上 下
82 / 120
【最終章 地炎激突】

ポプモアの実

しおりを挟む
 フレアルド達がリーフェルニアの街へと続く道を直進していると、谷のような地形の場所に辿り着いた。
 道の両脇に高さ10メートルを超える台地があったのだが、この場所がまるで何者かが意図的に作ったもののように整っていることに、感のいいゴラウンは気が付いた。

「フレアルド様、この場所……もしかしたら我々は誘い込まれたのかもしれません」

「あァ? そんなの関係ねェよ。罠だとしても、奴らにゃァ大したことは出来ないだろ――」

「今だ! 投擲開始!」

 その刹那、号令と共に台地の上に十を超える人影が現れ、球体のようなものをフレアルドらに向かって次々と投擲する。

「あァ? なんだこれは?」

 フレアルドが投擲された球体を弾き飛ばし、地面に転がるそれを見てみると、爆弾の類いや鉄球のような攻撃性のあるものではなかった。
 ともすれば、何かの植物の実のように見える。

「……? ハッ! 多少硬い実を投げたところで痛くも痒くもねェぜ! しかし……こんなものしか武器がないとは、あまりにも貧弱だな! こんなもん全て燃やし尽くしてやるよ!」

 フレアルドが飛んでくる実のようなものに向かって手を振ると、広範囲に炎が巻き起こり、実を漏れなく焼き尽くした……かに見えたが、炎を受けてなお、その実は健在であり、そのまま地面へと転げ落ちた。

「あァ……!?」

 当然、フレアルドは焼き尽くすつもりで炎を放ったのだが、それが叶わなかったことに驚愕する。

「クッ……加減しすぎたか? まァ、燃やし尽くせなかったところで痛くも痒くもないが――」

 パァン!

 フレアルドの背後で乾いた音が鳴り響く。
 それは徐々に連続し、それに従って徐々に部隊内に混乱が広がる。

「痛っ! いたたたたっ! な、なんだこれは!?」
「フレアルド様! これは一体!?」

「俺様が知るか――クソッ! なんだこりゃァ!?」

 破裂音の正体は、熱せられた実が弾ける音だった。
 フレアルドらに投げられたのは、ポプモアの実と呼ばれるもので、火山地帯に生息する植物の実だ。
 植物としては珍しく、特性として熱や炎を遮断する繊維で覆われている。遮断すると同時に受けた熱をエネルギー源として成長する植物である。

 更にその実は極度に熱せられることにより破裂し、中にある無数の種を四方八方へと飛ばし繁殖する習性を持つ。
 しかし本来ならポプモアの実は指先でつまめる程の大きさであり、さほど危険な物ではないのだが、アースの品種改良により実は手の平大まで巨大化している。

 それによって種子の大きさや硬度も増しており、危険性は増大している。フレアルド達はまさに無数に飛び交う種の散弾を浴びている状況だ。

「ゴ……ゴラウン隊長! 身動きが取れません! このままでは……!」

「焦るな! この破裂もそう長くは続かないだろう、機を待つんだ!」
 
 破裂する時間にも個体差はあるので、いつ、どこで、どの実が破裂するかもわからない状況だった。
 竜人族である彼らにとって致命傷までとはいかないものの、当たりどころによっては戦闘不能になる可能性もあるため、収まるまで暫くは防御体制を取るしかない。

「よし……! 効いているぞ! アースさんの言った通り炎を使ったな!」
「馬鹿! 投げ終わったらすぐ撤退しろとも言われてるだろ、さっさと撤退するぞ!」

 崖上にてポプモアの実を投擲していた領民達が即座に踵を返す。
 それと同時に、フレアルド達の正面方向、数百メートル離れた位置に予め設置していた、大砲のような見た目の巨大な魔道具、その砲身がフレアルド達を確と捉える。

「へへーん……! 今度はウチの番や! ウチとあんちゃんの合作魔道具の威力、目ん玉ひんむいてとくと見ぃや!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

勇者パーティを追放されそうになった俺は、泣いて縋って何とか残り『元のDQNに戻る事にした』どうせ俺が生きている間には滅びんだろう!

石のやっさん
ファンタジー
今度の主人公はマジで腐っている。基本悪党、だけど自分のルールあり! パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のリヒトは、とうとう勇者でありパーティリーダーのドルマンにクビを宣告されてしまう。幼馴染も全員ドルマンの物で、全員から下に見られているのが解った。 だが、意外にも主人公は馬鹿にされながらも残る道を選んだ。 『もう友達じゃ無いんだな』そう心に誓った彼は…勇者達を骨の髄までしゃぶり尽くす事を決意した。 此処迄するのか…そう思う『ざまぁ』を貴方に 前世のDQNに戻る事を決意した、暗黒面に落ちた外道魔法戦士…このざまぁは知らないうちに世界を壊す。

【完結】四天王最弱(ほぼ村娘)なので、四天王最強がお世話してくれるようです

雪野原よる
恋愛
古典的RPGの世界に転生したけれど、四天王最弱の私では、推し(悪の帝国皇太子)がまったく守れません! だが気が付けば逆に推しが私を守っていたのだった……どういうことなの教えて依田さん!  ■推しに守られるどころか餌付けされせっせとお世話されているヒロインのほのぼのコメディです。  ■恋愛は交換日記から始まるレベルです。 

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です

カタナヅキ
ファンタジー
※弟子「究極魔法とかいいので収納魔法だけ教えて」師匠「Σ(゚Д゚)エー」 数十年前に異世界から召喚された人間が存在した。その人間は世界中のあらゆる魔法を習得し、伝説の魔術師と謳われた。だが、彼は全ての魔法を覚えた途端に人々の前から姿を消す。 ある日に一人の少年が山奥に暮らす老人の元に尋ねた。この老人こそが伝説の魔術師その人であり、少年は彼に弟子入りを志願する。老人は寿命を終える前に自分が覚えた魔法を少年に託し、伝説の魔術師の称号を彼に受け継いでほしいと思った。 「よし、収納魔法はちゃんと覚えたな?では、次の魔法を……」 「あ、そういうのいいんで」 「えっ!?」 異空間に物体を取り込む「収納魔法」を覚えると、魔術師の弟子は師の元から離れて旅立つ―― ――後にこの少年は「収納魔導士」なる渾名を付けられることになる。

転生してギルドの社畜になったけど、S級冒険者の女辺境伯にスカウトされたので退職して領地開拓します。今更戻って来いって言われてももう婿です

途上の土
ファンタジー
『ブラック企業の社畜」ならぬ『ブラックギルドのギル畜』 ハルトはふとしたきっかけで前世の記憶を取り戻す。  ギルドにこき使われ、碌に評価もされず、虐げられる毎日に必死に耐えていたが、憧れのS 級冒険者マリアに逆プロポーズされ、ハルトは寿退社(?)することに。  前世の記憶と鑑定チートを頼りにハルトは領地開拓に動き出す。  ハルトはただの官僚としてスカウトされただけと思っていたのに、いきなり両親に紹介されて——  一方、ハルトが抜けて彼の仕事をカバーできる者がおらず冒険者ギルドは大慌て。ハルトを脅して戻って来させようとするが——  ハルトの笑顔が人々を動かし、それが発展に繋がっていく。  色々問題はあるけれど、きっと大丈夫! だって、うちの妻、人類最強ですから! ※中世ヨーロッパの村落、都市、制度等を参考にしておりますが、当然そのまんまではないので、史実とは差異があります。ご了承ください ※カクヨムにも掲載しています。現在【異世界ファンタジー週間18位】

処理中です...