者の彼から贈り物と共に手紙が届く。 その手紙を読んだ私は、婚約発表が行われる会場へと急ぐ。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 前編後編の、二話で完結になります。 小説家になろう様にも投稿しています。

【短編】可愛い妹の子が欲しいと婚約破棄されました。失敗品の私はどうなっても構わないのですか?

五月ふう
恋愛
「お姉様。やっぱりシトラ様は、お姉様ではなく私の子供が産みたいって!」 エレリアの5歳下の妹ビアナ・シューベルはエレリアの婚約者であるシトラ・ガイゼルの腕を組んでそう言った。 父親にとって失敗作の娘であるエレリアと、宝物であるビアナ。妹はいつもエレリアから大切なものを奪うのだ。 ねぇ、そんなの許せないよ?

【片思いの5年間】婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。

五月ふう
恋愛
「君を愛するつもりも婚約者として扱うつもりもないーー。」 婚約者であるアレックス王子が婚約初日に私にいった言葉だ。 愛されず、婚約者として扱われない。つまり自由ってことですかーー? それって最高じゃないですか。 ずっとそう思っていた私が、王子様に溺愛されるまでの物語。 この作品は 「婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。」のスピンオフ作品となっています。 どちらの作品から読んでも楽しめるようになっています。気になる方は是非上記の作品も手にとってみてください。

妾を正妃にするから婚約破棄してくれないかと言われました。

五月ふう
恋愛
妾を正妃にしたいから、婚約破棄してくれないか?王は、身を粉にして王のために働いていたウィリにそう言った。ウィリには、もう帰る場所がないのに。

〖完結〗旦那様には本命がいるようですので、復讐してからお別れします。

藍川みいな
恋愛
憧れのセイバン・スコフィールド侯爵に嫁いだ伯爵令嬢のレイチェルは、良い妻になろうと努力していた。 だがセイバンには結婚前から付き合っていた女性がいて、レイチェルとの結婚はお金の為だった。 レイチェルには指一本触れることもなく、愛人の家に入り浸るセイバンと離縁を決意したレイチェルだったが、愛人からお金が必要だから離縁はしないでと言われる。 レイチェルは身勝手な愛人とセイバンに、反撃を開始するのだった。 設定はゆるゆるです。 本編10話で完結になります。

【短編】婚約破棄した元婚約者の恋人が招いていないのにダンスパーティーに来ました。

五月ふう
恋愛
王子レンはアイナの婚約者であった。しかし、レンはヒロインのナミと出会いアイナを冷遇するようになった。なんとかレンを自分に引き留めようと奮闘するも、うまく行かない。ついに婚約破棄となってしまう。

〖完結〗仮面をつけさせられた令嬢は義姉に婚約者を奪われましたが、公爵令息様と幸せになります。

藍川みいな
恋愛
「マリアは醜くて、見ていられないわ。今日から、この仮面をつけなさい。」 5歳の時に、叔母から渡された仮面。その仮面を17歳になった今も、人前で外すことは許されずに、ずっとつけています。両親は私が5歳の時に亡くなり、私は叔父夫婦の養子になりました。 私の婚約者のブライアン様は、学園ダンスパーティーで婚約を破棄して、お義姉様との婚約を発表するようですが、ブライアン様なんていりません。婚約破棄されるダンスパーティーで、私が継ぐはずだったものを取り戻そうと思います! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 現実の世界のお話ではないので、細かい事を気にせず、気楽に読んで頂けたらと思います。 全7話で完結になります。

処理中です...