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【真実の吐露】
無自覚
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とある日、エレミアは館の厨房にて新しいデザートの試作をしていた。
「うーん……もうちょっと見栄えが欲しいわね……味ももう少し酸味があったほうがいいかしら――ん?」
外が騒がしかったので作業をいったん止めて窓の外を覗くと、館の庭に台車や馬車などが複数並んでいた。
「ああ、今日からだったわね。ふふっ、それにしてもみんな生き生きしてる」
今日は鉱山資源の確保のための作業部隊を集め、出発する日だった。
集まった人々は数か月前と違い、希望に満ち溢れているようにエレミアは感じた。
ここ数日で街が活気づき始め、領民の表情が以前よりも明るくなったように思う。困窮していた状況が改善の兆しを見せているのだから、その気持ちは理解できる。エレミア自身も同じ気持ちだ。
この状態を作り出したのは、間違いなくアースの功績だ。
アースという規格外の存在がこのリーフェルニア領にもたらした恩恵は大きい。
食料問題をたった一日で解決してみせ、かなり良質な薬類を輸出品として提供してくれた。
そのアースはというと、今はこの街とクレミアル街道とを繋ぐ道を作るために、街を離れ単独で作業をしてくれている。
「それにしても、アースが魔族だったなんて驚いたわ……それもあの四天王の一人だったなんて」
先日、アースはエレミア含む街に暮らす人々全員に、自分が魔族であることを打ち明けた。
もちろん初めて聞いた時には、エレミアも衝撃を受けたし、唖然としてしまった。
でもすぐにアースの体が震えていることに気が付いて、そんなつまらない感情などはすぐに消え去っていた。
魔族だって悩み、迷い、苦悩だってする。アースは自分たちに受け入れてもらいたくて、大きな体を震わせてまで秘密を打ち明けてくれたのだ。
アースと共に過ごし、彼の優しさや誠実さを知っていたので、その過去がどうであれ覚悟を持って打ち明けてくれた彼を蔑むような選択肢はエレミアにはなかった。
そして、街の皆も同じ気持ちでいてくれたことを、とても嬉しく思っている。
「わ、私ったらあんな大胆なことしちゃったけど……アースに変な風に思われてないかしら……」
エレミアは震えるアースを勇気づけるために、その背中を抱き締めたことをふと思い出し赤面する。
体が勝手に動いてやってしまったこととはいえ、誰にでも抱きついたりするような女性だとアースだけには勘違いされてしまっては困る。
と、そこまで考えたところでエレミアは一つの結論へ辿り着く。
「――あれ? それってつまり……アースだけには嫌われたくない……ってこと? あれ? そういうこと……なのかな……?」
エレミアはリーフェルニア領で生まれ育ったため、生まれてこの方同年代の男性が周りにあまり居なかったからか、異性に恋愛感情を抱いたことがなかった。
ガウェインなど、年が近い者もいなくはないが、エレミアは貴族であり、基本的には領民全員主従の関係にある。
辺境の地故に他の貴族との関わりが薄い環境だったので、何の気兼ねもなく対等に話せる人物は、肉親であるレオナルドを除き初めての存在であった。
「初めての経験でちょっとドキドキしちゃっただけよね……うん! そうよ! そう!」
考えれば考えるほど頬が赤くなるのを感じたエレミアは、首を左右に振ることでその思考を振り払い、デザート作りを再開するのであった。
その料理が、誰を思って作っているかを自覚せずに。
「うーん……もうちょっと見栄えが欲しいわね……味ももう少し酸味があったほうがいいかしら――ん?」
外が騒がしかったので作業をいったん止めて窓の外を覗くと、館の庭に台車や馬車などが複数並んでいた。
「ああ、今日からだったわね。ふふっ、それにしてもみんな生き生きしてる」
今日は鉱山資源の確保のための作業部隊を集め、出発する日だった。
集まった人々は数か月前と違い、希望に満ち溢れているようにエレミアは感じた。
ここ数日で街が活気づき始め、領民の表情が以前よりも明るくなったように思う。困窮していた状況が改善の兆しを見せているのだから、その気持ちは理解できる。エレミア自身も同じ気持ちだ。
この状態を作り出したのは、間違いなくアースの功績だ。
アースという規格外の存在がこのリーフェルニア領にもたらした恩恵は大きい。
食料問題をたった一日で解決してみせ、かなり良質な薬類を輸出品として提供してくれた。
そのアースはというと、今はこの街とクレミアル街道とを繋ぐ道を作るために、街を離れ単独で作業をしてくれている。
「それにしても、アースが魔族だったなんて驚いたわ……それもあの四天王の一人だったなんて」
先日、アースはエレミア含む街に暮らす人々全員に、自分が魔族であることを打ち明けた。
もちろん初めて聞いた時には、エレミアも衝撃を受けたし、唖然としてしまった。
でもすぐにアースの体が震えていることに気が付いて、そんなつまらない感情などはすぐに消え去っていた。
魔族だって悩み、迷い、苦悩だってする。アースは自分たちに受け入れてもらいたくて、大きな体を震わせてまで秘密を打ち明けてくれたのだ。
アースと共に過ごし、彼の優しさや誠実さを知っていたので、その過去がどうであれ覚悟を持って打ち明けてくれた彼を蔑むような選択肢はエレミアにはなかった。
そして、街の皆も同じ気持ちでいてくれたことを、とても嬉しく思っている。
「わ、私ったらあんな大胆なことしちゃったけど……アースに変な風に思われてないかしら……」
エレミアは震えるアースを勇気づけるために、その背中を抱き締めたことをふと思い出し赤面する。
体が勝手に動いてやってしまったこととはいえ、誰にでも抱きついたりするような女性だとアースだけには勘違いされてしまっては困る。
と、そこまで考えたところでエレミアは一つの結論へ辿り着く。
「――あれ? それってつまり……アースだけには嫌われたくない……ってこと? あれ? そういうこと……なのかな……?」
エレミアはリーフェルニア領で生まれ育ったため、生まれてこの方同年代の男性が周りにあまり居なかったからか、異性に恋愛感情を抱いたことがなかった。
ガウェインなど、年が近い者もいなくはないが、エレミアは貴族であり、基本的には領民全員主従の関係にある。
辺境の地故に他の貴族との関わりが薄い環境だったので、何の気兼ねもなく対等に話せる人物は、肉親であるレオナルドを除き初めての存在であった。
「初めての経験でちょっとドキドキしちゃっただけよね……うん! そうよ! そう!」
考えれば考えるほど頬が赤くなるのを感じたエレミアは、首を左右に振ることでその思考を振り払い、デザート作りを再開するのであった。
その料理が、誰を思って作っているかを自覚せずに。
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