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【迫り来る危機】

風雲急を告げる

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「皆様! 緊急で申し訳ございませんがすぐに館の方へお集まりください! ――って、エレミアお嬢様!? 一体どうされたのですか!?」

「マリア? 何かあったのか?」

 アースが館へと向かおうとした最中、マリアがなにやら血相を変えて工房へとやって来た。
 しかし気を失っているエレミアを見るや、慌ててアースの元へと駆け寄る。

「あー、えっとな……マリアはん。エレミア嬢ちゃんはちょっと興奮し過ぎたと言うか、考え事をし過ぎたというか……まあちょっと休んで頭冷やせば大丈夫やから。心配せんでええで」

「そ、そうなのですか? コハク様がそう言われるのでしたら……」

 コハクの言葉を受けて、マリアはほっと胸を撫で下ろす。

「えっと、マリアさん。なんか俺達に用事ッスか?」

「そ、そうでした。皆様、レオナルド様が今しがた帰還されました。それで、帝都での出来事について皆様にお話があるとのことでしたので、お呼び立てにあがりました。至急館へお集まりくださいませ」

「想定していた期間より随分と早く帰ってきたな……これは何かがあったと思って間違いなさそうだな」

 本来の予定ではあと一週間以上は時間が掛かる算段であったのだが、それを大幅に早回る帰還だったので何か緊急を要する事態があったのは想像に難くないだろう。

「事情は飲み込めんけど……とりあえず、行ってみよか。ガウ坊、いつ戻れるかわからんし、一応バスケット持ってってな」

「ウッス! 了解ッス、コハク姉さん!」

 こうして、アース達は全員揃ってリーフェルニアの館へと向かうのであった。
 到着してもエレミアは未だ気を失ったままであったので、アースはエレミアを休ませるため、彼女の私室のベッドへと運び、部屋を後にする。
 去り際に左手に輝く指輪が目に入り、先程の一件がアースの頭に浮かんだ。

「結婚……か。半分人間族で半分魔族の俺は、誰かから愛してもらえるのだろうか……? この街の皆は良くしてくれているが、生涯を共にするとなると話は別になってくるだろう。――いや、考えるだけ無駄か」

 忌み子として生まれた自分が、他人から真の意味で愛されることはない。
 自分の子に穢れた血が混ざるのを、誰しもが本能的に拒絶してしまうためだ。

 アースも幼い頃からそれは理解していたし、覚悟もしているつもりだった。
 しかし、そんな人並みの幸せを生涯手にすることができないという事実が、アースの胸をきつく締め付ける。

 アースが色恋沙汰に鈍感なのは、それが原因……いや、鈍感というわけではなく、心が傷つかないように、本能的に気付かないように振る舞っていたのかもしれない。

「――さて、レオナルドの所へ急ごう」

 そんな気持ちを無理矢理に振り払い、アースは部屋を後にした。
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