スキル『モデラー』で異世界プラモ無双!? プラモデル愛好家の高校生が異世界転移したら、持っていたスキルは戦闘と無関係なものたったひとつでした

大豆茶

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【一章】異世界でプラモデル

21.第二王女

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 デイビットさんに連れられ、俺とエドワルドさんは闘技場の一番高い所にある特等席……いわゆるVIP席へと案内された。

 一般の観客席とは違い、広々とした空間に席が数個ポツンとあるだけの、悠々とした空間だ。そしてそこには見覚えのある後ろ姿があった。
 
「あれは……ザッコブか」

 肩身狭そうにしてその場に跪いているザッコブ。あいつ……一人で何してるんだ?

「王女殿下、ヴァイシルト家の者並びにケイタ・サガミをお連れしました」

「……来ましたか。デイビット、ご苦労様。貴方は下がってよくってよ」

「はっ」

 王女様らしき人物にそう言われ、デイビットさんは早々に退室してしまう。
 今この場に居るのは俺とエドワルドさん、ザッコブに王女様とその護衛っぽい人が2人。合計6人だけだ。
 王族なのに護衛が2人だけなんて、ちょっと危ないんじゃないかな。

 ……いや、それにしてもこの王女様、かなりの美少女である。比べるのもアレだが、シルヴィアとは別系統の美人さんだ。特に胸のあたりが豊かでらっしゃる。

 艶のある長い真紅の髪を左右2つにまとめている。ツインテールってやつだ。そして、まとめた髪は螺旋状に巻かれている。
 ……こ、これが縦ロールってやつか。リアルなやつは初めて見たぜ。なんだろう、触ってポヨンポヨンしたい欲求に駆られる。

 そしてはち切れんばかりの胸部を見せ付けるように張りながら、高飛車お嬢様然とした高圧的な態度で語りだした。

「先の決闘、見事でしたわ! まずは決闘で賭けていたものを、きちんと譲渡しなさい。アークライト王国第二王女、フラムローゼ・アークライトが責任を持って見届けますわ!」

 こうやって王家の人間が見届けることで、ただの口約束ては済まさないように強制力を持たせたつもりだろうが、失敗したようだな。
 負けてしまった今、ザッコブに逃げ道はない。

 こっちが負けていたら、ヴァイシルト家が管理する領地の権利書、家財全てを差し出す約束だったな。
 ザッコブは何を賭けていたんだっけか。

「…………」

 ザッコブは依然として黙ったままだ。さあ、早く俺の前にひれ伏せ! そして謝れ! バーカバーカ!

「……ザッコブ・カマセーヌ。このわたくしが命じているのよ? 負けたのはあなた。早くしなさいな」

「――フラムローゼ王女殿下、お言葉ですが彼らはもう報酬を手にしております。彼らが勝った場合の報酬は、『望むものが返ってくる』こと。そう、彼らは『失われかけた名誉を取り戻す』という報酬を既に受け取っているのですよ!」

 はぁ!? そんなの屁理屈もいいところだろ!?
 そんなんで納得できるわけがない。エドワルドさんはほぼ全て財産を賭けていたんだぞ。
 
「――ふ、ふざけるな! 貴様が当家の家宝を盗んだのだろう!? それを返してもらうために我々は戦ったのだ!」

「盗んだぁ? 何の証拠があるんだ! もし疑うのならばうちの宝物庫でもなんでも調べてみるといい。どうせ何も出てきやしないんだからな」

「貴様っ……!」

「――あなたたち。わたくしの前で醜く言い争いなど、無礼が過ぎますわよ」

 王女様の鋭い目付き、その声色にゾクッとしてしまう。これほどの気迫……やはり王家の人間ともなると、こういった場面を何度も経験しているのだろう。『本物』の圧力を感じた。

「「失礼しました」」

 エドワルドさんとザッコブは、すぐさま口喧嘩を止め、姿勢を正した。
 
「――はぁ。双方の間に食い違いがあるようなので、わたくしの裁量で決めさせていただきますわ。よろしくて?」

「「仰せのままに」」

 王女様にそう言われちゃ了承する他ないでしょうよ。
 まあこっちが勝ったわけだし、悪いようにはならないだろうから、俺としては気が楽だな。

 王女様は護衛の人から書状を受け取り、さっと一読していた。あの書状にこの決闘の詳細が書かれているんだろうな。

「ふむふむ……ヴァイシルト家が負けた場合は、『領地の権利書と財産の全てを相手に譲渡する』。カマセーヌ家が負けた場合は、『望むものを返却する』……ね」

「そ、そうです王女殿下! 先も言ったとおり、彼らは既に――」

「黙りなさい。今わたくしが話しているのですよ」

「――っはい!」

 ザッコブはすっかり萎縮してしまっている。
 蛇に睨まれた蛙とはこのことだな。まあ国のトップ相手じゃ誰でもそうなるか。

「望むもの……ね。ヴァイシルト卿、あなたの望む物はなんだったのかしら?」

「はっ、当家の家宝である『絶界宝盾ぜっかいほうじゅんアイギス』にございます」

「その名はわたくしも知っていますわ。かの大戦で大いに活躍したとか。ところで……どうしてあなたはそんな大切なものを失ってしまったのかしら?」

「――留守の間賊に入られたようでして……全ては私の不徳の致すところでございます」

「なるほど。我が国にとっても大事な戦力の1つ……それを不注意で失うなど、大失態もいいところですわね」

「面目次第もございません……」

 アイギス……シルヴィアの言ってたヴァイシルト家の代名詞となる白金等級プラチナムグレードの兵装か。
 やっぱり家宝っていうのはそれのことだったんだな。国にとっても重要な物っぽいし、必死で取り返そうとしたのも頷ける。

 で、それを返してもらおうと財産の全てを賭けていたにもかかわらず、ザッコブはシラを切ってると。
 なんだあいつ、いいかげんにしろよ!

「……確かに、王家の元に送られてきたこの書状には、具体的な物品名は記されていないわね」

「そ、そうです王女殿下。それにその家宝とやらが当家の手元にございませんので、そんな要求をされても困ります」

「――ああ、そうそう。ザッコブ・カマセーヌ。噂に聞いたのだけれど、最近懐が潤っているようですわね? 少し気になって調べさせてもらいましたが、元々あなたの家には銀等級の魔動人形なんて買える資金はなかったはずよね?」

「あ……いえ、それは……」

 ザッコブの目が泳いでいる。やましいことがある証拠だ。
 まさかとは思うが、あいつ……ヴァイシルト家の家宝を売ったのか!?
 
「それと、最近犯罪組織に大量の資金が流れているらしいのよ。奴らの動きが活発になっていい迷惑よ。――どこかでいいパトロンでも見つけたのかしら。ねぇ? ザッコブ・カマセーヌ」

「は……はは、そうなのですね。初耳です」

 ザッコブは言葉ではそう取り繕っているが、冷や汗ダラダラである。
 内心ではめちゃくちゃパニクってるんだろうな。ざまぁ。

 ……でも、売ってしまったのならば家宝は返却されないんじゃないか?

 そんな一抹の不安を抱えながら、俺たちは王女様の判決を待っていたのだった。
 
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