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【三章】技術大国プラセリア

51.回復手段

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「――ッッッ!?」

 ドクン、と心臓が跳ね上がる。
 まずい、気付かれたか……?

 ただ巨人がこちら側を向いただけだったが、どうしようもない不安に駆られる。

 そして、そういうときの嫌な予感ってのは大概当たるものだ。

 巨人の腕がゆっくりと、しかし間違いなく俺を目掛けて伸ばされた。

「――まずっ」

 巨人の手が煌めく。ノータイムで放たれた魔力弾は、この距離にもかかわらず真っ直ぐと俺へと飛来する。

 直撃する――そう思った瞬間、ワルキューレが間に割って入った。

「――はあっ!」

 シルヴィアの掛け声とともに、ワルキューレは手に持った盾で魔力弾を

 しかし、その魔力弾は持ち主に返ることなく、巨人の頭上を越えていく。

「大丈夫ですケイタさん。あの程度の攻撃、百発きたってへっちゃらですよ」

「お、おう……」

 百発はさすがに誇張しすぎだとは思うけど……それより、弾を跳ね返した……?
 疑問に思いワルキューレの持つ盾を見ると、俺の見知っているものとは違うものだった。
 
「それは……まさか?」

「はい、アイギスです。……と、言っても私じゃその力を全て引き出すことはできませんが、それでも優秀な盾です」

 ワルキューレの持つ円形の盾、アイギス。シルヴィアの家の家宝であり、過去の大戦で活躍したという曰く付きだ。
 白銀煌めくその盾は、見るものを惹き付けるようなどこか神秘的な印象がある。
 盾の中央には大きなひし形をした紺碧の宝玉が埋め込まれており、それを囲むようにして三つの淡い緑色の宝玉が散りばめられている。
 
 一見して普通の盾ではないことが伺える。自分のことに集中しすぎて、ワルキューレの装備が違うことにまったく気が付かなかった。

「シルバライザーへの攻撃は私が防ぎます。ケイタさんは魔轟砲に集中しててください」

「わかった、頼りにしてるよ」

 力を引き出せていないと言っていたが、それでも優秀な性能の盾であるのは間違いなく、とても頼もしく思う。

 だがあの巨人の攻撃があれしきで終わるなどとは思えない。
 そう考えていると、案の定、巨人はこちらへとターゲット変更したようだった。攻撃を跳ね返されたことに苛立ちを覚えたのだろうか。

 一歩、また一歩と大地を揺らしながら接近してくる。
 俺が魔轟砲を構えているのは視認できているはずだが、射線から外れるのでもなく、真っ直ぐと歩みを進めている。

 たとえ撃たれても防ぎきる自信があるのか、それともチャージ率が足りていないことを察しているのか、あるいは両者か。理由はわからないけど、俺たちにとってその驕りは都合がいい。

 しかし位置がバレてしまった以上、躊躇っている余裕も時間もない。限界突破を使うしか方法は残されていないのだ。

「くそっ、せめて魔力を回復する手段があれば……!」

 怪我ならポーションを使えばなんとかなるんだけどな……。

 ――――ん?
 ポーション……?

「ああああああっ!?」

 そうだそうだそうだっ!
 手に入れていたじゃないか、【初心者魔力ポーション】!
 
 あまりに使わなすぎて忘れていた。カティアにポーションを使ったときにも目に入っていたはずなのに、迂闊すぎる……!

「――ああいや、後悔は後回しだ! どのぐらいの効果があるかはわからないけど、たしか十個あったはずだから、もしかしたら全回復できるかもしれない」

 俺は慌ててスマホのアイテムボックス機能を使い、魔力ポーションをひとつ取り出し、一気に飲み干した。

 すると、いままであった倦怠感と軽い頭痛がすっと抜けていく心地よい感覚があった。
 
 ……よし、魔力が回復している。
 頭痛などの原因は魔力が枯渇しかけていたためだ。それが消えたので、間違いなく魔力が回復しているのが体感できる。

「これならっ、限界突破!!」

 俺はすかさず限界突破を発動させる。
 そして全魔力を魔轟砲へと注入。すると、みるみるうちに魔力が充填されていく。

「三十……四十……よっし! これなら――――つっ!」

 物凄い勢いでチャージ率が伸び、いよいよ五十に差し掛かろうとしていたその時、頭に鋭い痛みが走る。

「くっ、まずい、早くポーションを飲まないと……!」

 不調を感じ、俺は急いで二本目の魔力ポーションを飲み干した。
 そのおかけで痛みは引いたが、思っていたより消耗が激しい。
 少しでも体調に違和感が出たらすぐに魔力ポーションを摂れるように、片手は常に空けておくとしよう。

 あとは、あの巨人が来るまでにどれだけチャージができるかだ――。



 
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