スキル『モデラー』で異世界プラモ無双!? プラモデル愛好家の高校生が異世界転移したら、持っていたスキルは戦闘と無関係なものたったひとつでした

大豆茶

文字の大きさ
上 下
75 / 120
【三章】技術大国プラセリア

24.チームメンバー

しおりを挟む
 翌日、コンペティション第二選考参加のため、俺たちは指定された会場へと足を運んでいた。

「いよいよだな。さて、鬼が出るか蛇が出るか……」

「あぁ? 何言ってんだ、相手は魔物じゃなくて魔動人形だぞ?」

「おにじゃ! つよそー!」

「ははは……」

 そりゃことわざ的なのは意味が伝わらないか。そしてリン、鬼と蛇は合体させちゃいけません。

「と、とにかく頑張ってくるから応援しててくれよな」

「うん、がんばってねケーくん! いぇーい!」

「ケイタ、ヤツらに目に物見せてやれ」

「おう、行ってくる」

 リンとハイタッチを交わし、カティアと拳を合わせる。
 気持ちを引き締めた俺は、外套のフードを目深に被り会場内へと進んだ。

 控え室へと入ると、そこには他の参加者と思わしき人たちが既に揃っていた。

 俺が入室すると同時に、ギロリと睨むような視線が送られてくる。

「――ど、どうも」

 ざっと見渡すと俺を含めて全員で五名。このメンバーが今回のチームメイトのようだ。
 背中に鳥のような羽を持つ男に、見た目が完全にゴリラの大柄な男、背の小さな老人、そしてやたらと胸がデカイ女の人と、なんとも個性豊かな顔ぶれだ。

「お主が最後の一人か。どこのモンじゃ?」

 恐縮していた俺を見かねてか、老人が話しかけてきた。
 
「あ……俺はキャッツシーカーの代表で、ケイタ・サガミだ……です」

「ホッホッホ、あまり畏まらんでええわい。ワシらはこの場限りとはいえ仲間なんじゃからな。普段通りの話し方でええぞい。――それにしてもキャッツシーカーとな? 初耳じゃのう」

 意外に友好的な反応をしてくれたので、少し心が軽くなった。
 しかし、キャッツシーカーの名は世間には知られていないようだった。ほぼ無名のカンパニーが一次選考を突破したのが珍しいのだろう。

「……おっと、挨拶が遅れたのぅ。ワシはゴードン。ゴート運輸の社長じゃ」

「しゃ、社長……!」

「そう驚くことでもなかろう。カンパニーの看板をしょって来とるんじゃ、社長自らが出てるとこも珍しくないぞい」

(マジか……ってことは他の人たちも社長だったりするのか!?)

「のぅ? ゴリさんや」

「――うむ」

 ゴードンさんに話を振られ、答えたのは見た目はまんま服を着たゴリラって感じの大柄な男。
 座っていたのだが、返事をすると同時に立ち上がると、その身長は俺の倍近くあった。

 ゴリさんと呼ばれた男はゆっくりと俺へと近付いてくる。圧迫感が尋常じゃない。
 そして俺の目の前に立つと、俺の胴ぐらいの太さの豪腕を伸ばしてきた。
 
(な……なんだ!? そのままねじ切られるのか!?)

「――御離羅ごりら重工社長、ゴリヌスだ」

「ひぇっ……! ――え?」

 大きな手が目の前に来たので、思わず小さな悲鳴をあげ、飛び退いてしまう。だけどゴリさんは握手を求めていただけのようで、俺がいなくなったことで宙ぶらりんになった手を力なく下げてしまった。

 その表情は明らかに落ち込んでいた。それはそうだろう、挨拶をしただけなのに引かれてしまったら誰だっていい気分はしない。

「……坊主、気持ちはわからんでもないが、こう見えてゴリさんは繊細なんじゃ。それに気優しい。人を見た目で判断してはならんぞ」
 
 ゴードンさんに囁かれ、俺ははっと息を飲む。失礼なことをしてしまったと心を改め、すぐさまゴリさんの元へと駆け寄り、俺の方から握手を求める。
 
「すいませんゴリさ……ゴリヌスさん。改めてよろしくお願いします」

「……ゴリでいい。皆そう呼ぶ」

「ゴリさん、頑張りましょう!」

 ゴリさんと固い握手を交わし、親交が深まった気がした。
 競合相手だし、もっと殺伐とした雰囲気かと想像していたが、思いの外友好的な対応に安心する。

「フフフ……次はアタイの番だね。アタイはアイシャ。カウベルファームってのを経営してるよ。よろしくね」
 
「よ、よろしく……」

 動く度にバルンバルンと揺れる胸にどうしても視線が吸い寄せられてしまう。
 その胸と頭部の角からして、多分牛の獣人だろう。

 さて、最後の一人だが……この人は挨拶などするつもりはないようだ。そっぽを向いたままだんまりとしている。

「もう、キールったら……挨拶ぐらいしたらどうなの?」

「――馴れ合うつもりはない」

 キールと呼ばれた男は、背中の翼で体を隠すようにしながら立っているだけで、こちらに一瞥もくれず、集中している様子だった。
 
「まったくもう……あ、ごめんなさいね。彼はキール。ブルースカイってカンパニーで働いているわ。アタイの幼馴染みなんだけどね、昔からこんなでさ。まあ悪いやつじゃないから気分を悪くしないでおくれよ」

「あ、いえ。気にしてないので大丈夫っす」

「ホッホッホ。まあ……何はともあれ、この五人で挑むんじゃ。開始までの時間、作戦会議をしておくべきじゃと思うんだが……?」

「賛成だ」

「そうね」

「はい」

「……好きにしろ」

 作戦会議はこちらとしても是非しておきたい。
 連携が取れるのとそうでないとでは、戦局にかなり影響するだろうからな。
 
 その後三十分ほどの話し合いが行われた。約一名、非協力的ではあったが、邪魔をするでもなく、しっかりと聞いていた様子だったので多分問題ないだろう。
 アイシャさんが「アイツはシャイなだけだから」と言っていたので、きっと作戦通りに動いてくれるはずだ。

 そして、いよいよ本番の時が訪れようとしていた。

 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴
ファンタジー
【あらすじ】  普通に事務職で働いていた成人男性の如月真也(きさらぎしんや)は、ある朝目覚めたら異世界だった上に女になっていた。一緒に牢屋に閉じ込められていた謎のしゃべるうさぎと協力して脱出した真也改めマヤは、冒険者となって異世界を暮らしていくこととなる。帰る方法もわからないし特別帰りたいわけでもないマヤは、しゃべるうさぎ改めマッシュのさらわれた家族を救出すること当面の目標に、冒険を始めるのだった。 (しばらく本人も周りも気が付きませんが、実は最強の魔物使い(本人の戦闘力自体はほぼゼロ)だったことに気がついて、魔物たちと一緒に色々無双していきます) 【キャラクター】 マヤ ・主人公(元は如月真也という名前の男) ・銀髪翠眼の少女 ・魔物使い マッシュ ・しゃべるうさぎ ・もふもふ ・高位の魔物らしい オリガ ・ダークエルフ ・黒髪金眼で褐色肌 ・魔力と魔法がすごい 【作者から】 毎日投稿を目指してがんばります。 わかりやすく面白くを心がけるのでぼーっと読みたい人にはおすすめかも? それでは気が向いた時にでもお付き合いください〜。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...