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四章 討伐
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「着きましたね」
「怖かった。めっちゃ怖かった」
心臓バクバクする。それにやっぱりさっきから心臓の熱がとれない。それどころか――――。
「リアン君。私が3分、いや1分持たせます。その間に心臓を持ってきてください。それ以上は私一人でもちません」
「分かりました!」
急がないと。それにしてもこの里はもはや壊滅状態じゃないか。それに人がいない。おそらく鬼に全員取り込まれて……。今は考えるのはよそう。心臓があるのはきっとこの青い桜みたいな大きな木のところだ。そこに向かって光が伸びている。
――――着いた。この箱の中か。どう見ても怪しいよね。でもそんなことは言ってられないか。僕は箱を開けて中にある心臓を取り出す。早く戻らないと。
僕は心臓を握りつぶさないように気をつけながらハリーさんの元に戻っていった。
それを見ていた人物に僕は気づかなかったのだった。
「う~ん、つまらない。こんな展開になるとは予想してなかったな。本当にもっと絶望した顔を見せてくれれば良かったのに。この舞台はお開きかな? でも最後にいいもの見られるかな。どうだろ。もう少しだけ舞台を見ていようか」
リアンが先ほどまでいた青い桜の木の上でそう道化師はつぶやいたのだった。
「ハリーさん、戻りました」
「ならそれを早く鬼に――」
ハリーさん、傷がひどい。それに話している余裕もないみたいだ。急いで心臓を戻さないと。それには鬼にもう一度近づかないといけない、けど片腕が心臓持っているせいでろくに使えない!!
「リアン、待たせたな」
「リンさん!!」
「心臓は無事見つけたようだな」
「はい」
「俺が活路を開く。リアンは俺の後に離れずついてこい」
「分かりました!」
リンさん頼もしいや。リンさんになら安心して命を預けられる。
「行くぞ」
着実に鬼の元に近づいてはいる。けど、リンさんの負担もその分大きいはずだ。その証拠にリンさんは絶えず怪我を負っている。致命傷ではないとはいえ。確実にそして迅速に封印しないといけない。持久戦になった時点で僕たちの負けだ。
「リアン、準備はいいか?」
「はい、いつでもいけます」
リンさんが僕の前から一瞬で消えた。跳んだといった方が正しいか。もうすでに鬼の目の前まで迫っていた。リンさんは僕の周りの植物をなぎ払い援護する。
いけるか?心臓の守りが硬いのが問題だ。心臓があった場所に風穴を開けて心臓を修復する前に突っ込まないといけない。
そう思っていたのだがそれは問題にはならなかった。容易に風穴を開けられたのだ。僕はすかさず心臓を突っ込む。
心臓を返すって分かってくれたのか。だから守りを弱めてくれたのか?僕には鬼の考えることは分からなかったけどあながち間違ってはいないと思う。
「オリヴィアさん!!」
僕は鬼から離れながらオリヴィアさんに向かって叫んだ。
能力『聖女』最大出力解放完了
オリヴィアさんが金色の光に纏われてる。神々しい。それにオリヴィアさんの目の前にあるのは棺だ。いつの間に……。
「地に住む者に対する復讐は終わりを告げる。聖なるあなたに裁きはいらず。瞬きの間の安らぎを。今ここに鬼門は開かれた」
鬼の動きが止まった。そして鬼から出ていた植物が消える。
鬼は自ら歩いて棺の元に歩いて行く。
「ありがとう」
僕の横を通り過ぎるときそう言われた気がした。
終わったのか。後は――――
金属と金属が衝突する音が鳴り響く。
確信があった。
僕が命を狙われた日に取った手段。そしてシネラリア国でハロルド王子からもらった予言。それから導き出される答えは一つ。
「あらあら、防がれてしまいましたか。本当にどこにそんな牙を隠し持っていたんです?」
その人物はマントを外すと笑顔でそう言ったのだった。
「日和さんですよね?雰囲気は違いますけどあなたは日和さんだ」
「そうとも言えるしそうではないとも言えますね。まあ、これから死ぬあなたには関係ありませんけど」
「何を言って――――」
言葉は続かなかった。心臓が燃えるように熱い。さっきのも日和さんの仕業か!!
「どちらか選ばせてあげましょう。ここで心臓を燃やされて死ぬか。私に優しく殺されるか」
「リアン!!」
「動かないでください、吸血鬼の真祖さん。少しでも動いたら今すぐにリアン君の心臓を燃やし尽くします」
「一ついいかな?」
「なんですかロジェ君」
「どういう原理でリアン兄ちゃんの心臓を燃やしているのか気になってね?」
「私が言うとでも?」
「ララさんだからこそ言わざるおえない。だってこれ、返して欲しいでしょう?」
日和さんの目が見開かれる。ロジェ、いつの間に日和さんの袋を取ったんだ?
うっ、心臓がさらに熱をもって――。僕は思わず自分の胸をわしづかんだ。
「いつの間に……。これはしてやられましたね。いいでしょう。私の能力『保存』ですよ。リアン君が魔法を発動した時点で保存したんです。そうすることで心臓に炎の化身が身に宿ったままになるんです。それでは返してくれますか?」
「それはいいことを聞いたな。教えてくれてありがとうララさん」
能力発動『魔法無効化』
「ロジェ」
「大丈夫?リアン兄ちゃん」
「だいじょばないけど大丈夫と言っておくよ」
嘘です。本当はめっちゃ我慢しています。今にも意識が飛びそうです。
「そんな隠し球を持っていたなんて驚きです。それでその袋、返してくれませんか?とても大事なものなんです」
ロジェ、どうするんだろう。今まともに動けるのはリンさん、ロジェ、それにエアリエルか。ハリーさんはオリヴィアさんを支えているし。オリヴィアさん、ものすごく疲労しているように見える。それはハリーさんも同じだ。僕もそろそろ本当にやばい。
「嫌だよ。こんな悪趣味な物。エアリエル、後はよろしく」
「うわ~私も嫌だな~。でもここにある方が嫌だからやってあげるよ」
そう言ったエアリエルは日和さんの袋を中身ごと圧縮した。そしてそれを握りつぶした。エアリエルが手を開くとそれは塵となって空気中に飛んでいった。
「本当にひどいことしますね。仮にも女の子の大切なものですよ? そんなことしていると女の子に嫌われますよ?」
「おあいにく様、僕はモテる方なんだ。女の子には別に困っていないんだよ」
ロジェ、君って奴は。君って奴は。モテる男だったのか。うらやましい!!
そう思っているとリンさんが僕の元に駆けつけた。
「飲めるか?」
「はい」
リンさんは僕の上半身を支え、回復薬を飲ませようとしてくれたとき銃撃の嵐が僕たちを襲った。
リンさんは僕をすぐさま肩に乗せるとその銃撃を全て躱した。ロジェの方を見るとどうやらエアリエルが全て風で防いだみたいだ。
「やっぱり無理だったッスよ、先輩。不意を突いての暗殺もダメ、奇襲もダメ。もう帰りません?」
「そうですね。本当はそこのエルフと妖精を殺さないと気が済みませんが。次はありませんから」
怖っ、ものすごく日和さん怒っているよねこれ。袋消されたのものすごく怒ってるじゃん!!
ロジェ、やりすぎだったんじゃ……。
「リンさん、追う?」
「いや、いい。あいつらを始末すると後々面倒だ」
「そっか」
「それより、リアンの回復をしないとだ」
そういうと今度こそリンさんは僕に回復薬を飲ませてくれた。
心臓が生き返るような感覚。やっとまともに息が吸える。
「ありがとう、二人とも」
「ムムム、私にはお礼してくれないの?私もリアンを助けたようなもんじゃんか~」
「ありがとう。エアリエル」
「えへへ、どういたしまして」
エアリエルは照れたように顔を染めた。エアリエルって子供みたいだな。
「3人とも俺はここにリャナンシーを連れてくる。だからその間のことはハリーにいろいろ聞くといい。すぐ戻る」
リンさんはそう言い残すとすぐに行ってしまったのだった。
「怖かった。めっちゃ怖かった」
心臓バクバクする。それにやっぱりさっきから心臓の熱がとれない。それどころか――――。
「リアン君。私が3分、いや1分持たせます。その間に心臓を持ってきてください。それ以上は私一人でもちません」
「分かりました!」
急がないと。それにしてもこの里はもはや壊滅状態じゃないか。それに人がいない。おそらく鬼に全員取り込まれて……。今は考えるのはよそう。心臓があるのはきっとこの青い桜みたいな大きな木のところだ。そこに向かって光が伸びている。
――――着いた。この箱の中か。どう見ても怪しいよね。でもそんなことは言ってられないか。僕は箱を開けて中にある心臓を取り出す。早く戻らないと。
僕は心臓を握りつぶさないように気をつけながらハリーさんの元に戻っていった。
それを見ていた人物に僕は気づかなかったのだった。
「う~ん、つまらない。こんな展開になるとは予想してなかったな。本当にもっと絶望した顔を見せてくれれば良かったのに。この舞台はお開きかな? でも最後にいいもの見られるかな。どうだろ。もう少しだけ舞台を見ていようか」
リアンが先ほどまでいた青い桜の木の上でそう道化師はつぶやいたのだった。
「ハリーさん、戻りました」
「ならそれを早く鬼に――」
ハリーさん、傷がひどい。それに話している余裕もないみたいだ。急いで心臓を戻さないと。それには鬼にもう一度近づかないといけない、けど片腕が心臓持っているせいでろくに使えない!!
「リアン、待たせたな」
「リンさん!!」
「心臓は無事見つけたようだな」
「はい」
「俺が活路を開く。リアンは俺の後に離れずついてこい」
「分かりました!」
リンさん頼もしいや。リンさんになら安心して命を預けられる。
「行くぞ」
着実に鬼の元に近づいてはいる。けど、リンさんの負担もその分大きいはずだ。その証拠にリンさんは絶えず怪我を負っている。致命傷ではないとはいえ。確実にそして迅速に封印しないといけない。持久戦になった時点で僕たちの負けだ。
「リアン、準備はいいか?」
「はい、いつでもいけます」
リンさんが僕の前から一瞬で消えた。跳んだといった方が正しいか。もうすでに鬼の目の前まで迫っていた。リンさんは僕の周りの植物をなぎ払い援護する。
いけるか?心臓の守りが硬いのが問題だ。心臓があった場所に風穴を開けて心臓を修復する前に突っ込まないといけない。
そう思っていたのだがそれは問題にはならなかった。容易に風穴を開けられたのだ。僕はすかさず心臓を突っ込む。
心臓を返すって分かってくれたのか。だから守りを弱めてくれたのか?僕には鬼の考えることは分からなかったけどあながち間違ってはいないと思う。
「オリヴィアさん!!」
僕は鬼から離れながらオリヴィアさんに向かって叫んだ。
能力『聖女』最大出力解放完了
オリヴィアさんが金色の光に纏われてる。神々しい。それにオリヴィアさんの目の前にあるのは棺だ。いつの間に……。
「地に住む者に対する復讐は終わりを告げる。聖なるあなたに裁きはいらず。瞬きの間の安らぎを。今ここに鬼門は開かれた」
鬼の動きが止まった。そして鬼から出ていた植物が消える。
鬼は自ら歩いて棺の元に歩いて行く。
「ありがとう」
僕の横を通り過ぎるときそう言われた気がした。
終わったのか。後は――――
金属と金属が衝突する音が鳴り響く。
確信があった。
僕が命を狙われた日に取った手段。そしてシネラリア国でハロルド王子からもらった予言。それから導き出される答えは一つ。
「あらあら、防がれてしまいましたか。本当にどこにそんな牙を隠し持っていたんです?」
その人物はマントを外すと笑顔でそう言ったのだった。
「日和さんですよね?雰囲気は違いますけどあなたは日和さんだ」
「そうとも言えるしそうではないとも言えますね。まあ、これから死ぬあなたには関係ありませんけど」
「何を言って――――」
言葉は続かなかった。心臓が燃えるように熱い。さっきのも日和さんの仕業か!!
「どちらか選ばせてあげましょう。ここで心臓を燃やされて死ぬか。私に優しく殺されるか」
「リアン!!」
「動かないでください、吸血鬼の真祖さん。少しでも動いたら今すぐにリアン君の心臓を燃やし尽くします」
「一ついいかな?」
「なんですかロジェ君」
「どういう原理でリアン兄ちゃんの心臓を燃やしているのか気になってね?」
「私が言うとでも?」
「ララさんだからこそ言わざるおえない。だってこれ、返して欲しいでしょう?」
日和さんの目が見開かれる。ロジェ、いつの間に日和さんの袋を取ったんだ?
うっ、心臓がさらに熱をもって――。僕は思わず自分の胸をわしづかんだ。
「いつの間に……。これはしてやられましたね。いいでしょう。私の能力『保存』ですよ。リアン君が魔法を発動した時点で保存したんです。そうすることで心臓に炎の化身が身に宿ったままになるんです。それでは返してくれますか?」
「それはいいことを聞いたな。教えてくれてありがとうララさん」
能力発動『魔法無効化』
「ロジェ」
「大丈夫?リアン兄ちゃん」
「だいじょばないけど大丈夫と言っておくよ」
嘘です。本当はめっちゃ我慢しています。今にも意識が飛びそうです。
「そんな隠し球を持っていたなんて驚きです。それでその袋、返してくれませんか?とても大事なものなんです」
ロジェ、どうするんだろう。今まともに動けるのはリンさん、ロジェ、それにエアリエルか。ハリーさんはオリヴィアさんを支えているし。オリヴィアさん、ものすごく疲労しているように見える。それはハリーさんも同じだ。僕もそろそろ本当にやばい。
「嫌だよ。こんな悪趣味な物。エアリエル、後はよろしく」
「うわ~私も嫌だな~。でもここにある方が嫌だからやってあげるよ」
そう言ったエアリエルは日和さんの袋を中身ごと圧縮した。そしてそれを握りつぶした。エアリエルが手を開くとそれは塵となって空気中に飛んでいった。
「本当にひどいことしますね。仮にも女の子の大切なものですよ? そんなことしていると女の子に嫌われますよ?」
「おあいにく様、僕はモテる方なんだ。女の子には別に困っていないんだよ」
ロジェ、君って奴は。君って奴は。モテる男だったのか。うらやましい!!
そう思っているとリンさんが僕の元に駆けつけた。
「飲めるか?」
「はい」
リンさんは僕の上半身を支え、回復薬を飲ませようとしてくれたとき銃撃の嵐が僕たちを襲った。
リンさんは僕をすぐさま肩に乗せるとその銃撃を全て躱した。ロジェの方を見るとどうやらエアリエルが全て風で防いだみたいだ。
「やっぱり無理だったッスよ、先輩。不意を突いての暗殺もダメ、奇襲もダメ。もう帰りません?」
「そうですね。本当はそこのエルフと妖精を殺さないと気が済みませんが。次はありませんから」
怖っ、ものすごく日和さん怒っているよねこれ。袋消されたのものすごく怒ってるじゃん!!
ロジェ、やりすぎだったんじゃ……。
「リンさん、追う?」
「いや、いい。あいつらを始末すると後々面倒だ」
「そっか」
「それより、リアンの回復をしないとだ」
そういうと今度こそリンさんは僕に回復薬を飲ませてくれた。
心臓が生き返るような感覚。やっとまともに息が吸える。
「ありがとう、二人とも」
「ムムム、私にはお礼してくれないの?私もリアンを助けたようなもんじゃんか~」
「ありがとう。エアリエル」
「えへへ、どういたしまして」
エアリエルは照れたように顔を染めた。エアリエルって子供みたいだな。
「3人とも俺はここにリャナンシーを連れてくる。だからその間のことはハリーにいろいろ聞くといい。すぐ戻る」
リンさんはそう言い残すとすぐに行ってしまったのだった。
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