上 下
75 / 120
【迫り来る危機】

愛の告白?

しおりを挟む
「すまないな、すぐ済む。さて、サイズが合うといいのだが……」

 アースは差し出された手をそっと掴み、何かを確認するように指を触っていた。

「ふむ……少しきついだろうか? お、この指なら丁度良さそうだな」

「えっ、えっ? な、なにアース? どうしたの!?」

 アースに触れられ、緊張やら恥ずかしいやらで顔を真っ赤にして慌てふためくエレミアに、追い討ちをかけるようにしてその左手の薬指へと指輪を嵌める。

「うん、やはり丁度良いサイズだな。似合っているぞ、エレミア」

「――――ッ!?」

 その台詞を聞いた瞬間、エレミアは夕陽のように顔を紅潮させ、静止したまま動かなくなっててしまう。
 数瞬後、頭をふらふらとさせ、まるで頭から煙が出ていると錯覚してしまう程に、傍から見ても混乱しているのがよくわかる状態だった。
 
「あっ、兄貴!? こ、これはサプライズってやつッスか!? いつの間にそんなに仲が進展して……いやー、お嬢もこれでようやく報われると思うと感慨深いッスね……」

「いや……ガウ坊。多分これはなんも知らんでやっとるパターンのやつやで……」

 コハクの予想は見事的中しており、アースは自分のしたことのをまるで理解していなかった。
 
「ん? どうかしたのか? いや、それよりエレミアが固まってしまったみたいなんだが……俺が何かしてしまったのだろうか?」

「あー、えーと……あのな、あんちゃん。文化の違いってやつなんかな……魔族ではどうなんか知らんけど、人間族の間では異性に指輪を贈るのには意味があるんやで」

「そうなのか……? もしかして失礼に当たるのだろうか……?」

 アースはコハクに指摘され、礼節を欠いた行為をしてしまったのかと不安になっている様子だった。
 しかしコハクもこのまま説明しても良いものかと一瞬思い悩むが、うやむやにするのも良くないかと考え、やむなくアースにその行為の意味の説明を始める。
 
「いや、まあ失礼と言うかなんと言うか……意味としては好意を示すものなんやけど……」

「好意? だったら別段問題無いんじゃないのか?」

「うん……まあそうなんやけどな? どの指に付けるかで意味合いが変わってくるんよ。あんちゃんが指輪を嵌めた左手の薬指は、『愛情を深めたい』みたいな意味があってやな。ついでに言うと、相手の手を取って薬指に直接指輪を嵌めるのは、求婚したのと同義やで」

「――なっ!? と言うことは、俺がエレミアに結婚を申し込んだことになるのか……!?」

 コハクの説明を聞き、事の重大さを知ったアースは、知らなかったとは言えさすがに慌ててしまう。
 
「けっ!? け、けけけけっこん……!? アースと――――けっ、ふぁにゃぁ――」

「エレミア!? 大丈夫か!?」

「おっとぉ! セーフッス!」

 意味不明な言葉を残しながら、頭が一杯の状態になったエレミアは気を失ってしまう。
 アースは即座に崩れ落ちるエレミアの体を支え、ガウェインはバスケットが落下する前にそれをキャッチすることで事なきを得た。
 
「あー……うん。とりあえず俺はエレミアを館に運んで休ませてくる。二人は先に食べていてくれ」

 エレミアを抱き抱えながらアースはそう告げた。
 しかしアースにしては珍しく目を伏せがちで、さすがに色々と意識してしまっているようだ。

「おー、行ってきぃや。……むふふ、なんや若者は初心うぶでええなぁ」

 そんなアースの様子を見たコハクは、一連の流れで垣間見えた二人の初々しさに思わずにやけてしまうのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー
ファンタジー
 第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)  転生前も、転生後も 俺は不幸だった。  生まれる前は弱視。  生まれ変わり後は盲目。  そんな人生をメルザは救ってくれた。  あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。  あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。  苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。  オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。

D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。 その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。 更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。 果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!? この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)

IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。 世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。 不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。 そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。 諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる…… 人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。 夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ? 絶望に、立ち向かえ。

【連載版】異世界に転生した少女は異世界を満喫する

naturalsoft
恋愛
読書様からの要望により、短編からの連載版になります。 短編では描き切れ無かった細かい所を記載していきたいと思います。 短編と少し設定が変わっている所がありますがご了承下さい ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ ふと目が覚めると赤ちゃんになっていた。Why?私を覗き込む金髪美人のお母さんを見て、あ、異世界転生だ!と気付いた私でした。前世ではラノベを読みまくった知識を生かして、魔力?を限界まで使えば総量が増えるはず! よし、魔力チートを目指してエンジョイするぞ♪ これは神様にあった記憶もない楽天家な少女が前世の知識で異世界を満喫する話です。

学園ランキング最強はチートで無双する~能力はゴミだが、異世界転生で得たチート能力で最強~

榊与一
ファンタジー
西暦2100年。 人類に新たなる可能性、アビリティが齎された。 その能力は時に世界の法則すらも捻じ曲げる。 人々はそれを神からの贈り物(ギフト)と名付けた。 西暦2125年。 鏡 竜也(かがみ りゅうや)は16歳の時、突然ギフトに目覚めそれ専門の育成学園に編入させられる事になる。 目覚めた力は、触れた者の髪を伸ばすだけというゴミの様な能力。 そんなギフトで能力者だらけの学院などには行きたくなかったが、国からの強制であるため彼は渋々従う。 だが周囲の予想とは裏腹に、彼は瞬く間にその圧倒的な力で学園最強にまで上り詰め無双しだした。 何故なら彼は転生者だったからだ。 正確には一度トラックに引かれて異世界に転生した後、この世界に戻って来た転生者だった。 彼は転生時に女神よりチート能力であるレベルシステムが与えられ。 そして異世界でひたすらレベルを上げ続けた結果、圧倒的な能力で魔王を討伐するまでに成長していた。 「これで世界は救われました。さあ、貴方を元居た世界の時間へと送りましょう」 異世界でのレベル上げで圧倒的な能力を手に入れていた鏡竜也は、容易くトラックを躱して見せる。 「勇者もいいけど、やっぱこっちの世界の方がいろいろ便利だよな」 これは異世界でレベルを上げまくった鏡竜也が、そのチート能力で周囲の能力者達を圧倒する物語。

スーツアクターだった俺が異世界で戦隊初めました!

桐生連
ファンタジー
夢の特撮ヒーローになれた!異世界で!? 遊園地で雑魚兵のスーツアクターをしている猿渡涼(さわたりりょう)は俳優見習いの青年。 こっそりレッドのスーツを着た日に不思議な赤い石を拾い更衣室を後にしたら、そこは異世界で本当の悪党が蔓延る世界だった。 そこに現れた宝石のティラノサウルスに見出され涼は異世界で個性豊かな仲間達と戦隊活動を始める。 果たして、異世界を平和に出来るのか!?

魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒
ファンタジー
 俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。  そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。  しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。 「ここはどこだよ!」  夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。  あげくにステータスを見ると魔力は皆無。  仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。 「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」  それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?  それから五年後。  どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。  魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!  見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる! 「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」 ================================  月見酒です。  正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

処理中です...