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【真実の吐露】
爆速農作業
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レオナルドとの会議の後、アースは一人で早速畑作りに適した場所を探すことにした。
街の周囲は魔物の侵入を防ぐための防壁が張り巡らされているので、新たに広い畑を作るとなると防壁の外に作るしかない。
「よし……この辺にするか」
街の外に出たアースは、開けた平原を見つけながらつぶやく。
まずは周囲に防壁を張らなければ作物を無事に育てられないので、『天与』を使い土壁を作る。
「『天地創造』」
すると、ものの数秒で人ほどの高さの土壁が地面から伸び、おおよそ200メートル四方の土地を囲む防壁が完成した。
以前までは手で触れた範囲数メートルが限界で、なおかつ規模によっては時間が掛かっていたはずだったが、明らかに『天与』が成長していることをアースは実感していた。
「――やはり『天与』で扱える範囲や規模が増大しているな……『天与』が成長したのか? いや、『天与』の力は生まれつき持っているもので熟練度によって新しい扱い方を覚えたりするものの、能力そのものは成長はしないはずだ。となると、今までは俺自身が力を隠そうと無意識に抑制していたのだろうか……? ――いや、今は畑作りに専念しよう」
あれこれ考えたところで答えは出ないだろうと判断したアースは、畑作りを続行することにした。
「『天地創造』」
アースの能力により雑草が生い茂る地面は瞬時に耕され、畑に適した土へと変わっていく。
気付けばわずか数分で畑としての土台が完成していたのであった。
「よし、こんなものか。元々草木が生い茂る土地だったからか土壌が良く、作付けも問題ないだろう。そこに関してはあまり手を加えるほどでもなかったな」
だがアースがこれからやろうとしているのは、魔王軍に所属していた頃にやっていた独自の作業方法を、この土地でも再現できるかの実験だった。
普通に作物を育てると、育てるものによるが収穫まで数ヶ月はかかってしまうので、一時食糧難に陥った魔王軍を救済するために編み出した方法だ。
マジックバッグから、アースの『天与』によって品種改良された種を取り出し、畑の一角に等間隔で植えていく。
そして、アースは魔力回復効果のある薬『マジックポーション』を、独自の調合で農業用に作り変えた『ファティライズポーション』を畑全体に撒いていった。
すると今しがた種を植えたばかりだというのに、植えた箇所からもう若芽が芽吹き始めていた。
その後もみるみると成長を続け、数分経つ頃にはアースの腰あたりまでに背を伸ばし、枝先には複数の赤い実が成っていた。
「よし……問題なく育っているな」
今回植えたのは『レッドベリー』と呼ばれる果実の一種で、口にすると酸味がありつつもほのかなな甘さを感じることができる。
寒い地域でよく見られるその果実の種をアースの能力により品種改良したもので、気候に関係なく成長し、実際のレッドベリーよりも実が大きく育つ。味に関しても、酸味よりも甘味が強くなっており、もはや別物と言っていい。
なによりも驚くべき変化はその成長速度だ。
普通の植物は長い時間をかけて養分や水分、日の光などを吸収しながら育つものである。
そのなかでアースが目を付けたのは、実は植物の殆どは成長の過程で大気中や土壌に含まれる微量の魔力も吸収していたという点だ。
アースの改良したこのレッドベリーは成長のために必要な条件を魔力のみに置き換えた。本来必要なはずの条件を無視して、充分な魔力さえあれば一瞬で成熟する。
つまり最低限の土壌さえ整っていれば、魔力を供給するだけであっという間に成長するのだ。
ファティライズポーションによって土の魔力が飽和状態になったことで、土中の種は溢れる魔力を急速吸収し、実を成すに至ったのであった。
アースはレッドベリーの実を一つもぎ、口にする。
「うん、美味い……成功だな」
その出来映えに満足して頷いたあと、体に魔力が巡るのを感じる。
この育成方法の副次的な作用として、作物を口にすると僅かだが魔力を増幅する効果があるのだ。
このあと更に果実を中心に数種類の種を植え、同様の方法で収穫可能な状態へと成長させる。
元々は自然界に存在する果物や野菜だが、アースの改良によって通常よりも圧倒的に早く収穫できて、なおかつ味も良く、更には魔力増強効果がある品が作物が栽培できるようになった。
この栽培法は、アースが独自に開発したものだ。他にはない果物や野菜は、この領地の特産品として十分に通用することだろう。
「さて、畑も完成したことだ。とりあえずはレオナルドに報告しに行くか。必要であれば面積を増やそう」
アースは再び満足げに頷き、館へと戻った。
街の周囲は魔物の侵入を防ぐための防壁が張り巡らされているので、新たに広い畑を作るとなると防壁の外に作るしかない。
「よし……この辺にするか」
街の外に出たアースは、開けた平原を見つけながらつぶやく。
まずは周囲に防壁を張らなければ作物を無事に育てられないので、『天与』を使い土壁を作る。
「『天地創造』」
すると、ものの数秒で人ほどの高さの土壁が地面から伸び、おおよそ200メートル四方の土地を囲む防壁が完成した。
以前までは手で触れた範囲数メートルが限界で、なおかつ規模によっては時間が掛かっていたはずだったが、明らかに『天与』が成長していることをアースは実感していた。
「――やはり『天与』で扱える範囲や規模が増大しているな……『天与』が成長したのか? いや、『天与』の力は生まれつき持っているもので熟練度によって新しい扱い方を覚えたりするものの、能力そのものは成長はしないはずだ。となると、今までは俺自身が力を隠そうと無意識に抑制していたのだろうか……? ――いや、今は畑作りに専念しよう」
あれこれ考えたところで答えは出ないだろうと判断したアースは、畑作りを続行することにした。
「『天地創造』」
アースの能力により雑草が生い茂る地面は瞬時に耕され、畑に適した土へと変わっていく。
気付けばわずか数分で畑としての土台が完成していたのであった。
「よし、こんなものか。元々草木が生い茂る土地だったからか土壌が良く、作付けも問題ないだろう。そこに関してはあまり手を加えるほどでもなかったな」
だがアースがこれからやろうとしているのは、魔王軍に所属していた頃にやっていた独自の作業方法を、この土地でも再現できるかの実験だった。
普通に作物を育てると、育てるものによるが収穫まで数ヶ月はかかってしまうので、一時食糧難に陥った魔王軍を救済するために編み出した方法だ。
マジックバッグから、アースの『天与』によって品種改良された種を取り出し、畑の一角に等間隔で植えていく。
そして、アースは魔力回復効果のある薬『マジックポーション』を、独自の調合で農業用に作り変えた『ファティライズポーション』を畑全体に撒いていった。
すると今しがた種を植えたばかりだというのに、植えた箇所からもう若芽が芽吹き始めていた。
その後もみるみると成長を続け、数分経つ頃にはアースの腰あたりまでに背を伸ばし、枝先には複数の赤い実が成っていた。
「よし……問題なく育っているな」
今回植えたのは『レッドベリー』と呼ばれる果実の一種で、口にすると酸味がありつつもほのかなな甘さを感じることができる。
寒い地域でよく見られるその果実の種をアースの能力により品種改良したもので、気候に関係なく成長し、実際のレッドベリーよりも実が大きく育つ。味に関しても、酸味よりも甘味が強くなっており、もはや別物と言っていい。
なによりも驚くべき変化はその成長速度だ。
普通の植物は長い時間をかけて養分や水分、日の光などを吸収しながら育つものである。
そのなかでアースが目を付けたのは、実は植物の殆どは成長の過程で大気中や土壌に含まれる微量の魔力も吸収していたという点だ。
アースの改良したこのレッドベリーは成長のために必要な条件を魔力のみに置き換えた。本来必要なはずの条件を無視して、充分な魔力さえあれば一瞬で成熟する。
つまり最低限の土壌さえ整っていれば、魔力を供給するだけであっという間に成長するのだ。
ファティライズポーションによって土の魔力が飽和状態になったことで、土中の種は溢れる魔力を急速吸収し、実を成すに至ったのであった。
アースはレッドベリーの実を一つもぎ、口にする。
「うん、美味い……成功だな」
その出来映えに満足して頷いたあと、体に魔力が巡るのを感じる。
この育成方法の副次的な作用として、作物を口にすると僅かだが魔力を増幅する効果があるのだ。
このあと更に果実を中心に数種類の種を植え、同様の方法で収穫可能な状態へと成長させる。
元々は自然界に存在する果物や野菜だが、アースの改良によって通常よりも圧倒的に早く収穫できて、なおかつ味も良く、更には魔力増強効果がある品が作物が栽培できるようになった。
この栽培法は、アースが独自に開発したものだ。他にはない果物や野菜は、この領地の特産品として十分に通用することだろう。
「さて、畑も完成したことだ。とりあえずはレオナルドに報告しに行くか。必要であれば面積を増やそう」
アースは再び満足げに頷き、館へと戻った。
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