スキル『モデラー』で異世界プラモ無双!? プラモデル愛好家の高校生が異世界転移したら、持っていたスキルは戦闘と無関係なものたったひとつでした

大豆茶

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【三章】技術大国プラセリア

27.激昂

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「――なにっ!?」

 ほぼ同時に放たれた攻撃であったが、またしてもバリアに防がれてしまった。
 俺の大型ライフルもさることながら、他の二人も決して軽い攻撃ではなかった。仕留めるつもりで撃ったのは間違いない。

 それなのに――――

「なんでまだバリアがあるんだよ……! 魔力で発動するバリアじゃないのか!?」

 あれだけの攻撃をしたのにも関わらず、まだバリアを張るだけの魔力があるというのだろうか。仮に金等級ゴールドグレードのコアでさえそこまでの魔力容量はないはずだ。

(まさか白金等級プラチナムグレードなのか……?)

「ウフフ……不思議そうねぇ、さっきので全滅しなかったことを評価してイイコトを教えてあげるわぁ。このピーコックキマイラはワタシの研究の結晶。銀等級シルバーグレードの魔動人形のコアを十体分繋ぎ合わせることに成功しているの。その魔力総量は白金等級相当。アナタたちが乗っている一般等級コモングレード四、五十体分……ってとこかしら?」

「な……!?」

 あの異形の姿はコアを無理矢理繋ぎ合わせているが故だったのか。だがその結果として、圧倒的な魔力量で常時バリアを展開でき、なおかつあんな馬鹿げた連続攻撃を繰り出せたのだ。
 余裕そうな口振りから、まだまだ余力があるのは想像に難くない。

「なら接近するまでじゃ! ワシが攪乱する、ついてこい坊主ども!」

「――了解!」

 ゴードンさんの言うとおり、接近戦ならばバリアも無力化できるだろう。
 そしてゴードンさんの機体、『ベクタキャリアー』は攪乱役に最適だ。その見た目はいわゆるスーパーデフォルメに該当する。
 三頭身ほどの機体は、普通の魔動人形と比べるとその全長は半分程度。手足が短い分動きが細かく、小回りが利く。
 更にはゴードンさんの話によれば、重量が軽い分燃費がよく、継戦能力に長けているようだ。

 より遠く、より早く、この二つが求められる運送業を営むゴードンさんっぽい良い機体だ。

 俺はベクタキャリアーに続き、敵機への接近を試みる。

「無駄よ、無駄無駄ぁ! 散りなさい!」

 当然、接近を許すはずもなく迎撃が来る。再び無数の魔力弾が俺たちの進路を阻む。

「くっ! これじゃあ……!」

「ええい……! さすがに捌ききれんわい!」

 率先して前に出ることで囮になってくれているゴードンさんだったけど、数多もの魔力弾に襲われ後退を強いられる。俺とキールもその様子を見て足を止めるしかなかった。

 距離が近づけば近づくほどに被弾の可能性は高まっていく。俺の操縦技術では銃弾の雨を掻い潜り、接近することは不可能に近かった。
 実際に数発が直撃し、後付けの追加装甲パーツがいくつか破壊されてしまっている。

「おいじじい! このままじゃ無理だ、一旦立て直すぞ!」

「やむを得ぬか……!」

 近付けば倒せる可能性は十分にあると思うのだが、やはりそう簡単には接近させてくれない。
 今までは機体性能のおかげで、被弾覚悟の無茶ができてしまっていたのだが、今回の相手はそれを許してくれるほど生易しくなかった。

「俺が一斉射撃で撤退を援護します!」

 二人の機体も被弾してしまっていた。被弾数は俺より低いだろうが、防御力の差があるので決して無視できないダメージだ。
 そのため、一番ダメージが軽い俺が殿を買って出ることにした。

 肩、腕、脚に装着された一発限りの追加武装。それらを惜しみなく撃ち込む。それぐらいはしないと注意を引けないと判断したからだ。
 
「フフッ、無駄な足掻きは美しくないわよ――えっ!?」

 攻撃の大半がバリアによって防がれていたが、一つだけバリアを貫通した武装があった。
 左腕に搭載されていたグレネードを模した武装だ。魔力を内に込めた球体を射出し、三秒後に魔力爆発を起こすものだ。

 防げると思って油断していたのだろう。打ち落とすでも回避するでもなくグレネードが直撃し、コアの一つを破壊することができた。

(あのバリア……魔力による攻撃だけを防ぐのか? だから実弾はすり抜けた……接近を防ごうとしていたし、物理攻撃なら有効そうだな)

「――よくも」

「……え?」

 聞こえたのはドスの効いた声。発生源はピーコックキマイラだったのだが、今まで聞こえていた声色とはまったく異なったため、一瞬誰が喋ったのか判断できなかった。

「よくもワタシの美しい機体に傷をつけたわねぇぇぇぇぇぇっ!!」

 口調は変わらないが、興奮しているのか声色が低くなっていた。多分こちらが素なのだろう。
 美しさにこだわりがあるようだったので、機体が傷つけられたことが許せなかったようだ。

 ピーコックキマイラのコアが煌めき、コアの前面へ魔力が収束されていく。時を経るごとに、魔力の塊はその大きさを増していった。
 
「おいおい……マジかよ」

「消し飛べぇぇぇぇぇぇっ!」

 さっきまでの攻撃が連射力や面制圧に特化しているとしたら、今度の攻撃は破壊力と一点突破に重点を置いたものだろう。

 ピーコックキマイラから放たれた魔力弾の大きさは先までの数倍、当たれば間違いなく致命傷になるだろう。一発もくらうわけにはいかない。
 だが、数こそ減ってはいたが、その狙いは全て俺に向いていた――
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