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【迫り来る危機】

守護の指輪

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「はあ……ようわかっとらんみたいやけど、まあええか。あんちゃんなら悪いようにはせんやろしな。……んで、その指輪はどんな機能があるんや?」

「ああ、守護の魔法を刻んである。ちょっと貸してくれ」

 アースが指輪に魔力を込めると、青く輝く水の幕のようなものがアースの体を覆うようにして出現する。
 
「まあこんな感じで防御魔法が展開されるんだが……実際に装備しないと効果が現れないから、危険もあるし耐久実験はできそうにないな」

 怪我をしてしまう可能性が万に一つでもあれば実験をするわけにもいかないので、初めて作ったということもあり、この指輪がどれだけの性能を持つのかは未知数であった。
 だがそれでも、気休め程度にはなるだろうと考えアースはこの指輪を作ったのだ。

「……ははーん? あんちゃん、ウチにはお見通しやで? その指輪、自分の物じゃなくて、誰かに贈る物やろ? それも大事な人に」

「ああ、よくわかっ――」

「兄貴ーー! 今日も稽古お願いするッス!」

 アースの言葉を遮るように、ガウェインの大声が工房内にこだまする。
 ガウェインは、アースの戦いぶりを目の当たりにしてからというもの、事あるごとにアースに稽古をつけてもらっていたのだった。

 今日も午後から稽古に付き合う約束だったが、今はそろそろ昼時かという時間であるにも関わらず、待ちきれずに工房まで押し掛けたのだった。

「ガウェイン! もう……二人の邪魔しちゃだめじゃない」

 ガウェインの背後からエレミアが続いて現れた。
 その手にはバスケットを携えており、そこから顔を覗かせるパンや焼き菓子などが、食欲を掻き立てる匂いを放っていた。

「でもお嬢……兄貴に鍛えられてから、自分でも日に日に力を付けていってるのがわかるんスよ! もっと強くなりたいと思うのは当然じゃないッスか!」

 事実、アースに教えられたガウェインの実力の伸びは目を見張るものがあった。
 それもそのはずで、今までリーフェルニア領では戦闘技術をまともに教えられる人材が乏しかったため、基本的には自主的に鍛えるしかなかったのである。

 元々高い潜在能力を持っていたガウェインが、くすぶっていた状態から良き師に巡り会い、一つ壁を越えたのだ。
 壁を乗り越え成長する喜びを知った今、ガウェインは楽しくて仕方がなくなっていた。

「もう、ガウェイン? アースだって忙しいんだから……少しぐらい待てないの? あ、二人とも。食べるもの持ってきたからお昼にしましょ?」

「お、よっしゃ待ってました! 今日はお天道様もご機嫌やし、ガウ坊はほっといてたまには外で優雅にランチと洒落込むとしよか。さーて、今日はなんやろなー」

「えぇ!? 二人とも扱いが雑じゃないッスか!?」

 一人で興奮するガウェインをよそに、他の面々は至って平常運転であった。

「食事の用意助かるよ、エレミア。……と、昼食の前に渡しておきたいものがあるんだ。少し手を見せてくれるか?」

「――え? あ、うん。こう?」

 エレミアはアースの言葉に応じ、きょとんとした顔でバスケットで塞がっていない方の手、左手をアースへ差し出した。
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