僕は幸せになるために復讐したい!

雨夜澪良

文字の大きさ
上 下
65 / 102
第二部 一幕 叛逆の狼煙

急変

しおりを挟む
「アリスが俺の元に来たと言うことは盤面が動いたということか」

 足を組みながら己の側近と将棋をしていたこの国の皇帝の手には飛車が握られていた。アリスは皇帝の隣に座り盤面を覗く。すると側近側はいくつかの歩をとに成し、香車は成香に成って皇帝側を攻めていた。

「とっくにこうなると分かっていたんだ。それならこなくても良かったかも」

 ため息をつき、不満そうにするアリス。そんなアリスの機嫌を取るかのように側近はアリスをさりげなく褒め称えた。

「アリスさんも大概ですね。しっかりと盤面を読み取れるあたり感心しますよ」

 メガネをクイッとあげようとした側近の手は空をきった。そういえばメガネが外したんだったと思い、少し恥ずかしくなったが何事もなかったかのように振る舞う。

 そのときだった。パチンという音が鳴ったのは。皇帝が飛車を龍に成し、側近側を攻めていた。アリスはその一手を見て思わず皇帝の方に振り向き、驚嘆の声を上げる。

「どこまで知っている感じ?こんなに盤面を読んでるなんて」

「嫌みか?あいつの使い魔であるアリスがここまで分かっているってことはレオナだったか?そいつもあいつもこの事態を把握しているってことだろ」

 侮られているようで不快さもあった。だが、所詮子供の戯れ言かと思い直した皇帝はアリスの背中を慣れた手つきでなで始めた。気持ちよくなったのかアリスはニャーと声を上げる。

「アリスさんこそどこまで分かっているんです?」

「今回のことしか知らない」

 そう言ってあくびをしているアリスの様子に側近は面食らい、固まった。

「なら、少し知っておいた方がいい。前皇帝が前々皇帝の下についた理由を。命が惜しかったからと飴を与えられたからだということを」

「前々皇帝は強いって話だったっけ?」

「そうだ。戦闘において勝てるものは限られる。不本意だが、勝てるとしたら――あいつしか思いつかん」

 眉間にシワが寄っており、本当に不服そうであった。複雑な気持ちなのだろうなとアリスは皇帝を見て思った。それに、この皇帝をもってしても勝てないとはどれほどの強さなのだろうかと気になった。

「そういえばのんびり話してていいの?」

「大丈夫です。手は打ってありますので。騎士団はすでに動きだしています。強力な助っ人も呼んでありますから」

「強力な助っ人?」

「アーベントさんです」

「それって大丈夫なの?」

「心配ありません」

 アリスが心配するのは無理もない。アーベントという男は四天王の一人ではあるがエルフの里で怠惰を貪っていることで有名なのである。それにその他にも問題があるのだ。

「本当に、レイの人脈にも驚かされる。他の四天王ならともかくアーベントと聞いたときは耳を疑った」

「確かに。有名な話だよね。寝てばっかで引きこもり。陰キャだって。そしてさらにやばいのは少しでも雑音だと感じると機嫌が悪くなって元凶を潰し終わるまで止まらないって」

 自分で言っててやばいなとアリスは思った。そんなやばい人をこの国に連れ込んでいいのかなと。特に今は闘技場での試合で国全体がうるさいし。機嫌が悪くなるのは火を見るより明らかである。

「それを利用して一網打尽にしてもらおうかと思っています。あの方は関係ない人は巻き込みませんから。なんだかんだ人に嫌われるのが嫌みたいですし、逸話も有名ですから。国民も命が惜しければ静かにするでしょう」

「本当に今日ほどレイが側近で良かったと思うことはない。やることがえげつない」

「褒め言葉として受け取っておきます」

「それならいいや。アリス、もうレオナの所帰る。まだご褒美もらってないし」

「本当にレオナさんのこと好きなんですね」

「あげないから」

「いりませんよ」

 アリスはふんと鼻を鳴らし、皇帝の影の中に飛び込んだ。

 よく言えば一途、悪く言えばレオナ至上主義。少しヤンデレ気味だし、めんどくさそうだなとレイは改めて思った。そしてそんなアリスを完全なヤンデレに落とさず扱いきれているレオナの手腕に感心し、心の中で拍手を送った。

「レイ、あとどのくらいでアーベントは到着する予定だ?」

「遅刻すること前提で呼んでいますから今頃は着いてるところでしょうね」

「ちなみに破壊費用はエルフの里持ちか?」

「いえ、こちらもちです。まあ、今回の試合で多額の収入を得ましたからそれでなんとか持ち直せるかと」

「そのためか。いろいろ画策していたのは」

 レイは試合の参加費をあげる以外にも、いつもより盛り上げることで金を使わせようとしたり、脱税者の取り締まりを厳しくしたりしていた。自分の持っている商会も積極的に金稼ぎにきているあたりちゃっかりしている。

「そうです」と言うと誇らしげな顔をし、メガネをあげようとする。していないにも関わらず。

「レイ。癖、抜けないみたいだな。俺がメガネ選んでやろうか?」

「いえ、結構です。私が選びますので」

「それだけはやめておけ。また二の舞になるぞ」

 レイという男はセンスが独特である。そういえばそんなに悪い響きではないのだが、率直に言えばダサいにつきる。会場にいたときに着けていたメガネはぐるぐるメガネ。何かの罰ゲームか何かと思いたくなるほどである。

 服に関してはレイの妹がまともな服に入れ替えているようだし、商会の服飾も妹がやっているからそこだけはレイの妹に感謝しないといけない。もう、矯正は諦めているようだが。

 レイ本人も周りから言われ、自分のセンスが悪いと自覚し始めているようでその分野の勉強をしている。その努力は認める。だが、改善する気配は一向にない。それどころかセンスが悪い方向にいっているからなおのこと手に負えない状態になってきている。レイの妹に丸投げするか。

「俺が嫌なら妹に選んでもらえ。俺から妹に言っておく」

 げえっといいそうな嫌な顔をしているレイだが、あり得ない格好をした奴を隣に置きたくない。俺までそう思われたら嫌であると皇帝は思った。

「俺達も動くとするか」





「ここが8年前の事件現場か」

「そうだ。ここの近くに大地を揺らしている元凶があるはずだ」

 8年前の事件現場の大本。それがここだった。ユースティア達の起こした魔法の残骸が残っている。辺り一帯が氷の世界。青い炎を包むように氷がこの土地を支配している。上だけを見れば幻想的な世界。下を見れば地獄絵図。長居するところではないのは確かだ。

 散策をしていると元凶らしき人影があった。

 ユースティアはレオナに氷の影に隠れているように手で制すると刀を抜き、一瞬で間合いを詰め、心臓を一刺しする。これで崩壊は止まり、終わりかと思われた。だが、ユースティアの後ろからもう一つの人影が襲いかかる。すかさずユースティアは振り向き、刀で杖を受け止める。

「道化師か」

「やあ、8年ぶりだね。ユースティア。会いたかったよ」

「そうか。隠居生活でもしていれば良かったのになっ!!」

 身体強化をさらに強め、刀を振り払う。道化師は後ろに倒れるようにして刀をギリギリで躱す。

 ユースティアにとって道化師は今会いたくない人物だった。いずれ殺すつもりではあるがタイミングが悪いと顔を歪める。

「本当に過激だね。それに不快そうな顔。いいね。もっといろんな表情を見せてくれ」

「お前に見せる筋合いはない」

 ユースティアは刀で道化師の杖の猛攻をすべて受け流し、道化師の間合いにさらに踏み込んだ。そして道化師に一撃を入れようとしたとき、背後から動くはずのない心臓を一刺しされた人物が襲いかかった。

 ユースティアは舌打ちを打ちながら、背後を見ていないにもかかわらず道化師の横を通るように体を滑らせ躱すと同時に道化師の背後にまわる。刀を振りかざすと同時に背後にいた人物を氷で足下から凍らせていった。

「本当に外道なことをする」

「今のは僕じゃないさ。――君が弱るのを僕は待っていたんだ。本当にこんなに弱くなってくれてありがとう」

「世迷い言を」

「世迷い言かどうかはこれから分かることだろう」

 ユースティアは道化師の言動に戸惑いを覚えた。何を言っているのか。理解したくもないと脳が理解することを拒否する。そもそもどうして弱体化していることを知っているのか。知っているのはごく一部の人のみである。それに加え、どこまで弱体化しているか知っているのは一人しかいないはずだ。隠し通してきたのだから。裏切りも考えにくい。

「私は今から殺される人物について深く知ろうとする趣味はない」

 すぐに頭を切り替え戦闘に集中する。一瞬で道化師との間合いを詰め心臓を確実に狙う。しかし、道化師は受け流す。ユースティアにとってはそれは想定積みのこと。だからこの攻撃は絶対に必中する。例外はない。

 道化師は手を口に当てる。

「血か……」

 ドサリと音をたて道化師の体は地面とぶつかった。

「終わりだ」

 刀を払い、刀身の血を振り払う。

「レオナ。もう出てきていいぞ。大地の揺れはこれで止まるはずだ。ただ――」

「ただ?」

「これは保険だろうな。本命じゃない。ディランは用意周到な奴だから。こんなにあっけなく片がつくなんてこと、あり得ない」

「ちょっと待て。これは厄災が起こしたものじゃないのか?」

「厄災? 違うぞ? これは――」

「これは英雄が起こしたものさ」

 レオナの背後にいつの間にかいる道化師。ユースティアは目を見開き、咄嗟にレオナを突き飛ばした。しかし、そのせいでユースティアは道化師に抱きつかれた。手で握りつぶすがごとく、抱きつくなんて生易しい力ではない力でユースティアの体を蝕んでいく。

「くっ。――師匠!!」

「来るなっ!!」

「っ!!」

 ユースティアの威圧でレオナは本能的に足が止まってしまった。頭ではすぐにでもユースティアの元に駆けつけたいのにそれができなくて苦渋の表情を浮かべる。

「無駄さ。身体強化で無理矢理引き裂くなんてことしたら体の方がもたないからね」

「糸か。侮り過ぎじゃないか」

 ユースティアは転移して離脱しようとするがなぜかできなかった。驚きで目が見開くがそれも一瞬だった。さらに拘束が強くなる。

「僕が君を侮るなんてことするわけないじゃないか」

 道化師は片手でユースティアを締め付けながらもう片方の手でビンを取りだした。ビンの中身をすべて口に含むとそのままユースティアに口づけをしてきた。
 口の中に得体の知れない液体が流れ込む。ユースティアは能力で打ち消そうにも液体にも強力な能力が及んでいるのか、弱体化している今のユースティアには完全に打ち消すことは叶わなかった。全身の力が抜け、意識が朦朧とする。それでもレオナは守らないと、と最後の力を振り絞って魔法を発動させ、道化師の足下を凍らせる。

「レオナ、逃げ、て、くれ」

 ユースティアはレオナの方にかろうじて顔を向けるとそう告げるがレオナは言うことを聞いてくれなかった。

「嫌だ」

「アリス、レオナを、頼ん、だ」

「分かった」

 いつの間にかレオナの影から出てきたアリスがレオナを影へと引きずり込む。アリスもレオナの望みを叶えてあげたかったが今回は叶えられてあげられそうにない。

「師匠!!」

 それを最後にユースティアの意識が途絶えた。目や口からは血が流れており、骨も何本かやられていた。

「逃げられちゃったか。君が何もできない状態で弟子を惨たらしく目の前で殺してやろうとも思ったんだけど。――まあいいや。任務は達成したし、欲しいものは手に入ったし。万々歳だよね」

 自分の腕の中で意識のないユースティアに満足げな表情を浮かべる。

「それにしてもあの薬を入れられてなお正常でいられるなんて思ってなかったな。改良が必要かな」

 困ったような言い草の割に表情は全然そんな気配はなかった。道化師はユースティアから糸を外し、お姫様抱っこで丁寧に抱え直すと異空間へと姿を消した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※毎週、月、水、金曜日更新 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。 ※追放要素、ざまあ要素は第二章からです。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~

平尾正和/ほーち
ファンタジー
引きこもりニート山岡勝介は、しょーもないバチ当たり行為が原因で異世界に飛ばされ、その世界を救うことを義務付けられる。罰として異世界勇者的な人外チートはないものの、死んだらステータスを維持したままスタート地点(セーブポイント)からやり直しとなる”死に戻り”と、異世界の住人には使えないステータス機能、成長チートとも呼べる成長補正を駆使し、世界を救うため、ポンコツ貧乳エルフとともにマイペースで冒険する。 ※『死に戻り』と『成長チート』で異世界救済 ~バチ当たりヒキニートの異世界冒険譚~から改題しました

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...