スキル『モデラー』で異世界プラモ無双!? プラモデル愛好家の高校生が異世界転移したら、持っていたスキルは戦闘と無関係なものたったひとつでした

大豆茶

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【三章】技術大国プラセリア

54.リンの救出

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「ぐぉぉぉーーーっ!!」

 ガオウの絶叫が鼓膜を揺らす。

 砲撃は見事巨人を撃ち貫き、轟々とした激しい魔力の奔流は空の彼方へと消え、音だけが残響となって木霊していた。
 砲撃をまともにくらった巨人はというと、上半身と下半身を完全に分断され、地に伏していた。
 巨人の体を構成していた泥は、主を失ったかのようにどろどろと重力に従い地面へと広がっている。

「……やったのか?」

 いや、本体である魔動人形は頭部に位置していたので、戦闘不能にはなっていないはずだ。
 だがさっきからぴくりとも動かない。ショックで気絶しているのだろうか?

「なんにせよ、今がチャンス……だな。――ッ! くそ、頭痛が……!」

 あと少し魔動人形が動けばとどめを刺せたのだが、もう魔力が限界のようだった。回復しようにもポーションはすべて使用してしまっている。
 なにもしていない状態でも魔力を放出し続けてしまうため、俺はやむを得ずシルバライザーから降りる判断をした。危険だが気絶するよりかはいいだろう。

 魔動人形から降りた瞬間、バイクの駆動音が俺の耳へと届く。

「乗れ!」

「おわっ!?」

 バイクに乗ってこちらへと走ってきたカティアに腕を掴まれ、そのまま後ろに座らせられた。
 ……ったく、相変わらず無茶苦茶するなあ。

 でも時間的猶予が少ないのも確かだ。ガオウの魔動人形がいつ動き出すかわからない。それまでにリンを救出すればイマジナリークラフターの機能が使えなくなるので、勝ち筋が見えてくる。

「手荒ですまねぇな。仲間のことが気掛かりだろうが、まだ終わったわけじゃねぇ」

「……ああ、わかってる」

 ワルキューレは倒れたまま動かない。どうやらシルヴィアは気を失っているようだ。怪我はしていないはずだが、無理をさせてしまったので容態が心配だ。
 当然フラムのことも気掛かりだ。巨人の攻撃をまともにくらっていたので、かなり損傷しているはず。それに、二次選考で一緒だった皆の安否も確認したい。

 ……だが、それらはすべてが終わってからだ。
 カティアの言うとおり、今は一刻も早くリンを救出することを優先すべきなのだ。そうしなければ、リンを救うため共に戦った仲間の想いを裏切ることになる。

「――っ! あれだ、あの中にリンがいるはずだ!」

 巨人だったものへと近付くと、ガオウの魔動人形が横たわっているすぐ傍に、人間大の球体が転がっていた。
 俺とカティアはバイクを降り、膝下までに及ぶ泥でぬかるんだ道を掻き分けながら球体へと歩を進める。

「リンっ! リンっ!」

 身体能力の差で、カティアが先に球体へと辿り着き、必死でリンへと呼びかける。
 だが、球体からはなにひとつ反応はなかった。業を煮やしたカティアは、球体の開閉口がないかを確認するも、とっかかりのひとつすらないことに絶望する。

「――っくそ! くそっ! 目の前にリンがいるってのに、どうにもならないのかよっ!」

 悔しさのあまりか、何度も、何度も、カティアは力いっぱい球体へと拳を打ち付ける。その手からは、血が滴り落ちていた。

「やめろカティア! 素手じゃ無理だって!」

 ようやく追い付いた俺は、カティアを羽交い締めにして動きを止めさせた。
 カティアも無駄なことだと頭では理解していたのだろう。抵抗するでもなく、すぐにすっと力を抜いた。

「――すまねぇ、頭に血が上っちまった。でもよケイタ、どうすんだよこれ」

「……とりあえず、動かせないか試してみよう。どんなに硬くて重かろうが、球体だし少しでも動けばそのまま転がせるかもしれない」

 とりあえずこの場から遠ざかろうと、カティアとふたりで球体を押し出してみようと試みた。

「いくぞ、せーのっ……! むっ、ぐぐぐぐっ……!」

 あまり立派ではない筋肉を総動員して、全力で球体を押してみるが、まるでびくともしない。やはり泥の抵抗があって動かすのは無理なのだろうか。

 カティアも全体重をかけて目一杯押しているが、ふたりの努力は一向に報われることはなかった。

「はぁ、はぁ……クソッ、びくともしやがらねぇ……!」

「やっぱ、泥の……せいか? はぁ……はぁ」

 短時間とはいえ、全力故にかなり疲労感がある。ふたりとも息も絶え絶えになって、額に汗がにじんでいる。

 こうなればもう人力ではどうしようもない。俺の魔動人形が使えるようになるまで待つしかないのか?
 ……いや、ただ無為な時間を過ごすのはやめよう。敵の魔動人形が動き出しかねないんだ、余裕ぶってる場合じゃない。だとすれば他にどんな手段を用いればいいのだろうか。

 ふと、ある案が思い浮かぶ。

「……そうだ、中からならどうだ? リンの意識が戻れば、可能性はあるかもしれない」

「そうだな……この球体はガオウの魔動人形が作り出したものだから、中から開くかはわからねぇけど、まだそっちの方がなんとかなりそうだな。で、リンを起こす方法はどうするんだ?」

 ……提案したのはいいけど、その方法まではまったく考えてなかった。というか、リンは気を失ってるのだろうか。それとも眠っている……?
 中からなにも反応がないのでどちらかだとは思うけど、そのへんの状況はどうだったんだろう。

 とりあえずその場に居合わせただろうカティアに聞いてみよう。

「なあカティア、そもそもリンは眠っているのか? だとしても、それなりに時間は経っているだろうし、それなりに衝撃もあっただろう。それなら目覚めていてもおかしくないんじゃないか?」

「それはたぶん……そうだな、ケイタには話しておきたい。オレがリンを助けに行ったとき――――」

 カティアはGODS本社で起きたことを、神妙な面持ちで話し始めた。
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