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【最終章 地炎激突】
フレアルドの過去① フレアルド視点
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「はっ! せい! おりゃぁぁっ!」
俺の相棒である、自分の背丈を越える程の剛槍『炎槍ドラグニル』を振るい、今日も鍛練に明け暮れていた。
それも全て、いつか最強の存在となり、魔王と呼ばれるためだ。
俺は魔族の中でも特に優れた種族である『竜人族』として生まれ、更には選ばれし者のみが与えられる力、『天与』を持っていたのだ。
当然、そんな恵まれた才能を持つ俺は、周囲の期待を一身に受けていた。この竜人族の秘宝ドラグニルを授与されたのもその期待の現れだ。
この国の王である『魔王ガイアス』の強さに憧れを抱いていたが、俺自身もいずれその強さを越えることが出来ると信じて疑わなかった。
少しでも魔王に近付くために、今は竜人族でも精鋭が集まる部隊に所属しながら、鍛練を欠かさず、そして最前線に立ち続ける。
そんな苛烈な日々が続いたんだが、ある時、四天王の内二人が戦死したとの報せがあった。
なんでも、勇者とやらが敵に現れたせいらしいんだが、人間族ごときに敗れるとは……情けない奴等だぜ。
ともあれ、これはチャンスだ。いや……必然的に俺が新な四天王に選ばれることだろうぜ。
魔王ガイアスを除けば誰も俺には勝てないだろうからな、それが当然だろう。
そして報せがあってから一月程経った時、俺は四天王へと昇格した。
「よし……! 遂にここまで来たぞ……! やはり俺は強い! このまま勝ち続ければ、いつかは俺が……いや、俺様が魔王になる日もそう遠くはないかもなァ! ハッハッハ!」
四天王になった後も変わらずに鍛練を続け、俺は強くなるために最前線に立ち続けた。
軍隊を任されていたのたが、強くなるためには他人に構ってる暇はない。面倒な事……部隊の指揮や内政などは副官に押し付けていた。
それでもうまくいっていた、結局は力が全てなんだよ。
力さえあればければ何もかもがまかり通る。今はそういう時代なんだ。
全てが順調に進んでいたんだ、あの時までは。
「はあ!? ガイアス様が……失踪だと!? 冗談にしては笑えないな……ふざけてんのか!?」
ある日戦場から帰ると、俺の副官を務めていた奴の口から、信じられないことを聞かされた。
それは現在の魔王……俺の憧れの人物であった魔王ガイアスの失踪を告げるものだった。
「い……いえ本当ですフレアルド様。私も信じがたいのですが、確かな情報です。現にここしばらく魔王様の姿を見た者はおりません」
「くっ! まどろっこしい……直接確認してくる! 後は任せたぞ!」
俺は休む暇も惜しんで、常ならば魔王が居るはずの部屋である王の間へと走る。
ここに許可なく入れるのは四天王のような特権階級の者だけ。それ以外の者は、扉の前を歩くことすら許されていないのだ。
それだと言うのに……!
「貴様……!」
王の間に居たのは俺以外の四天王の二人……ガルダリィのオッサンと、千年以上生きているって噂の耄碌した役立たずのジジイ……タルトムが居た。
固い甲羅を持ち、長寿な種族である仙亀族であるが、戦場で奴の姿を見たことはねェ。
昔は強かったのかも知れねェが、今は普段何してるかわからないような役立たずのジジイが、未だに四天王でいるのは実に腹立たしいことだ。
いや、今はそんなことよりも、もう一人……見慣れない奴が一人玉座に座り佇んでいたのだ。
長い黒髪に漆黒のローブ、そして頭には立派な角が生えている。
線の細い優男のような見た目のその姿を見た瞬間、俺の怒りが頂点へ達した。
そこに座っていいのは魔王だけだ。次にそこに座るのはこの俺様だ。邪魔だ、邪魔だ、邪魔だ……!
気付けば俺は召喚したドラグニルを握り、その人物へと飛びかかっていた。
「そこに……座ってんじゃねえェェェッ!!」
「フレアルド! よさぬか!」
オッサンが何か言っているが俺には聞こえねェ。
ドラグニルの切っ先が奴の目前まで迫ったと思ったその時、気が付けば俺は床に倒れ伏していた。
「――――!? あ……がっ……! くっ、一体何が……!」
体が痛むが、何が起こったのかが全く理解できない。
一つ解るのは、俺様が……四天王最強と名高いこの俺様が、いとも容易く倒されたということだけ。
もちろん、他の四天王は一切手出しをしていない。
つまりは、未だ玉座に座ったままのこの男が、俺様が感知できない何かをしたということだ。
「フレアルド……だったかな? 手荒な真似をしてすまないね。しかし、初対面だったし驚いただろうが……いきなり攻撃するとは感心しないな」
「ぐっ……お前は一体何者だ!? そこはなァ、魔王だけが座れる席なんだ! すぐにどきやがれ……!」
「ああ、そのことか……報告が遅れたが、私はクロム。今日から私が魔王だ。よろしく頼むよ、フレアルド」
「―――はァ?」
何を言っているんだこいつは?
こんな奴今まで魔王軍内部にはいなかったし、名前すら聞いたことがない。それが言うに事欠いて魔王になっただと?
この俺様が何年かけてもまだその高みには辿り着けないのに、それがこんな得体の知れない男に奪われてなるものか!
痛みはもう引いている……再び立ち上がり、ドラグニルを握る。
さっきのはまぐれに決まっているさ、でなければああも簡単に俺様が倒れるわけがない。
「ふざ――けるなァァァッ!!」
もう油断は無い、今度は本気だ。
俺様の『天与』、炎を自在に操ることができる力『火竜の暴炎』を使い、炎を自分の後方に噴出させながらの高速移動を駆使した必殺の一撃を放つ。
「ふう、困ったものだね……」
「死ねェ! 負零亜乱須!!」
速度もタイミングも完璧だった。
炎を纏った槍が奴の心臓に達するかと思った時、またしても俺様は地に倒れ伏していた。
「――ッ!?」
「うん、今のは良かったよ。さすがは四天王だね」
二度の攻撃をいなされたことではっきりと理解した。
俺様は現段階でこの男の足元にも及ばない。
ガイアス様の失踪を聞いたとき、驚愕や失望はあったが、もしかしたら次は自分が……なんて気持ちもあった。
しかし、許し難いが……この男の言う通り、次の魔王はこいつだと認めざるを得なかった。
なぜならば、この世は強さが全てなのだから。
俺の相棒である、自分の背丈を越える程の剛槍『炎槍ドラグニル』を振るい、今日も鍛練に明け暮れていた。
それも全て、いつか最強の存在となり、魔王と呼ばれるためだ。
俺は魔族の中でも特に優れた種族である『竜人族』として生まれ、更には選ばれし者のみが与えられる力、『天与』を持っていたのだ。
当然、そんな恵まれた才能を持つ俺は、周囲の期待を一身に受けていた。この竜人族の秘宝ドラグニルを授与されたのもその期待の現れだ。
この国の王である『魔王ガイアス』の強さに憧れを抱いていたが、俺自身もいずれその強さを越えることが出来ると信じて疑わなかった。
少しでも魔王に近付くために、今は竜人族でも精鋭が集まる部隊に所属しながら、鍛練を欠かさず、そして最前線に立ち続ける。
そんな苛烈な日々が続いたんだが、ある時、四天王の内二人が戦死したとの報せがあった。
なんでも、勇者とやらが敵に現れたせいらしいんだが、人間族ごときに敗れるとは……情けない奴等だぜ。
ともあれ、これはチャンスだ。いや……必然的に俺が新な四天王に選ばれることだろうぜ。
魔王ガイアスを除けば誰も俺には勝てないだろうからな、それが当然だろう。
そして報せがあってから一月程経った時、俺は四天王へと昇格した。
「よし……! 遂にここまで来たぞ……! やはり俺は強い! このまま勝ち続ければ、いつかは俺が……いや、俺様が魔王になる日もそう遠くはないかもなァ! ハッハッハ!」
四天王になった後も変わらずに鍛練を続け、俺は強くなるために最前線に立ち続けた。
軍隊を任されていたのたが、強くなるためには他人に構ってる暇はない。面倒な事……部隊の指揮や内政などは副官に押し付けていた。
それでもうまくいっていた、結局は力が全てなんだよ。
力さえあればければ何もかもがまかり通る。今はそういう時代なんだ。
全てが順調に進んでいたんだ、あの時までは。
「はあ!? ガイアス様が……失踪だと!? 冗談にしては笑えないな……ふざけてんのか!?」
ある日戦場から帰ると、俺の副官を務めていた奴の口から、信じられないことを聞かされた。
それは現在の魔王……俺の憧れの人物であった魔王ガイアスの失踪を告げるものだった。
「い……いえ本当ですフレアルド様。私も信じがたいのですが、確かな情報です。現にここしばらく魔王様の姿を見た者はおりません」
「くっ! まどろっこしい……直接確認してくる! 後は任せたぞ!」
俺は休む暇も惜しんで、常ならば魔王が居るはずの部屋である王の間へと走る。
ここに許可なく入れるのは四天王のような特権階級の者だけ。それ以外の者は、扉の前を歩くことすら許されていないのだ。
それだと言うのに……!
「貴様……!」
王の間に居たのは俺以外の四天王の二人……ガルダリィのオッサンと、千年以上生きているって噂の耄碌した役立たずのジジイ……タルトムが居た。
固い甲羅を持ち、長寿な種族である仙亀族であるが、戦場で奴の姿を見たことはねェ。
昔は強かったのかも知れねェが、今は普段何してるかわからないような役立たずのジジイが、未だに四天王でいるのは実に腹立たしいことだ。
いや、今はそんなことよりも、もう一人……見慣れない奴が一人玉座に座り佇んでいたのだ。
長い黒髪に漆黒のローブ、そして頭には立派な角が生えている。
線の細い優男のような見た目のその姿を見た瞬間、俺の怒りが頂点へ達した。
そこに座っていいのは魔王だけだ。次にそこに座るのはこの俺様だ。邪魔だ、邪魔だ、邪魔だ……!
気付けば俺は召喚したドラグニルを握り、その人物へと飛びかかっていた。
「そこに……座ってんじゃねえェェェッ!!」
「フレアルド! よさぬか!」
オッサンが何か言っているが俺には聞こえねェ。
ドラグニルの切っ先が奴の目前まで迫ったと思ったその時、気が付けば俺は床に倒れ伏していた。
「――――!? あ……がっ……! くっ、一体何が……!」
体が痛むが、何が起こったのかが全く理解できない。
一つ解るのは、俺様が……四天王最強と名高いこの俺様が、いとも容易く倒されたということだけ。
もちろん、他の四天王は一切手出しをしていない。
つまりは、未だ玉座に座ったままのこの男が、俺様が感知できない何かをしたということだ。
「フレアルド……だったかな? 手荒な真似をしてすまないね。しかし、初対面だったし驚いただろうが……いきなり攻撃するとは感心しないな」
「ぐっ……お前は一体何者だ!? そこはなァ、魔王だけが座れる席なんだ! すぐにどきやがれ……!」
「ああ、そのことか……報告が遅れたが、私はクロム。今日から私が魔王だ。よろしく頼むよ、フレアルド」
「―――はァ?」
何を言っているんだこいつは?
こんな奴今まで魔王軍内部にはいなかったし、名前すら聞いたことがない。それが言うに事欠いて魔王になっただと?
この俺様が何年かけてもまだその高みには辿り着けないのに、それがこんな得体の知れない男に奪われてなるものか!
痛みはもう引いている……再び立ち上がり、ドラグニルを握る。
さっきのはまぐれに決まっているさ、でなければああも簡単に俺様が倒れるわけがない。
「ふざ――けるなァァァッ!!」
もう油断は無い、今度は本気だ。
俺様の『天与』、炎を自在に操ることができる力『火竜の暴炎』を使い、炎を自分の後方に噴出させながらの高速移動を駆使した必殺の一撃を放つ。
「ふう、困ったものだね……」
「死ねェ! 負零亜乱須!!」
速度もタイミングも完璧だった。
炎を纏った槍が奴の心臓に達するかと思った時、またしても俺様は地に倒れ伏していた。
「――ッ!?」
「うん、今のは良かったよ。さすがは四天王だね」
二度の攻撃をいなされたことではっきりと理解した。
俺様は現段階でこの男の足元にも及ばない。
ガイアス様の失踪を聞いたとき、驚愕や失望はあったが、もしかしたら次は自分が……なんて気持ちもあった。
しかし、許し難いが……この男の言う通り、次の魔王はこいつだと認めざるを得なかった。
なぜならば、この世は強さが全てなのだから。
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