104 / 120
【三章】技術大国プラセリア
53.Fire
しおりを挟む※
「フラムーーッ!!」
一連の流れを見ていた俺は、叫び声を上げた。
巨体のわりに素早い巨人の動きに照準がついていかず、ここまでかと諦めかけた俺の背中を押すように、フラムは決死の覚悟で隙を作り出してくれたのだ。
今すぐに彼女らの救出に向かいたいという気持ちを抑えて、唇を噛みながら魔轟砲を巨人へと構える。
このとき、魔力の充填率は既に百パーセントへ達していた。よし、これなら撃てる……!
「な――めるなぁぁぁ!!」
ガオウの咆哮に呼応して、巨人が吠える。
気が付けば巨人の左腕が大きな銃を形取っていた。そして間髪をいれずに銃口から魔力弾が連射される。
「くっ、見えない!?」
視界を覆うほどの高密度の弾幕によって、巨人の姿をはっきりと確認できなくなってしまう。
このトリガーを引けば、迫り来る弾幕を吹き飛ばし、致命の一撃を与えることができる。根拠はないが、そう確信めいたものを感じている。
でも、視界が奪われた状態で撃つことはできない。リンが巨人に囚われているので、少しでも当たりどころが悪ければリンをも巻き込んでしまう恐れがあるからだ。
「くっ、そぉぉぉっ――」
トリガーを引けないだけならまだいい。問題は眼前に迫る無数の魔力弾。これを凌がなければ終わりだ。
シルバライザーは防御行動が取れない。そうなるとワルキューレに防御を任せるしかないのだが、いくら優れた盾を持っていようとも、この量の弾幕をすべて防ぎきるのは不可能だろう。
ここまでか――なら、せめてシルヴィアだけでも逃げて欲しい。
そう口にしかけた瞬間だった。
「――アイギスっ! 私の全部をあげる。だから、愛する人を護るため……私に応えなさい!」
ワルキューレがシルバライザーを庇うように弾幕の前に立つ。そしてシルヴィアの覚悟に呼応するように、アイギスの周囲に魔法陣が展開されのだ。
まるで降り始めの雨がアスファルトへ色を付けるように、ぽつぽつと無作為に魔方陣は数を増やしていき、やがて幾重もの魔法陣が重なった一枚の大きな壁となる。
なんて綺麗なんだ――。
極彩色の魔方陣に敵の魔力弾が触れると、魔力が拡散し、淡い光を放つ霧となる。その光景はなんだか幻想的で、思わず見惚れてしまうほどだった。
魔力弾がいくら衝突してもびくともせず、刹那の時が流れた。
やがて攻撃は収まり、アイギスは流れ弾のひとつもなく、完璧に巨人の攻撃を防ぎきったのだ。
「……っ、お返しします!」
シルヴィアの声とともに、霧散していた魔力が盾の宝玉付近へ一点集中し、大きな魔力の塊となって巨人へと撃ち返される。
受けた魔力を霧散させ、さらにその魔力を利用して反撃する……ははっ、なんだそれ。チート装備じゃないか。
「ぐっ、おおおっ!?」
まさかあれだけの攻撃が反射されるとは思っていなかったのだろう。ガオウは驚きのあまり叫んだ。
そして反射された魔力弾は、まだ無傷だった巨人の片足へ直撃した。これでフラムの攻撃したもう片足と合わせて、巨人の機動力は大幅に低減している状態だ。
「やったぞシルヴィア! すごいじゃないか!」
「あ……りがとうございます。ケイタさん、あとは……よろしくお願いしま……す」
「シルヴィア……!?」
シルヴィアの声は明らかに憔悴しきっていた。
まさか、アイギスを使った代償なのか?
……くそっ、なにがチート装備だ。楽観視しすぎだろ、俺。そもそもシルヴィアは使いこなせないって言ってたんだ。無理してないわけないだろうが……!
「ケイタさん……! 今ですっ……!」
「――っ」
ワルキューレは、最後の力を振り絞るようにして横へと倒れ込み、射線をあけた。
シルヴィアのことは心配だが、彼女らが作ってくれたこのチャンスを無駄にするわけにはいかない。
狙うは巨人の腹部。その土手っ腹に風穴開けてやるよ!
「魔轟砲、フルチャージバースト! おおおっ、いっ――けぇぇぇぇぇぇっ!!」
狙いを定め、トリガーを引く。
甲高い音とともに、魔轟砲内部に充填されていた魔力が銃口へと集束し、極太の光線となって放たれた。
「ぐっ、――おおおっ!」
凄まじい反動が操縦席に伝わり、姿勢を崩しそうになる。だが俺は歯を食い縛り、スフィアから手を離さないように踏ん張った。
きしきしと軋む音が聞こえるほどの強い反動のなか、俺の目は、狙いどおりに巨人の腹部へ真っ直ぐ突き進む砲撃を捉えていた。
フラムの決死の攻撃、そしてシルヴィアのカウンター攻撃。それらを立て続けに足に受け、機動力を奪われた巨人には、すぐに対応できるだけの余力がなかったのだろう。
おもむろに両腕を突き出し、砲撃を防ごうとしたようだが、そんなことではもう止まらない。
轟々と吠える砲撃は、抵抗などなかったように腕ごと巨人の体を貫いた。
4
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜
上村 俊貴
ファンタジー
【あらすじ】
普通に事務職で働いていた成人男性の如月真也(きさらぎしんや)は、ある朝目覚めたら異世界だった上に女になっていた。一緒に牢屋に閉じ込められていた謎のしゃべるうさぎと協力して脱出した真也改めマヤは、冒険者となって異世界を暮らしていくこととなる。帰る方法もわからないし特別帰りたいわけでもないマヤは、しゃべるうさぎ改めマッシュのさらわれた家族を救出すること当面の目標に、冒険を始めるのだった。
(しばらく本人も周りも気が付きませんが、実は最強の魔物使い(本人の戦闘力自体はほぼゼロ)だったことに気がついて、魔物たちと一緒に色々無双していきます)
【キャラクター】
マヤ
・主人公(元は如月真也という名前の男)
・銀髪翠眼の少女
・魔物使い
マッシュ
・しゃべるうさぎ
・もふもふ
・高位の魔物らしい
オリガ
・ダークエルフ
・黒髪金眼で褐色肌
・魔力と魔法がすごい
【作者から】
毎日投稿を目指してがんばります。
わかりやすく面白くを心がけるのでぼーっと読みたい人にはおすすめかも?
それでは気が向いた時にでもお付き合いください〜。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる