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四章 討伐
対面
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「リャナンシー、リャナンシー、しっかりしろ」
腹にナイフが突き刺さっているリャナンシーの止血をしながらリンは名前を呼び続けていた。
「頭が……」
リャナンシーの意識を失ったと同時にズキズキとした痛みがリンを襲う。そしてその痛みと共に戻りつつあった記憶の全てをリンは思い出す。
リャナンシーが瀕死になったことによりリンにかかっていた暗示も解かれた。
「リン、もう夢から覚めないとダメですよ。もう全て思い出したでしょう?」
リャナンシーにナイフを投げつけた男、ハリーは子供をたしなめるようにリンに向かって言い放った。
「ハリー、どうしてリャナンシーを刺したんだ?」
リンはずっとリャナンシーから目を離さないまま、感情のない声でハリーに言った。
「私はそこの妖精の支配下に置かれているせいか仮死休眠をしてる間、妖精の記憶が流れてきました。それで大体の事情は把握しました。その上でリンの目を覚ますのにこの方法しかないと思いました」
リンは何も言えなかった。
記憶を思いだした上で何を言ってもハリーに幻滅されると思った。そして自分にハリーを責める資格もないと思い知らされた。討伐されるべきはカイルじゃなく自分だったのだ。
「私が以前忠告したことを覚えていますか?忠告の意味を本当の意味で今理解したようですね」
忠告の意味。
ハリーの言うとおりリンは今になって実感した。心と体の乖離。それがハリーの言いたかったことだったのだ。
「ハリー、俺はどうすれば良かったんだ。幸せを望まなければよかったのか。意地を張らないで血を吸う怪物になりきれば良かったのか。もう、俺には何も分からない」
「心が先に死んでしまいましたか。リン、もう終わりにしましょう。カイルは死に、私だけではもう君を止められない。それにそこの妖精は私が刺すより前に限界を迎えていました。結局、私たちにはもう破滅しかないんですよ」
吸血鬼は人に知られれば討伐される運命だ。それにすでにリンは血を飲んでいないせいで夜中人を襲うようになってしまった。だから結局最後は討伐されてしまう。だったら今殺してしまった方がいい。
「リン、もし血を吸う覚悟ができたならば私に抵抗なさい。できないなら私が今ここで殺します」
ハリーは布に包まれていた銀のナイフを懐から取り出す。そして手がやけどのようになりながらもナイフを握り、リンの元に歩いて行く。
「リンを殺した後、私もすぐにいきますから。一人にはしません」
そして刺そうとしたそのとき腕を誰かにつかまれた。
「何をしているんですか!!リンさんは絶対に殺させない」
ハリーは腕をつかんでいる男をいちべつした。そして興味を失ったようにリンの方に視線を再び向けた。
「君は誰ですか?身内のことにまざってこないでくれませんか?」
「僕はリアン。リンさんの仲間だ。―――あなたがリンさんの義父さんですか?」
僕は男をつかんでいる手にさらに力を込める。この男、全然力が緩まない。それにリンさんの様子がおかしい。
「そうですね。名乗られたからには名乗るのが筋ですね。あなたの言う通り、リンの義父のような者です。ハリーと言います」
「どうしてリンさんを殺そうとしているんですか?」
ハリーさんは僕に笑顔を向けた。そして僕の顔面に向かってナイフを突きつけてきた。僕はのけぞりそれを躱す。しかしそのせいでハリーさんから手を離してしまった。
「私、言いましたよね。身内のことにまざってこないでくださいと。邪魔をするならたとえリンの仲間だろうと容赦はしません」
ハリーさんが僕に向かって再びナイフを突きつけてきた。僕はすぐに抜刀し銀の剣で防いだ。
「何も知らず、リンさんのことを殺させる訳にはいきません。ハリーさんがリンさんを殺すのをやめないって言うなら僕はハリーさんを殺してでもそれを止めさせてもらいます」
ここは建物の屋上。だからこそ真っ向勝負になる。
僕にやれるのか。きっとハリーさんはリンさんより強いと思う。でもやるしかない。今これを止められるのは僕しかいないんだから。
ハリーさんに向かって走り剣撃を放つ。ハリーさんはそれをナイフだけで受け止めた。そして反撃と言わんばかりに僕にナイフを複数同時に投げつけてきた。
「どうしてもリンさんを殺す理由、教えてくれないんですか」
僕はナイフをギリギリのところで躱しながらハリーさんと距離をとった。そして剣から刀へと武器を変える。
良かった。今度は気絶しなかった。
「そうですね。教えたくありません。これ以上リンが傷つくのを見たくありませんから。それにあなたは真実を知ったとき前と同じようにリンと一緒にいられない」
ハリーさんはナイフを投げると同時に僕との距離を一気に詰めてきた。そして僕の視界から一瞬で消えた。
「っ!?」
そして僕は後ろに倒れた。そして倒れている僕に向かってすかさずハリーさんはナイフを僕に向かって刺そうとしてきた。僕はすかさず刀でそれを防ぐ。
強い。足を払われそのまま転倒させられた。ナイフだけじゃない。この人の技一つ一つが飛び抜けている。
「諦めてくれませんか?そうすれば君の命はここで取らないであげます」
この人に勝つには一つしかない。僕の二つ目の能力を発動させるしかない。もともと能力が発動する気配はリンさんと訓練している時にすでにあったんだ。だったらきっとやれる。
能力発動『???』
腹にナイフが突き刺さっているリャナンシーの止血をしながらリンは名前を呼び続けていた。
「頭が……」
リャナンシーの意識を失ったと同時にズキズキとした痛みがリンを襲う。そしてその痛みと共に戻りつつあった記憶の全てをリンは思い出す。
リャナンシーが瀕死になったことによりリンにかかっていた暗示も解かれた。
「リン、もう夢から覚めないとダメですよ。もう全て思い出したでしょう?」
リャナンシーにナイフを投げつけた男、ハリーは子供をたしなめるようにリンに向かって言い放った。
「ハリー、どうしてリャナンシーを刺したんだ?」
リンはずっとリャナンシーから目を離さないまま、感情のない声でハリーに言った。
「私はそこの妖精の支配下に置かれているせいか仮死休眠をしてる間、妖精の記憶が流れてきました。それで大体の事情は把握しました。その上でリンの目を覚ますのにこの方法しかないと思いました」
リンは何も言えなかった。
記憶を思いだした上で何を言ってもハリーに幻滅されると思った。そして自分にハリーを責める資格もないと思い知らされた。討伐されるべきはカイルじゃなく自分だったのだ。
「私が以前忠告したことを覚えていますか?忠告の意味を本当の意味で今理解したようですね」
忠告の意味。
ハリーの言うとおりリンは今になって実感した。心と体の乖離。それがハリーの言いたかったことだったのだ。
「ハリー、俺はどうすれば良かったんだ。幸せを望まなければよかったのか。意地を張らないで血を吸う怪物になりきれば良かったのか。もう、俺には何も分からない」
「心が先に死んでしまいましたか。リン、もう終わりにしましょう。カイルは死に、私だけではもう君を止められない。それにそこの妖精は私が刺すより前に限界を迎えていました。結局、私たちにはもう破滅しかないんですよ」
吸血鬼は人に知られれば討伐される運命だ。それにすでにリンは血を飲んでいないせいで夜中人を襲うようになってしまった。だから結局最後は討伐されてしまう。だったら今殺してしまった方がいい。
「リン、もし血を吸う覚悟ができたならば私に抵抗なさい。できないなら私が今ここで殺します」
ハリーは布に包まれていた銀のナイフを懐から取り出す。そして手がやけどのようになりながらもナイフを握り、リンの元に歩いて行く。
「リンを殺した後、私もすぐにいきますから。一人にはしません」
そして刺そうとしたそのとき腕を誰かにつかまれた。
「何をしているんですか!!リンさんは絶対に殺させない」
ハリーは腕をつかんでいる男をいちべつした。そして興味を失ったようにリンの方に視線を再び向けた。
「君は誰ですか?身内のことにまざってこないでくれませんか?」
「僕はリアン。リンさんの仲間だ。―――あなたがリンさんの義父さんですか?」
僕は男をつかんでいる手にさらに力を込める。この男、全然力が緩まない。それにリンさんの様子がおかしい。
「そうですね。名乗られたからには名乗るのが筋ですね。あなたの言う通り、リンの義父のような者です。ハリーと言います」
「どうしてリンさんを殺そうとしているんですか?」
ハリーさんは僕に笑顔を向けた。そして僕の顔面に向かってナイフを突きつけてきた。僕はのけぞりそれを躱す。しかしそのせいでハリーさんから手を離してしまった。
「私、言いましたよね。身内のことにまざってこないでくださいと。邪魔をするならたとえリンの仲間だろうと容赦はしません」
ハリーさんが僕に向かって再びナイフを突きつけてきた。僕はすぐに抜刀し銀の剣で防いだ。
「何も知らず、リンさんのことを殺させる訳にはいきません。ハリーさんがリンさんを殺すのをやめないって言うなら僕はハリーさんを殺してでもそれを止めさせてもらいます」
ここは建物の屋上。だからこそ真っ向勝負になる。
僕にやれるのか。きっとハリーさんはリンさんより強いと思う。でもやるしかない。今これを止められるのは僕しかいないんだから。
ハリーさんに向かって走り剣撃を放つ。ハリーさんはそれをナイフだけで受け止めた。そして反撃と言わんばかりに僕にナイフを複数同時に投げつけてきた。
「どうしてもリンさんを殺す理由、教えてくれないんですか」
僕はナイフをギリギリのところで躱しながらハリーさんと距離をとった。そして剣から刀へと武器を変える。
良かった。今度は気絶しなかった。
「そうですね。教えたくありません。これ以上リンが傷つくのを見たくありませんから。それにあなたは真実を知ったとき前と同じようにリンと一緒にいられない」
ハリーさんはナイフを投げると同時に僕との距離を一気に詰めてきた。そして僕の視界から一瞬で消えた。
「っ!?」
そして僕は後ろに倒れた。そして倒れている僕に向かってすかさずハリーさんはナイフを僕に向かって刺そうとしてきた。僕はすかさず刀でそれを防ぐ。
強い。足を払われそのまま転倒させられた。ナイフだけじゃない。この人の技一つ一つが飛び抜けている。
「諦めてくれませんか?そうすれば君の命はここで取らないであげます」
この人に勝つには一つしかない。僕の二つ目の能力を発動させるしかない。もともと能力が発動する気配はリンさんと訓練している時にすでにあったんだ。だったらきっとやれる。
能力発動『???』
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