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【迫り来る危機】
魔王軍のその後⑦
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とうに日は沈み、辺りが完全な漆黒に包まれた頃、フレアルド率いる滅戯竜隊は、リーフェルニア領と目と鼻の先にある森で野営をしていた。
今の位置から目的地までは約一時間もあれば到着する算段だ。
休みなしでここまで来たので、部隊員の体力回復に努めるためにしばしの休息を取っている。
「決行は明日の早朝だ。連中がまだ目も覚めないうちに制圧してやるぞ」
フレアルドは焚き火の近くで座りながらそう告げたが、隊員達は返事をする気力もないのか、俯いたままであり、中には眠りこけている者もいた。
「ケッ……だらしのねェ連中だぜ。まァ戦いになればシャキッとするか。まァそれに、最悪俺様一人でもなんとかなるだろ」
実際問題、部隊のコンディションは最悪であるのだが、フレアルドはそれを一切考慮しないでいた。
フレアルドは基本的に自分を基準として物事を判断する癖があり、部隊の指揮経験も浅い。
そんなフレアルドに振り回された結果が、この疲弊しきった状態である。
せめて満足のいく食事が取れていれば、ここまで身を削ることもなかったのであろうか。
「ハッ、楽しみ過ぎてウズウズしてきやがったぜ。待っていやがれアース……!」
「アース……? あの……フレアルド様。今回の目的地はどこなのてしょうか?」
行動目的すら知らされていなかった秘書官の女性が、単純に疑問に思いフレアルドに尋ねた。
彼女は非戦闘員であるのだが、他の部隊が撤退している中、一人置いていくわけにもいかなかったので、今回の行軍に同行していた。
ここまで付いてこれたのは、戦闘による疲労がなかったのもあるが、やはり彼女も竜人族であり、一般兵と比べ優れた能力を持つからに他ならない。
「あァ? あー……確かリーフェルニアって街だ」
フレアルドも機嫌が良いのか、普段なら怒鳴り付けるところであったが、秘書官に対して素直に返答した。
「リーフェルニア……? あまり聞いたことがないのですが、何か有益な物があるんでしょうか?」
「あァ? そんなん知らねェよ。俺様の目的はただ一つ。アースの野郎を今度こそこの手でブッ殺すことだけだ」
「えっ!? アースと言うと……あの処刑された元四天王のアース様ですか? ――あっ」
以前アースの名前を口にしただけでひどい目にあったことを思い出し、驚愕していたとはいえ、迂闊に口に出してしまった秘書官は身構えてしまう。
「あァそうだ。マダラからの情報なんだが……確度は高いんじゃねェか? つーか俺様は確信してんだ。アースの野郎が、俺様に対して恨みを持っていて、今まで妨害工作をしてきただろう? でなければ今頃帝都を制圧しているところだぜ?」
意外にも咎められることはなく、そのまま会話を続けるフレアルドに、秘書官はほっと胸を撫で下ろす。
「そ――それは……いえ、そう……ですね。失礼しました」
妨害工作など何かあったのだろうかと疑問に思ったが、あまり口答えして機嫌を損ねるのも良くないので、なにも言わずに同調する。
しかし、フレアルドの言っていること……元四天王のアースが生きているのであれば、どうしても言わねばならないことが秘書官にはあった。
彼女は意を決した様子で、フレアルドに進言する。
「あの……フレアルド様! 失礼を承知で一つ申し上げたいことがございます」
「あァ? なんだ? 今俺様はすこぶる機嫌が良い。聞いてやるから言ってみろ」
フレアルドが秘書官とこうして喋っているのも、進言を許可したのも、アースを自らの手で葬り去れるという愉悦の感情から来る気まぐれに過ぎなかった。
普段ならこんな会話も無いだろうし、進言しようとしても話す間もなく一蹴されて終わっただろう。
もしそうであったのならば、この先起きる悲劇は回避できたのかもしれない……
今の位置から目的地までは約一時間もあれば到着する算段だ。
休みなしでここまで来たので、部隊員の体力回復に努めるためにしばしの休息を取っている。
「決行は明日の早朝だ。連中がまだ目も覚めないうちに制圧してやるぞ」
フレアルドは焚き火の近くで座りながらそう告げたが、隊員達は返事をする気力もないのか、俯いたままであり、中には眠りこけている者もいた。
「ケッ……だらしのねェ連中だぜ。まァ戦いになればシャキッとするか。まァそれに、最悪俺様一人でもなんとかなるだろ」
実際問題、部隊のコンディションは最悪であるのだが、フレアルドはそれを一切考慮しないでいた。
フレアルドは基本的に自分を基準として物事を判断する癖があり、部隊の指揮経験も浅い。
そんなフレアルドに振り回された結果が、この疲弊しきった状態である。
せめて満足のいく食事が取れていれば、ここまで身を削ることもなかったのであろうか。
「ハッ、楽しみ過ぎてウズウズしてきやがったぜ。待っていやがれアース……!」
「アース……? あの……フレアルド様。今回の目的地はどこなのてしょうか?」
行動目的すら知らされていなかった秘書官の女性が、単純に疑問に思いフレアルドに尋ねた。
彼女は非戦闘員であるのだが、他の部隊が撤退している中、一人置いていくわけにもいかなかったので、今回の行軍に同行していた。
ここまで付いてこれたのは、戦闘による疲労がなかったのもあるが、やはり彼女も竜人族であり、一般兵と比べ優れた能力を持つからに他ならない。
「あァ? あー……確かリーフェルニアって街だ」
フレアルドも機嫌が良いのか、普段なら怒鳴り付けるところであったが、秘書官に対して素直に返答した。
「リーフェルニア……? あまり聞いたことがないのですが、何か有益な物があるんでしょうか?」
「あァ? そんなん知らねェよ。俺様の目的はただ一つ。アースの野郎を今度こそこの手でブッ殺すことだけだ」
「えっ!? アースと言うと……あの処刑された元四天王のアース様ですか? ――あっ」
以前アースの名前を口にしただけでひどい目にあったことを思い出し、驚愕していたとはいえ、迂闊に口に出してしまった秘書官は身構えてしまう。
「あァそうだ。マダラからの情報なんだが……確度は高いんじゃねェか? つーか俺様は確信してんだ。アースの野郎が、俺様に対して恨みを持っていて、今まで妨害工作をしてきただろう? でなければ今頃帝都を制圧しているところだぜ?」
意外にも咎められることはなく、そのまま会話を続けるフレアルドに、秘書官はほっと胸を撫で下ろす。
「そ――それは……いえ、そう……ですね。失礼しました」
妨害工作など何かあったのだろうかと疑問に思ったが、あまり口答えして機嫌を損ねるのも良くないので、なにも言わずに同調する。
しかし、フレアルドの言っていること……元四天王のアースが生きているのであれば、どうしても言わねばならないことが秘書官にはあった。
彼女は意を決した様子で、フレアルドに進言する。
「あの……フレアルド様! 失礼を承知で一つ申し上げたいことがございます」
「あァ? なんだ? 今俺様はすこぶる機嫌が良い。聞いてやるから言ってみろ」
フレアルドが秘書官とこうして喋っているのも、進言を許可したのも、アースを自らの手で葬り去れるという愉悦の感情から来る気まぐれに過ぎなかった。
普段ならこんな会話も無いだろうし、進言しようとしても話す間もなく一蹴されて終わっただろう。
もしそうであったのならば、この先起きる悲劇は回避できたのかもしれない……
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