14 / 120
【一章】異世界でプラモデル
13.等級
しおりを挟む
「――さん! ケイ――起き――」
ん……? シルヴィアの声が聞こえる……?
「ケイタさん! 起きてください!」
「――んあっ!?」
机に突っ伏して寝てしまっていた俺は、シルヴィアの声で目を覚ました。
変な格好で寝てたからか、めっちゃ涎が垂れてた。恥ずい。
「す、すみません。お呼びしても返事がなかったのでつい大きな声を……」
「あ、ああいや平気だよ」
「てっきり部屋に戻ってお休みになっているかと思っていたのですが、作業部屋にいらしたので驚きました」
もう少しで完成だと伝えていたので、部屋に帰って休んでると思うのは当然だろう。でも嬉しい誤算があったので、やむなく徹夜する羽目になってしまったのだ。
「ああ、ごめんね。ちょっと作業が増えちゃってさ。でもほら、ちゃんと完成したよ」
俺は完成したプラモデル……いや、魔動人形をシルヴィアへと手渡す。
今俺に出来る最大限の加工は施した。あとは天命を待つのみだ。
「わあ……すごいです。こんな綺麗な魔動人形、見たことがありません……!」
「そう? そう言ってくれると嬉しいな」
「やっぱりケイタさんは凄い人だったんですね! 尊敬しちゃいます!」
今回俺が手掛けた魔動人形は、暗めのグレーをメインカラーとした機体で、一部パーツにブラックのものがあるシンプルな配色だ。まあランナー数も少なかったしそんなものだろう。
スマートな感じの機体ではなく、全体的にずんぐりむっくりとした造形だ。二足歩行ではあるが、足がそこまで長くない。22世紀のネコ型ロボットみたいな感じだ。
それとハンドパーツはよくある5本指のマニピュレータータイプではなく、クローアームとなっていて物を掴むのに特化している。
もちろん武装の類いは手に持てない。唯一の武装はというと、肩部に装着されたキャノン砲っぽい武装だけだ。
なんだろう、多分重作業用の機体にキャノン砲くっつけました……みたいな感じだ。動く棺桶とか呼ばれてそう。
「……勝てるといいね」
心配半分、期待半分というあまり自信のない発言だったけど、シルヴィアはにっこりと笑ってこう告げた。
「はい。たとえ結果がどうなろうとも、私はケイタさんを責めたりはしません。あなたのおかげで戦いの舞台に立てるんですから。感謝しかありません」
俺たちの間に流れる空気が微妙なのには理由があった。
それは魔動人形の等級に関係する。
先日説明を受けたのだが、魔動人形にはそれぞれ性能によって格付けがされているらしいのだ。
下から順に、
『一般等級(コモングレード)』
『銅等級(ブロンズグレード)』
『銀等級(シルバーグレード)』
『金等級(ゴールドグレード)』
『白金等級(プラチナムグレード)』
『伝説等級(レジェンダリグレード)』
この6つに分類される。
これはアーティファクトである魔動人形の箱の装飾によって見分けられる。銀等級なら銀の装飾、金等級なら金の装飾といった具合だ。
俺たちが今回決闘に使うのは、一番下の等級である『一般等級』の魔動人形。箱の装飾は『無し』だ。
この等級が1つ上の相手には、一対一の戦いの場合はまず勝てないと言われているらしい。もちろん相性や操縦者の技量などもあるだろうし一概には言えないだろうが、2つも差があれば、相性に関係なくまず勝てないみたいだ。
かろうじて用意できたのが一般等級の魔動人形の俺たちに対し、相手はどの等級でくるかもわからない。
セオリーどおりならば、銀等級以上が出てくれば正直『詰み』だ。しかしあの狡猾なザッコブのことだ、それぐらいは想定して然るべきだろう。
そんな微妙な空気の中、俺はヴァイシルト家の面々も共に決闘が行われる会場へと足を運ぶのであった。
ん……? シルヴィアの声が聞こえる……?
「ケイタさん! 起きてください!」
「――んあっ!?」
机に突っ伏して寝てしまっていた俺は、シルヴィアの声で目を覚ました。
変な格好で寝てたからか、めっちゃ涎が垂れてた。恥ずい。
「す、すみません。お呼びしても返事がなかったのでつい大きな声を……」
「あ、ああいや平気だよ」
「てっきり部屋に戻ってお休みになっているかと思っていたのですが、作業部屋にいらしたので驚きました」
もう少しで完成だと伝えていたので、部屋に帰って休んでると思うのは当然だろう。でも嬉しい誤算があったので、やむなく徹夜する羽目になってしまったのだ。
「ああ、ごめんね。ちょっと作業が増えちゃってさ。でもほら、ちゃんと完成したよ」
俺は完成したプラモデル……いや、魔動人形をシルヴィアへと手渡す。
今俺に出来る最大限の加工は施した。あとは天命を待つのみだ。
「わあ……すごいです。こんな綺麗な魔動人形、見たことがありません……!」
「そう? そう言ってくれると嬉しいな」
「やっぱりケイタさんは凄い人だったんですね! 尊敬しちゃいます!」
今回俺が手掛けた魔動人形は、暗めのグレーをメインカラーとした機体で、一部パーツにブラックのものがあるシンプルな配色だ。まあランナー数も少なかったしそんなものだろう。
スマートな感じの機体ではなく、全体的にずんぐりむっくりとした造形だ。二足歩行ではあるが、足がそこまで長くない。22世紀のネコ型ロボットみたいな感じだ。
それとハンドパーツはよくある5本指のマニピュレータータイプではなく、クローアームとなっていて物を掴むのに特化している。
もちろん武装の類いは手に持てない。唯一の武装はというと、肩部に装着されたキャノン砲っぽい武装だけだ。
なんだろう、多分重作業用の機体にキャノン砲くっつけました……みたいな感じだ。動く棺桶とか呼ばれてそう。
「……勝てるといいね」
心配半分、期待半分というあまり自信のない発言だったけど、シルヴィアはにっこりと笑ってこう告げた。
「はい。たとえ結果がどうなろうとも、私はケイタさんを責めたりはしません。あなたのおかげで戦いの舞台に立てるんですから。感謝しかありません」
俺たちの間に流れる空気が微妙なのには理由があった。
それは魔動人形の等級に関係する。
先日説明を受けたのだが、魔動人形にはそれぞれ性能によって格付けがされているらしいのだ。
下から順に、
『一般等級(コモングレード)』
『銅等級(ブロンズグレード)』
『銀等級(シルバーグレード)』
『金等級(ゴールドグレード)』
『白金等級(プラチナムグレード)』
『伝説等級(レジェンダリグレード)』
この6つに分類される。
これはアーティファクトである魔動人形の箱の装飾によって見分けられる。銀等級なら銀の装飾、金等級なら金の装飾といった具合だ。
俺たちが今回決闘に使うのは、一番下の等級である『一般等級』の魔動人形。箱の装飾は『無し』だ。
この等級が1つ上の相手には、一対一の戦いの場合はまず勝てないと言われているらしい。もちろん相性や操縦者の技量などもあるだろうし一概には言えないだろうが、2つも差があれば、相性に関係なくまず勝てないみたいだ。
かろうじて用意できたのが一般等級の魔動人形の俺たちに対し、相手はどの等級でくるかもわからない。
セオリーどおりならば、銀等級以上が出てくれば正直『詰み』だ。しかしあの狡猾なザッコブのことだ、それぐらいは想定して然るべきだろう。
そんな微妙な空気の中、俺はヴァイシルト家の面々も共に決闘が行われる会場へと足を運ぶのであった。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
前世の記憶で異世界を発展させます!~のんびり開発で世界最強~
櫻木零
ファンタジー
20XX年。特にこれといった長所もない主人公『朝比奈陽翔』は二人の幼なじみと充実した毎日をおくっていた。しかしある日、朝起きてみるとそこは異世界だった!?異世界アリストタパスでは陽翔はグランと名付けられ、生活をおくっていた。陽翔として住んでいた日本より生活水準が低く、人々は充実した生活をおくっていたが元の日本の暮らしを知っている陽翔は耐えられなかった。「生活水準が低いなら前世の知識で発展させよう!」グランは異世界にはなかったものをチートともいえる能力をつかい世に送り出していく。そんなこの物語はまあまあ地頭のいい少年グランの異世界建国?冒険譚である。小説家になろう様、カクヨム様、ノベマ様、ツギクル様でも掲載させていただいております。そちらもよろしくお願いします。
補佐役として転生したら、ダメダメ美少女勇者さまのお世話をするはめに!?
有永 ナギサ
ファンタジー
自殺する少女を助けようとしたら、一緒に死んでしまったFPSゲーム大好き27歳サラリーマンのシンヤ。そこへなんと女神様が現れ、勇者の力をさずけて転生させてくれるらしい。まかせろと思いきや、一緒に死んだ少女の方の話? シンヤに関してはお引き取りをだって!? なんとか泣きつき、少女の補佐をする条件で転生させてもらえることに! そして高貴なオーラをまとう美人な騎士さまや、巫女の女の子と仲良くなったりして順風満帆な転生ライフを。え? そのころ勇者の少女はというと、邪神の眷属の封印を解こうとした疑いでオリの中? はたしてシンヤはメンタルよわよわドジっ子少女を補佐し、勇者として導いていけるのか。今日も予知のスキルと愛銃を使い、少女たちを補佐しながら裏方の仕事をこなしていく。そして光と闇、両陣営の転生者たちの運命が交差していき……。
真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~
秋刀魚妹子
ファンタジー
お腹が直ぐに空く女子高生、狩人喰は修学旅行の帰り道事故に合い死んでしまう。
そう、良くある異世界召喚に巻き込まれたのだ!
他のクラスメイトが生前のまま異世界に召喚されていく中、喰だけはコンプレックスを打開すべく人間を辞めて巨人に転生!?
自称創造神の爺を口車に乗せて、新しく造ってもらったスキル鑑定は超便利!?
転生先の両親祖父は優しいけど、巨人はやっぱり脳筋だった!
家族や村の人達と仲良く暮らしてたのに、喰はある日とんでもない事に巻き込まれる!
口数は少ないけど、心の中はマシンガントークなJKの日常系コメディの大食い冒険物語り!
食べて食べて食べまくる!
野菜だろうが、果物だろうが、魔物だろうが何だって食べる喰。
だって、直ぐにお腹空くから仕方ない。
食べて食べて、強く大きい巨人になるのだ!
※筆者の妄想からこの作品は成り立っているので、読まれる方によっては不快に思われるかもしれません。
※筆者の本業の状況により、執筆の更新遅延や更新中止になる可能性がございます。
※主人公は多少価値観がズレているので、残酷な描写や不快になる描写がある恐れが有ります。
それでも良いよ、と言って下さる方。
どうか、気長にお付き合い頂けたら幸いです。
お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
奴隷勇者の転生物語
KeyBow
ファンタジー
主人公は異世界召喚直後に奴隷にされた後に命じられて魔王を討伐した。
その時に奴隷から逃れる為に転生術を発動するも、不完全で記憶を無くしての転生になった。
本来ありえない2つのギフトを得られており、同郷の者と冒険者をするも、リーダーがその可能性に気が付き、嫉妬により腐らせた挙げ句に暗殺に失敗する。
そして追放された。
絶望の最中一人の女性と出会い、その後多くの仲間を得る。しかし、初めて彼女ができるも、他の少女を救った事から慕われ、思い悩む事になる。
だが、転生前と違い、追放後はハッピーに生きようとするが、そうは問屋が・・・
次から次に襲ってくる女難?と悪意から乗り切れるか?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる