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穴場の店
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振り向くとそこにはサイラス様の姿があった。ああ……今日も凛々しくていらっしゃる。
「さっ、サイラス様! ご、ごきげんよう」
淑女のように振る舞うつもりが、声が上ずってしまった。やっぱり慣れないことはやめたほうがよさそう。
「……よかった。今日はこの間より綺麗になっていたから、別人かと思って焦っちゃったよ。遅くなってごめんね。待ったかい?」
「い、いえ! 今来たところです!」
ひえー! お褒めの言葉頂きました! さらっと女性を立ててくださるだなんて、サイラス様ったらもー!
「それで、今日は何処へ連れていってくださるのですか?」
そう言いながら私はサイラス様とお近づきになるべく、物理的にもぐいっと距離を詰めてみる。
「――――ああ、いい店を予約してあるんだ。まずはそこへ行こうか。案内するよ」
あれ、ちょっと間があったけど……はっ! もしかして積極的すぎた? もしかしてお淑やかな方が好みなのかも……! 気を付けなくちゃ!
いきなり馴れ馴れしかったことを反省し、すぐさま一歩引く私。
そのまま私はサイラス様の三歩後ろへ付き、目的地へと歩きだしたのだった。
そのまま三十分ぐらいは歩いたかな。結構歩いたけど、まだお店には着かないのかな?
集合場所の賑わう通りを過ぎて、私たちは気付けば閑静な住宅街……? っぽいところへと入っていった。
昼間だというのに陽の光があまり当たらない場所。そして辺りには人っ子一人見当たらない。こんな静かな場所あったんだ。初めて来た……こんなところにお店なんてあるのかな?
「着いた。あそこだよ」
サイラス様が指差した建物は、パッと見ではお店だとは気付かないだろう。それほどに外観が寂れていた。
私はサイラス様に続いて恐る恐る建物の中へと入る。
「わぁ……!」
いざ中へ入ってみると外観とは裏腹に、お店の内装は私みたいな庶民じゃ一生縁がないのではないかと思うぐらいに煌びやかだった。
それはまるでお城の中の一室のようで、自分がお姫様になったような錯覚さえ覚えるほどだ。
なるほど、知る人ぞ知る穴場ってやつね!
「素敵なお店ですね! サイラス様はここによく来られるのですか?」
「はは、穴場だろう? でもまあ、騎士と言えどそこまで頻繁には来れないよ。こういった特別な日だけさ」
特別な日!? え、それって私と会うのをそれだけ楽しみにしてくれてたってこと!?
ということはそれなりに期待しちゃっていいのかな!?
「さ、長い時間歩かせて悪かったね。疲れただろうから、好きな席に着いて。注文は僕に任せてもらっていいかな? もちろん、お金は心配しなくていいよ。今日は僕の奢りだ」
「本当ですか!? ……あ、いえ悪いですし自分の分は出しますよ?」
「気にしないでいいよ。僕が誘ったんだ、ここは僕の顔を立たせてくれないか? 君、いつものを頼むよ」
「は、はい……ありがとうございます!」
サイラス様は近くの従業員に声を掛ける。注文を受けた男の人は、「かしこまりました」とお辞儀をして店の奥へと消えていった。
サイラス様は、あまり利用しないなんて謙遜してたけど、そうやって注文ができるってことはやっぱり常連なのよね。うーん、自慢せずに謙虚な感じがカッコいい!
私たち以外にはお客さんがいなかったので、適当な空いている席に座る。料理を待っている間、私はサイラス様と他愛もない会話を楽しんでいた。
と言っても、私がサイラス様のことをよく知りたくて、質問責めにしちゃってた気もするけど、大丈夫かな?
ふふっ、こんな幸せな時間が、いつまでも続くといいのにな。
「さっ、サイラス様! ご、ごきげんよう」
淑女のように振る舞うつもりが、声が上ずってしまった。やっぱり慣れないことはやめたほうがよさそう。
「……よかった。今日はこの間より綺麗になっていたから、別人かと思って焦っちゃったよ。遅くなってごめんね。待ったかい?」
「い、いえ! 今来たところです!」
ひえー! お褒めの言葉頂きました! さらっと女性を立ててくださるだなんて、サイラス様ったらもー!
「それで、今日は何処へ連れていってくださるのですか?」
そう言いながら私はサイラス様とお近づきになるべく、物理的にもぐいっと距離を詰めてみる。
「――――ああ、いい店を予約してあるんだ。まずはそこへ行こうか。案内するよ」
あれ、ちょっと間があったけど……はっ! もしかして積極的すぎた? もしかしてお淑やかな方が好みなのかも……! 気を付けなくちゃ!
いきなり馴れ馴れしかったことを反省し、すぐさま一歩引く私。
そのまま私はサイラス様の三歩後ろへ付き、目的地へと歩きだしたのだった。
そのまま三十分ぐらいは歩いたかな。結構歩いたけど、まだお店には着かないのかな?
集合場所の賑わう通りを過ぎて、私たちは気付けば閑静な住宅街……? っぽいところへと入っていった。
昼間だというのに陽の光があまり当たらない場所。そして辺りには人っ子一人見当たらない。こんな静かな場所あったんだ。初めて来た……こんなところにお店なんてあるのかな?
「着いた。あそこだよ」
サイラス様が指差した建物は、パッと見ではお店だとは気付かないだろう。それほどに外観が寂れていた。
私はサイラス様に続いて恐る恐る建物の中へと入る。
「わぁ……!」
いざ中へ入ってみると外観とは裏腹に、お店の内装は私みたいな庶民じゃ一生縁がないのではないかと思うぐらいに煌びやかだった。
それはまるでお城の中の一室のようで、自分がお姫様になったような錯覚さえ覚えるほどだ。
なるほど、知る人ぞ知る穴場ってやつね!
「素敵なお店ですね! サイラス様はここによく来られるのですか?」
「はは、穴場だろう? でもまあ、騎士と言えどそこまで頻繁には来れないよ。こういった特別な日だけさ」
特別な日!? え、それって私と会うのをそれだけ楽しみにしてくれてたってこと!?
ということはそれなりに期待しちゃっていいのかな!?
「さ、長い時間歩かせて悪かったね。疲れただろうから、好きな席に着いて。注文は僕に任せてもらっていいかな? もちろん、お金は心配しなくていいよ。今日は僕の奢りだ」
「本当ですか!? ……あ、いえ悪いですし自分の分は出しますよ?」
「気にしないでいいよ。僕が誘ったんだ、ここは僕の顔を立たせてくれないか? 君、いつものを頼むよ」
「は、はい……ありがとうございます!」
サイラス様は近くの従業員に声を掛ける。注文を受けた男の人は、「かしこまりました」とお辞儀をして店の奥へと消えていった。
サイラス様は、あまり利用しないなんて謙遜してたけど、そうやって注文ができるってことはやっぱり常連なのよね。うーん、自慢せずに謙虚な感じがカッコいい!
私たち以外にはお客さんがいなかったので、適当な空いている席に座る。料理を待っている間、私はサイラス様と他愛もない会話を楽しんでいた。
と言っても、私がサイラス様のことをよく知りたくて、質問責めにしちゃってた気もするけど、大丈夫かな?
ふふっ、こんな幸せな時間が、いつまでも続くといいのにな。
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