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【最終章 地炎激突】
リーフェルニア領の戦い⑤
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「なっ、こいつ正気か!?」
不規則に軌道を変えながら自分へと突っ込んでくるガウェインに対し、リューグは正気を疑った。
確かに至近距離まで近付けば、斬撃を飛ばすリューグの技は意味をなさないだろう。
しかしその距離に達するまでは、近付けば近付く程に着弾までの時間が短くなり、回避は難しくなる。
「ふっ、いいぜ……切り刻んでやるよ!」
これに対しリューグは真っ向から迎え撃つ。
だが、段々と距離が縮まっていく中違和感を感じ始めた。
「こいつ――紙一重で躱している!? まさか、見えているのか!?」
ガウェインは最小限の動きで、真っ直ぐとリューグへと向かってきている。
まるで、不可視の斬撃が見えているかのように。
「見えるわけないっしょ! 単純な予測ッスよ!」
「何だとっ!?」
不可視の飛ぶ斬撃は、あくまでも振った曲刀の延長線上にあることに気が付いたガウェインは、リューグの動作に集中することでその軌道を見極めていたのだ。
「こいつ……目が良いのか!?」
技の特性に気が付いたところで、結局は神速で振るわれるリューグの曲刀の動きを捉える動体視力と、斬撃の嵐に突っ込む胆力がなければ成立しない攻略法だが、今のガウェインはその両方を持ち合わせていた。
ガウェインの潜在能力は高かったのだが、師には恵まれなかった。他と交流がない閉鎖された街であるリーフェルニアに生まれたのだから、当然と言えば当然である。
時にはレオナルドに教えを受けることもあったが、領主であるため付きっきりで教えることは稀であるし、そもそもレオナルドの剣術は冒険者時代に戦いながら確立した我流であり、その技の大半が、持ち前の筋力を活かした動きばかりだった。
元来持つ体格が違い過ぎるのもあり、ガウェインにはレオナルドの剣術は肌に合わなかったのである。
しかしアースという恵まれた師に出会ったことで、ガウェインの実力は大きく伸びた。
というより、本来の力を発揮できたとも言える。
「よっ! ほっ! へへ……目の良さは兄貴が誉めてくれたんスよ……!」
「兄貴だぁ……!?」
半身になったり、少し屈んだりと、攻撃そのものは見えていないにも関わらず、予測を頼りに本当に紙一重のところで回避していく。
リューグに近付くにつれガウェインの集中力は極限まで研ぎ澄まされていた。
そしていよいよリューグへと肉薄する。
「こい――つっ!?」
「もらったッス!」
リューグはガウェインの接近に応じて技の発動を止めるも、腕が痺れてすぐには迎撃体制を整えられないでいた。
それもそのはずで、真空波を巻き起こす程の斬撃を繰り返し放ち続けていたのだ、リューグの腕や体に相当な負担がかかっている。
その隙をガウェインは見逃がさず、剣を振るう。
「はあっ!」
キィンと、甲高い音と共にリューグの持つ曲刀のうち一本が弾かれ、朝焼けの向こう側へと消えて行く。
技の反動で、一時的に握力も落ちてしまっているのだった。
「くっ、まだだ!」
ガウェインが剣を振った隙に、落ちた握力をカバーするために残るもう一振の曲刀を両手持ちに切り替えて、戦いを継続しようと試みたリューグ。
しかし続くガウェインの予想外の行動によって、リューグは目を見開いた。
「なっ!? お前……!」
「へへっ、二刀流はあんただけの専売特許じゃないんスよ!」
ガウェインは空いた左手で、腰に携えた鞘からすらりと淀みなくもう一本の剣を抜く。
リューグはガウェインか剣を二本携えていたのは、戦闘が始まった時から一目瞭然であったので把握していた。
しかしいざ戦いになると剣を一本のみ、両手持ちで使っていたので、もう一本の剣は予備だろうと思い込んでいたのだ。
だが思い返してみると、先程の攻撃は両手持ちではなく、片手持ちへと切り替えての攻撃だった。
両手持ちは、いわばこの連携技のためのブラフだったのだ。
「お前っ……最初から――!」
「魔闘流二刀剣術――『比翼連刃』!」
左手の剣を基点とした、あたかも同時に繰り出されたように錯覚する程の流麗な四連撃。
リューグはその攻撃をまともに受け、その体を宙に浮かした。
「ふぅ……刃は潰してあるんで死なないとは思うッスけど……大丈夫ッスよね?」
倒れるリューグに駆け寄り安否を確認するガウェイン。
白目を剥いているが、息はあり、ただ気絶しているだけのようだ。
「――大丈夫そうッスね。まったく、魔族ってのは頑丈ッスねぇ。お嬢の意向で殺すなとは言われてるッスけど、兄貴ならともかく俺程度じゃ加減が難しいッスからね……ま、とりあえず拘束させてもらうッスよ」
ガウェインはリューグをアース特製の頑丈な縄で拘束する。
これでひとまずは無力化できるだろう。
こうして量陣営の若きエース二人の戦いに決着は着いたが、この戦いが終わった訳ではない。
局地的な勝利を喜ぶ間もなく、この後の戦いは、更に熾烈を極めることとなる。
不規則に軌道を変えながら自分へと突っ込んでくるガウェインに対し、リューグは正気を疑った。
確かに至近距離まで近付けば、斬撃を飛ばすリューグの技は意味をなさないだろう。
しかしその距離に達するまでは、近付けば近付く程に着弾までの時間が短くなり、回避は難しくなる。
「ふっ、いいぜ……切り刻んでやるよ!」
これに対しリューグは真っ向から迎え撃つ。
だが、段々と距離が縮まっていく中違和感を感じ始めた。
「こいつ――紙一重で躱している!? まさか、見えているのか!?」
ガウェインは最小限の動きで、真っ直ぐとリューグへと向かってきている。
まるで、不可視の斬撃が見えているかのように。
「見えるわけないっしょ! 単純な予測ッスよ!」
「何だとっ!?」
不可視の飛ぶ斬撃は、あくまでも振った曲刀の延長線上にあることに気が付いたガウェインは、リューグの動作に集中することでその軌道を見極めていたのだ。
「こいつ……目が良いのか!?」
技の特性に気が付いたところで、結局は神速で振るわれるリューグの曲刀の動きを捉える動体視力と、斬撃の嵐に突っ込む胆力がなければ成立しない攻略法だが、今のガウェインはその両方を持ち合わせていた。
ガウェインの潜在能力は高かったのだが、師には恵まれなかった。他と交流がない閉鎖された街であるリーフェルニアに生まれたのだから、当然と言えば当然である。
時にはレオナルドに教えを受けることもあったが、領主であるため付きっきりで教えることは稀であるし、そもそもレオナルドの剣術は冒険者時代に戦いながら確立した我流であり、その技の大半が、持ち前の筋力を活かした動きばかりだった。
元来持つ体格が違い過ぎるのもあり、ガウェインにはレオナルドの剣術は肌に合わなかったのである。
しかしアースという恵まれた師に出会ったことで、ガウェインの実力は大きく伸びた。
というより、本来の力を発揮できたとも言える。
「よっ! ほっ! へへ……目の良さは兄貴が誉めてくれたんスよ……!」
「兄貴だぁ……!?」
半身になったり、少し屈んだりと、攻撃そのものは見えていないにも関わらず、予測を頼りに本当に紙一重のところで回避していく。
リューグに近付くにつれガウェインの集中力は極限まで研ぎ澄まされていた。
そしていよいよリューグへと肉薄する。
「こい――つっ!?」
「もらったッス!」
リューグはガウェインの接近に応じて技の発動を止めるも、腕が痺れてすぐには迎撃体制を整えられないでいた。
それもそのはずで、真空波を巻き起こす程の斬撃を繰り返し放ち続けていたのだ、リューグの腕や体に相当な負担がかかっている。
その隙をガウェインは見逃がさず、剣を振るう。
「はあっ!」
キィンと、甲高い音と共にリューグの持つ曲刀のうち一本が弾かれ、朝焼けの向こう側へと消えて行く。
技の反動で、一時的に握力も落ちてしまっているのだった。
「くっ、まだだ!」
ガウェインが剣を振った隙に、落ちた握力をカバーするために残るもう一振の曲刀を両手持ちに切り替えて、戦いを継続しようと試みたリューグ。
しかし続くガウェインの予想外の行動によって、リューグは目を見開いた。
「なっ!? お前……!」
「へへっ、二刀流はあんただけの専売特許じゃないんスよ!」
ガウェインは空いた左手で、腰に携えた鞘からすらりと淀みなくもう一本の剣を抜く。
リューグはガウェインか剣を二本携えていたのは、戦闘が始まった時から一目瞭然であったので把握していた。
しかしいざ戦いになると剣を一本のみ、両手持ちで使っていたので、もう一本の剣は予備だろうと思い込んでいたのだ。
だが思い返してみると、先程の攻撃は両手持ちではなく、片手持ちへと切り替えての攻撃だった。
両手持ちは、いわばこの連携技のためのブラフだったのだ。
「お前っ……最初から――!」
「魔闘流二刀剣術――『比翼連刃』!」
左手の剣を基点とした、あたかも同時に繰り出されたように錯覚する程の流麗な四連撃。
リューグはその攻撃をまともに受け、その体を宙に浮かした。
「ふぅ……刃は潰してあるんで死なないとは思うッスけど……大丈夫ッスよね?」
倒れるリューグに駆け寄り安否を確認するガウェイン。
白目を剥いているが、息はあり、ただ気絶しているだけのようだ。
「――大丈夫そうッスね。まったく、魔族ってのは頑丈ッスねぇ。お嬢の意向で殺すなとは言われてるッスけど、兄貴ならともかく俺程度じゃ加減が難しいッスからね……ま、とりあえず拘束させてもらうッスよ」
ガウェインはリューグをアース特製の頑丈な縄で拘束する。
これでひとまずは無力化できるだろう。
こうして量陣営の若きエース二人の戦いに決着は着いたが、この戦いが終わった訳ではない。
局地的な勝利を喜ぶ間もなく、この後の戦いは、更に熾烈を極めることとなる。
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