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【二章:閑話】

シルヴィア回想編②

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「……では、魔動決闘などいかがでしょうか? もちろん、対価を賭けた決闘です。そうですね、王家の認可を得て正式なものにしましょう」

 振り向き様にそう告げたカマセーヌさんに、私たちは返す言葉を失いました。
 それほどに突拍子もない発言であり、その真意がどこにあるのか全く予想がつかなかったのです。

「――なぜ、魔動決闘を?」

 お父様はそう返答するのが精一杯だったようで、訝しみながらも、その真意を問いました。

「断るのですか? それでは……そちらの家宝は二度と戻らないでしょうねぇ……」

「何……!? やはり貴様が……!?」

 その口ぶりから、彼がやはりアイギスの盗難に関与しているのは明白でした。
 そして、アイギスを担保として私たちに決闘を挑んできたのです。

「さて……どうでしょうか? もちろん、受けていただけますよねぇ?」

「賭けると言ったが……何を賭けるのだ?」

「娘さんを……と、言いたいところですがそれだけではつまらない。全財産、全ての権利、土地含めたヴァイシルト家の全てをポクのものにする。あなた方が勝てば、きっと望むものが返ってくるでしょう」

「全て……!? お父様、そんな条件は領民たちのためにも受け入れることはできません! 断りましょう!」

 お父様も当然私と同じ気持ちだと思っていました。
 しかし、頭を抱えいつまでも返答のないお父様の姿に、不穏な空気を感じます。

「お、お父様……?」

「――――わかった、決闘を受けよう」

「お父様!? いけません!」

 お父様の口からか細く漏れたのは、受理の言葉。
 家宝は大事だとは思いますが、全てを賭けるほどなのでしょうか……私のような若輩者にはわかりません。

 私の倍以上生きているお父様は、アイギスの件で様々な葛藤を抱えていたのかもしれません。
 その心中を察することは私にはできず、押し黙るお父様に
これ以上かける言葉が浮かんできませんでした。

「フッ、では後日正式な書状を送るよ。楽しみにしているといい」

 そう言い残し、カマセーヌさんは去っていきました。

「すまないシルヴィア……だが相手は格下の相手だ。勝てば全て解決するのだ、勝てば……」

 重い空気が流れているなか、『勝てばいい』と半ば自己暗示のような形でお父様は言いました。
 確かに落ち目であるとはいえ、魔動人形による戦果で成り上がったヴァイシルト家は、魔動人形戦におけるノウハウが蓄積されており、その戦闘技術は代々受け継がれています。

 魔動人形においては他より一日の長があると言えるでしょう。
 お父様はその点を考慮された上で決断されたのだと思います。カマセーヌ家は最近になって頭角を現したばかりであり、確かに現時点で戦えば私たちが有利なのは間違いありません。

 ですが、果たしてこのまま正々堂々と勝負をしてくれるのか。それだけが私の危惧するところでした。


 ――そして、ある日その嫌な予感は現実のものとなったのです。
 
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