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【三章】技術大国プラセリア

7.遊び相手①

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「――アンタにはリンの遊び相手になってほしいんだ」

「――は?」

 カティアの口から紡がれたのは、完全に予想を外れた言葉だった。
 さっきの仕返しでジョークのつもりなのだろうか。いや……それにしては嘘をついているようには見えない。いたって真面目な面持ちだ。

「……え、いや、遊び相手ってなんだ……?」

 わけがわからず混乱していた俺は、オウム返しをすることしかできなかった。

「すぐにわかるさ。さ……コイツが遊んでくれるってよ、リン」
 
「やったー! じゃ、こっちきてケーくん」

「ちょ、リン!?」

 リンに手を引かれ、奥の部屋へと連れていかれた。
 さっき爆発があった部屋だったので、辺り一面煤けていたが、何かの研究施設のような場所だということがわかる。

「ケーくん、これ見て! リンが作ったんだよ!」
 
 リンはそこらに乱雑に積まれたガラクタ(?)の中に手を突っ込み、その中の一つを自慢気に見せてきた。

「なんだこれ……箱か?」

 リンから受け取ったのはマッチ箱ぐらいのサイズの黒い箱。なんだこれは……何かの部品のようにも見える。
 側面に穴が空いていて、そこになにやら丸いものが……む、このディティールはまさか……!

「ミサイルポッド!? このサイズは魔動人形マギアドール用か……? 使えるのかこれ!?」

 心底驚いた。なぜならミサイルという兵器はこの世界には存在しないはずだからだ。
 魔法が便利すぎて、そういった銃火器類は発達してこなかったのだろう。

 魔動人形の武装に銃などは存在するが、あれはただ魔力を収束させて放つだけのもので、銃を知らない異世界人からしたら『そういう機能がある魔法の杖』程度にしか見えないだろう。

 兵器などの知識がないにも関わらず、リンはこのミサイルポッドを自作したと言う。
 発想力……いや創造力に長けているんだろう。

「ミサイル……ポッド? なにそれ~? それはね、『つぶねばでーる君』だよ」

「つ、つぶねば……?」

 あれ、ミサイルポッドじゃないの……?

「それはね、ポチってやるとつぶつぶがわーってなって、ネバネバするの」

「……え? なんて?」

 ちょっと待て、言ってることがほとんど理解できないぞ。つぶつぶが……なんだって?

「だからー、つぶつぶがうぉーっていって、ねばっとするんだよ」

 ――いや、さっきと説明ちがくない?
 
「カティア様お助けを……」

 部屋の隅で俺たちの様子を見守っていたカティアへと救いを求める眼差しを送ると、頭をポリポリと掻きながら渋々といった態度で近くへ寄ってきた。

「……あぁ、それなら使ったことがある。魔動人形用の武装で間違いないぜ。トリガーを引くとここに入ってる丸い弾が一斉に発射されて――弾に当たると粘着性のある物質が纏わりつくんだ」

「お、おう……」

 一斉にってことは、散弾銃みたいな感じかな。
 ネバネバするのは……トリモチみたいなもんか?

 冷静に考えたら結構強いんじゃないだろうか。避けるのが困難な散弾、かつ命中すれば動きを阻害できるトリモチ弾。
 ダメージは与えられないかもしれないけど、副兵装としては優秀だ。

「だが欠点があってな……まず致命的なのが、弾が当たってネバネバしたところで、多少動きが鈍くなる程度でそこまで大きな影響を与えられないこと。そして外れた弾で地面もネバネバになって、自分も動きにくくなること……だな」

「そうなのか……いや、でも発想はいいと思うよ。詰めていけばもっと有効な武装になる。――ん? っていうか作ったって言ってたけど、どうやって作ったんだ?」

 魔動人形本体や武装などは、誰も作ることができないんじゃなかったか?
 まさか、リンはアーティファクトを作り出すことができるのか!?

「それはねー、これで作ったんだよ!」

 カティアにの代わりにリンが元気よく答えた。
 そこにあったのは、魔動人形の操縦席にある意思伝達装置……通称『スフィア』によく似ていた。
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