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【三章】技術大国プラセリア
24.チームメンバー
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翌日、コンペティション第二選考参加のため、俺たちは指定された会場へと足を運んでいた。
「いよいよだな。さて、鬼が出るか蛇が出るか……」
「あぁ? 何言ってんだ、相手は魔物じゃなくて魔動人形だぞ?」
「おにじゃ! つよそー!」
「ははは……」
そりゃことわざ的なのは意味が伝わらないか。そしてリン、鬼と蛇は合体させちゃいけません。
「と、とにかく頑張ってくるから応援しててくれよな」
「うん、がんばってねケーくん! いぇーい!」
「ケイタ、ヤツらに目に物見せてやれ」
「おう、行ってくる」
リンとハイタッチを交わし、カティアと拳を合わせる。
気持ちを引き締めた俺は、外套のフードを目深に被り会場内へと進んだ。
控え室へと入ると、そこには他の参加者と思わしき人たちが既に揃っていた。
俺が入室すると同時に、ギロリと睨むような視線が送られてくる。
「――ど、どうも」
ざっと見渡すと俺を含めて全員で五名。このメンバーが今回のチームメイトのようだ。
背中に鳥のような羽を持つ男に、見た目が完全にゴリラの大柄な男、背の小さな老人、そしてやたらと胸がデカイ女の人と、なんとも個性豊かな顔ぶれだ。
「お主が最後の一人か。どこのモンじゃ?」
恐縮していた俺を見かねてか、老人が話しかけてきた。
「あ……俺はキャッツシーカーの代表で、ケイタ・サガミだ……です」
「ホッホッホ、あまり畏まらんでええわい。ワシらはこの場限りとはいえ仲間なんじゃからな。普段通りの話し方でええぞい。――それにしてもキャッツシーカーとな? 初耳じゃのう」
意外に友好的な反応をしてくれたので、少し心が軽くなった。
しかし、キャッツシーカーの名は世間には知られていないようだった。ほぼ無名のカンパニーが一次選考を突破したのが珍しいのだろう。
「……おっと、挨拶が遅れたのぅ。ワシはゴードン。ゴート運輸の社長じゃ」
「しゃ、社長……!」
「そう驚くことでもなかろう。カンパニーの看板をしょって来とるんじゃ、社長自らが出てるとこも珍しくないぞい」
(マジか……ってことは他の人たちも社長だったりするのか!?)
「のぅ? ゴリさんや」
「――うむ」
ゴードンさんに話を振られ、答えたのは見た目はまんま服を着たゴリラって感じの大柄な男。
座っていたのだが、返事をすると同時に立ち上がると、その身長は俺の倍近くあった。
ゴリさんと呼ばれた男はゆっくりと俺へと近付いてくる。圧迫感が尋常じゃない。
そして俺の目の前に立つと、俺の胴ぐらいの太さの豪腕を伸ばしてきた。
(な……なんだ!? そのままねじ切られるのか!?)
「――御離羅重工社長、ゴリヌスだ」
「ひぇっ……! ――え?」
大きな手が目の前に来たので、思わず小さな悲鳴をあげ、飛び退いてしまう。だけどゴリさんは握手を求めていただけのようで、俺がいなくなったことで宙ぶらりんになった手を力なく下げてしまった。
その表情は明らかに落ち込んでいた。それはそうだろう、挨拶をしただけなのに引かれてしまったら誰だっていい気分はしない。
「……坊主、気持ちはわからんでもないが、こう見えてゴリさんは繊細なんじゃ。それに気優しい。人を見た目で判断してはならんぞ」
ゴードンさんに囁かれ、俺ははっと息を飲む。失礼なことをしてしまったと心を改め、すぐさまゴリさんの元へと駆け寄り、俺の方から握手を求める。
「すいませんゴリさ……ゴリヌスさん。改めてよろしくお願いします」
「……ゴリでいい。皆そう呼ぶ」
「ゴリさん、頑張りましょう!」
ゴリさんと固い握手を交わし、親交が深まった気がした。
競合相手だし、もっと殺伐とした雰囲気かと想像していたが、思いの外友好的な対応に安心する。
「フフフ……次はアタイの番だね。アタイはアイシャ。カウベルファームってのを経営してるよ。よろしくね」
「よ、よろしく……」
動く度にバルンバルンと揺れる胸にどうしても視線が吸い寄せられてしまう。
その胸と頭部の角からして、多分牛の獣人だろう。
さて、最後の一人だが……この人は挨拶などするつもりはないようだ。そっぽを向いたままだんまりとしている。
「もう、キールったら……挨拶ぐらいしたらどうなの?」
「――馴れ合うつもりはない」
キールと呼ばれた男は、背中の翼で体を隠すようにしながら立っているだけで、こちらに一瞥もくれず、集中している様子だった。
「まったくもう……あ、ごめんなさいね。彼はキール。ブルースカイってカンパニーで働いているわ。アタイの幼馴染みなんだけどね、昔からこんなでさ。まあ悪いやつじゃないから気分を悪くしないでおくれよ」
「あ、いえ。気にしてないので大丈夫っす」
「ホッホッホ。まあ……何はともあれ、この五人で挑むんじゃ。開始までの時間、作戦会議をしておくべきじゃと思うんだが……?」
「賛成だ」
「そうね」
「はい」
「……好きにしろ」
作戦会議はこちらとしても是非しておきたい。
連携が取れるのとそうでないとでは、戦局にかなり影響するだろうからな。
その後三十分ほどの話し合いが行われた。約一名、非協力的ではあったが、邪魔をするでもなく、しっかりと聞いていた様子だったので多分問題ないだろう。
アイシャさんが「アイツはシャイなだけだから」と言っていたので、きっと作戦通りに動いてくれるはずだ。
そして、いよいよ本番の時が訪れようとしていた。
「いよいよだな。さて、鬼が出るか蛇が出るか……」
「あぁ? 何言ってんだ、相手は魔物じゃなくて魔動人形だぞ?」
「おにじゃ! つよそー!」
「ははは……」
そりゃことわざ的なのは意味が伝わらないか。そしてリン、鬼と蛇は合体させちゃいけません。
「と、とにかく頑張ってくるから応援しててくれよな」
「うん、がんばってねケーくん! いぇーい!」
「ケイタ、ヤツらに目に物見せてやれ」
「おう、行ってくる」
リンとハイタッチを交わし、カティアと拳を合わせる。
気持ちを引き締めた俺は、外套のフードを目深に被り会場内へと進んだ。
控え室へと入ると、そこには他の参加者と思わしき人たちが既に揃っていた。
俺が入室すると同時に、ギロリと睨むような視線が送られてくる。
「――ど、どうも」
ざっと見渡すと俺を含めて全員で五名。このメンバーが今回のチームメイトのようだ。
背中に鳥のような羽を持つ男に、見た目が完全にゴリラの大柄な男、背の小さな老人、そしてやたらと胸がデカイ女の人と、なんとも個性豊かな顔ぶれだ。
「お主が最後の一人か。どこのモンじゃ?」
恐縮していた俺を見かねてか、老人が話しかけてきた。
「あ……俺はキャッツシーカーの代表で、ケイタ・サガミだ……です」
「ホッホッホ、あまり畏まらんでええわい。ワシらはこの場限りとはいえ仲間なんじゃからな。普段通りの話し方でええぞい。――それにしてもキャッツシーカーとな? 初耳じゃのう」
意外に友好的な反応をしてくれたので、少し心が軽くなった。
しかし、キャッツシーカーの名は世間には知られていないようだった。ほぼ無名のカンパニーが一次選考を突破したのが珍しいのだろう。
「……おっと、挨拶が遅れたのぅ。ワシはゴードン。ゴート運輸の社長じゃ」
「しゃ、社長……!」
「そう驚くことでもなかろう。カンパニーの看板をしょって来とるんじゃ、社長自らが出てるとこも珍しくないぞい」
(マジか……ってことは他の人たちも社長だったりするのか!?)
「のぅ? ゴリさんや」
「――うむ」
ゴードンさんに話を振られ、答えたのは見た目はまんま服を着たゴリラって感じの大柄な男。
座っていたのだが、返事をすると同時に立ち上がると、その身長は俺の倍近くあった。
ゴリさんと呼ばれた男はゆっくりと俺へと近付いてくる。圧迫感が尋常じゃない。
そして俺の目の前に立つと、俺の胴ぐらいの太さの豪腕を伸ばしてきた。
(な……なんだ!? そのままねじ切られるのか!?)
「――御離羅重工社長、ゴリヌスだ」
「ひぇっ……! ――え?」
大きな手が目の前に来たので、思わず小さな悲鳴をあげ、飛び退いてしまう。だけどゴリさんは握手を求めていただけのようで、俺がいなくなったことで宙ぶらりんになった手を力なく下げてしまった。
その表情は明らかに落ち込んでいた。それはそうだろう、挨拶をしただけなのに引かれてしまったら誰だっていい気分はしない。
「……坊主、気持ちはわからんでもないが、こう見えてゴリさんは繊細なんじゃ。それに気優しい。人を見た目で判断してはならんぞ」
ゴードンさんに囁かれ、俺ははっと息を飲む。失礼なことをしてしまったと心を改め、すぐさまゴリさんの元へと駆け寄り、俺の方から握手を求める。
「すいませんゴリさ……ゴリヌスさん。改めてよろしくお願いします」
「……ゴリでいい。皆そう呼ぶ」
「ゴリさん、頑張りましょう!」
ゴリさんと固い握手を交わし、親交が深まった気がした。
競合相手だし、もっと殺伐とした雰囲気かと想像していたが、思いの外友好的な対応に安心する。
「フフフ……次はアタイの番だね。アタイはアイシャ。カウベルファームってのを経営してるよ。よろしくね」
「よ、よろしく……」
動く度にバルンバルンと揺れる胸にどうしても視線が吸い寄せられてしまう。
その胸と頭部の角からして、多分牛の獣人だろう。
さて、最後の一人だが……この人は挨拶などするつもりはないようだ。そっぽを向いたままだんまりとしている。
「もう、キールったら……挨拶ぐらいしたらどうなの?」
「――馴れ合うつもりはない」
キールと呼ばれた男は、背中の翼で体を隠すようにしながら立っているだけで、こちらに一瞥もくれず、集中している様子だった。
「まったくもう……あ、ごめんなさいね。彼はキール。ブルースカイってカンパニーで働いているわ。アタイの幼馴染みなんだけどね、昔からこんなでさ。まあ悪いやつじゃないから気分を悪くしないでおくれよ」
「あ、いえ。気にしてないので大丈夫っす」
「ホッホッホ。まあ……何はともあれ、この五人で挑むんじゃ。開始までの時間、作戦会議をしておくべきじゃと思うんだが……?」
「賛成だ」
「そうね」
「はい」
「……好きにしろ」
作戦会議はこちらとしても是非しておきたい。
連携が取れるのとそうでないとでは、戦局にかなり影響するだろうからな。
その後三十分ほどの話し合いが行われた。約一名、非協力的ではあったが、邪魔をするでもなく、しっかりと聞いていた様子だったので多分問題ないだろう。
アイシャさんが「アイツはシャイなだけだから」と言っていたので、きっと作戦通りに動いてくれるはずだ。
そして、いよいよ本番の時が訪れようとしていた。
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