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6.甘いキス

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「なにを読んでいるんだ?」

セシリアが王宮の図書室で本を読んでいると、後ろから声をかけられた。
振り返るとアレンが微笑みながら立っている。

「陛下」

アレンの姿に思わず笑みがこぼれる。

「オリアは?」
「こちらにおります」

図書室の二階でオリアが手を挙げた。

「今、二階の本で良いのがないか見繕ってもらっているんです」
「そうか。今は歴史書を読んでいるのか。それならこっちもおすすめだ」

セシリアの手にある本を見た後、高い位置にあるおすすめの本を取ると手渡してくれた。

「ありがとうございます」
「王宮のしきたり、国や政治、他国のことなど学ぼうとしてくれているんだって?」
「はい。今まで学んだこと以外にも知らないことが多くて……」

式の準備の合間に、先生をつけて少しずつ多くを教えてもらっていた。

「王妃になるなら、国民のためにも学ばないと。何も知らなかったなんて、王妃の立場で言えません」
「そうか」

アレンは嬉しそうに微笑みながらセシリアの頬を撫でる。

「とても良いことだが、あまり根を詰めてはいけないよ。……少し熱っぽいのでは?」
「え?」

特に体調の変化はないが、言われてみれば少し体が熱かった。

「慣れない生活に疲れが出たんだろう。今日は部屋で休むといい」

アレンは「オリア」と二階にいるオリアに声をかける。

「俺たちは先に部屋に戻る。本は後で届けてくれ」
「かしこまりました」

オリアの返事を聞くと、アレンはヒョイッとセシリアを軽々と横抱きに持ち上げた。

「きゃぁぁ。陛下、重いのでお離しください!」
「これで重いとか言ったら、俺は再度鍛えなおさないといけなくなる」

アレンはアハハと笑うと、図書室を出て部屋へ向かった。
その鍛え上げられた腕や体を感じる。端正な綺麗な顔も目の前にあり、セシリアは思わず顔を両手で隠した。

「どうした?」
「見ないでください……。恥ずかしくて……」

照れるセシリアに、アレンは思わず足を止めた。

「セシリア、可愛いこと言わないでくれ。このまま君を食べてしまいたくなる」
「たっ……!」

それがどういう意味か、さすがのセシリアもわかった。
アレンの瞳が欲情を含んでいたからだ。

「式まで長いな」

アレンはため息をつきながら歩きだし、部屋に到着すると、セシリアをベッドにゆっくりと降ろした。
そして、覆いかぶさりながらセシリアの頬や髪を愛おしそうに撫でた。

「陛下……」
「アレンでいい」
「……アレン様」
「セシリア、少しだけ味見をさせてくれ」

そう言うと、アレンはゆっくりと顔を近づけセシリアと唇を重ねた。
驚いてビクッと肩を震わせるが、次第に気持ちが良くなり強張った体も力が抜けていくのを感じる。
角度を変えながら、緩急をつけ何度も唇を合わせた。

「んっ……」

合間に思わず甘い声が出て、セシリア自身も驚いた。

「はぁ……、これ以上はだめだな……」

アレンは唇を離すと、切なそうに呟いた。

「これ以上は、俺も抑えが聞かなくなる」
「はい……」
「続きはまたな」

アレンは妖艶に微笑むと、セシリアの上から体をどかして部屋を出て行った。
ひとり残されたセシリアは息を整えながら放心状態だ。
そっと唇に触れる。そこはまだ湿っていた。

(あれ、キス……よね? 私アレン様とキスしちゃったの?)

自分でも聞こえるくらいに心臓がドキンドキンと鳴ってうるさい。
セシリアはうわぁぁとベッドの上でバタバタと身をよじった。

(どうしよう、キスだけでこんなに胸が苦しくなるなんて知らなかった……。でももっとキスして欲しかった。はしたないって思われるかもしれないけど……でも……)

ぎゅっとクッションを抱きしめる。

(アレン様が好きだもの……。もっと触れてほしいわ……)

ガルには抱かなかった、この強い気持ち。
セシリアはアレンをいつの間にか好きになっていた。





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