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三章 依頼任務
婚約破棄
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ここは人族の国、アヴァイル国のあるパーティー会場。
そのパーティー会場では問題が起きていた。
「私はそこにいるグレタ・フローレス公爵令嬢との婚約を破棄し、新たにアメリア・カーター男爵令嬢と婚約することをここに宣言する」
たくさんのこの国の貴族や他国からの使節団がいるなかでそう叫んだのはこの国の王太子であるリュカ王子。その隣には婚約者ではない女の人を連れていた。
「リュカ王子、発言をしてもよろしいでしょうか」
さきほど婚約を破棄すると言われた公爵令嬢のグレタは目の前で侮辱されたのにもかかわらず冷静さを保っていた。
「ああ、いいだろう」
「どうしてこのような場で婚約破棄をなさったのですか。今ここで言うことではないと思います。そして王でもないあなたが王と我が公爵家で決められたこの婚約を破棄する権限はありません」
言い終わると同時に公爵令嬢は扇子を閉じ、パシッと音を鳴らした。
「そうだな。でも君はその身分を使って学園でいろんな人をいじめていたそうじゃないか。それに王妃教育もサボっていると聞く。そのようなものが私の妃にふさわしいわけがない。よって国外追放を命じる」
「なっ?! でたらめを言わないでくださいまし。私はいじめてもいませんしサボってもいません。これは冤罪です」
「衛兵、この公爵令嬢を連れてけ」
「はっ!」
そうしてグレタ公爵令嬢は衛兵に連れて行かれてしまった。
会場が静寂に包まれる。しかし、この静寂を破る者が一人。
「リュカ王子、私にも話がある」
隣国、シネラリア国のルーカス王子である。つまり獣人の国の第二王子であった。
「あなたの隣にいるアメリア・カーター男爵令嬢は私と婚約関係にある。そして私のつがいでもある。私のつがいに手を出したんだ。これは宣戦布告と受け取るがよろしいか」
パーティー内がざわつく。
面白そうな話にわくわくしている者。戦争と聞いて言葉がでない者。この話を自分たちの国に持って帰ろうと思う者。いろんな人たちが続きを気になっている。
「ああ、いい。私とアメリア・カーター男爵令嬢は真実の愛で結ばれている。どんな困難なことでも共に乗り越えて見せよう」
みんなの目が驚愕に染まる。魔族との戦争で物資が足りていなく、兵も減ったのにそんな馬鹿なまねはしないだろうと、これはただの遊びだろうとパーティーにいる人たちは高をくくっていたのだから。
「そうか。だったら私もこのことを自分の国に報告しなくてはな」
静まり返った会場内にバンという扉が開く音が鳴り響いた。そこから出てきたのはこの国の王。
「少しお待ちを。ルーカス王子。我々は戦争する気などありません。リュカを王位剥奪し幽閉するので今回のことはなかったことにしていただきたい」
「何?」
王の発言に隣国の王子が眉をひそめる。
「なんだったら、リュカをあなたの好きなようにしてもいい」
「あなたは私を馬鹿にしているのか。それにつがいというものを全く理解していない。本来ならすでにリュカ王子は私に殺されていても文句は言えないんだ。この国と私の国の大きさを見てもな。
戦争をすることは確定事項だ。他の国の使節団の方も聞いている。今更なしにすることなどできるわけがないだろう。口止めできるだけの材料がこの国にはないのだから」
そう言い残すとそのままルーカス王子は従者二人を連れて出て行ってしまった。
アヴァイル国の王はがくりとうなだれた後、怒りで顔を真っ赤にし、衛兵を呼んでリュカ王子を拘束、牢屋へと押し込んだ。
その日の夜、ルーカス王子は従者のエイダンと共に牢屋に訪れていた。
「牢屋番、少しリュカ王子と話がしたいんだが」
「いいですよ。この先です。勝手にどうぞ」
(なんだこの仕事をしない牢屋番は。それともあえて見逃しているのか)
「本当に、優秀な王太子様がこんなへまやらかすとはな。でもよかったんじゃねえの。王子より情夫の方がお似合いだしよ」
「はは、そうに違いねえ」
「ずっと下に見ていた俺たちに馬鹿にされてさぞ悔しいだろうな」
すれ違いざまに聞こえた下品な内容と笑い声。
(この国は本当にどうしようもない国だな)
そう思いながら牢屋の奥へと進んでいく。
「エイダン、ここで待っていろ」
「分かりました。お気をつけて」
「ああ」
さらに奥へと進みリュカ王子を発見する。
「ひどいざまだな」
ルーカス王子はハンカチで口元を抑えながら言う。
悪臭が酷すぎて今にも吐きたい気分だった。
「そうだな」
牢屋番に見逃された騎士や貴族たちがここに訪れたのだろう。リュカ王子は強姦、拷問され満身創痍であるのが見て分かる。
「リュカ王子、いや、元王子。私のつがいに手を出してこれで終わりだと思っているか」
「いや、思っていない。ルーカス王子。あとはこの国を頼むよ」
満身創痍でありながらどこかやりきった顔をしているリュカ王子にルーカス王子は怪訝な目を向けた。
「どういうことだ」
「僕はね、魔族の戦争を終わらせたかったんだ。この国は魔族との戦争のためにたくさんの犠牲を払い、そして禁忌を犯した。僕には力があるようで力がなかった。だからこうするしかなかったんだよ」
「まさか!」
(もしそういうことなら、あれは)
「たぶん、思っている通りだと思うよ。もしグレタに会ったら助けてやってくれ。この国は腐りすぎて……」
そこから言葉は続かなかった。気力だけで話していたのだろう。
「ちっ、そういうことかよ」
舌打ちをならし、ルーカス王子は離れて待機してた自分の従者を呼びに行った。
「エイダン、リュカ王子の治療をしてやってくれ」
「どういうことです?」
「パーティーのあれは猿芝居だったらしい。と言うことはアメリアもグルだ」
「そういうことですか」
「ああ、エイダンの思っている通りだ。リュカ王子を極秘にここから抜け出せるようにしておいてくれ。私はフローレス嬢を探しに行く」
「無茶を言いますね。我が主は」
「お前を信頼しているんだよ」
「どうなっても知りませんからね」
エイダンは耳を赤くしながらリュカ王子の元へ走って行った。
「は~、本当にリュカ王子にはとんでもない置き土産を残された」
ルーカス王子がため息を吐きながら放った言葉は誰の耳にも届くことはなかった。
そのパーティー会場では問題が起きていた。
「私はそこにいるグレタ・フローレス公爵令嬢との婚約を破棄し、新たにアメリア・カーター男爵令嬢と婚約することをここに宣言する」
たくさんのこの国の貴族や他国からの使節団がいるなかでそう叫んだのはこの国の王太子であるリュカ王子。その隣には婚約者ではない女の人を連れていた。
「リュカ王子、発言をしてもよろしいでしょうか」
さきほど婚約を破棄すると言われた公爵令嬢のグレタは目の前で侮辱されたのにもかかわらず冷静さを保っていた。
「ああ、いいだろう」
「どうしてこのような場で婚約破棄をなさったのですか。今ここで言うことではないと思います。そして王でもないあなたが王と我が公爵家で決められたこの婚約を破棄する権限はありません」
言い終わると同時に公爵令嬢は扇子を閉じ、パシッと音を鳴らした。
「そうだな。でも君はその身分を使って学園でいろんな人をいじめていたそうじゃないか。それに王妃教育もサボっていると聞く。そのようなものが私の妃にふさわしいわけがない。よって国外追放を命じる」
「なっ?! でたらめを言わないでくださいまし。私はいじめてもいませんしサボってもいません。これは冤罪です」
「衛兵、この公爵令嬢を連れてけ」
「はっ!」
そうしてグレタ公爵令嬢は衛兵に連れて行かれてしまった。
会場が静寂に包まれる。しかし、この静寂を破る者が一人。
「リュカ王子、私にも話がある」
隣国、シネラリア国のルーカス王子である。つまり獣人の国の第二王子であった。
「あなたの隣にいるアメリア・カーター男爵令嬢は私と婚約関係にある。そして私のつがいでもある。私のつがいに手を出したんだ。これは宣戦布告と受け取るがよろしいか」
パーティー内がざわつく。
面白そうな話にわくわくしている者。戦争と聞いて言葉がでない者。この話を自分たちの国に持って帰ろうと思う者。いろんな人たちが続きを気になっている。
「ああ、いい。私とアメリア・カーター男爵令嬢は真実の愛で結ばれている。どんな困難なことでも共に乗り越えて見せよう」
みんなの目が驚愕に染まる。魔族との戦争で物資が足りていなく、兵も減ったのにそんな馬鹿なまねはしないだろうと、これはただの遊びだろうとパーティーにいる人たちは高をくくっていたのだから。
「そうか。だったら私もこのことを自分の国に報告しなくてはな」
静まり返った会場内にバンという扉が開く音が鳴り響いた。そこから出てきたのはこの国の王。
「少しお待ちを。ルーカス王子。我々は戦争する気などありません。リュカを王位剥奪し幽閉するので今回のことはなかったことにしていただきたい」
「何?」
王の発言に隣国の王子が眉をひそめる。
「なんだったら、リュカをあなたの好きなようにしてもいい」
「あなたは私を馬鹿にしているのか。それにつがいというものを全く理解していない。本来ならすでにリュカ王子は私に殺されていても文句は言えないんだ。この国と私の国の大きさを見てもな。
戦争をすることは確定事項だ。他の国の使節団の方も聞いている。今更なしにすることなどできるわけがないだろう。口止めできるだけの材料がこの国にはないのだから」
そう言い残すとそのままルーカス王子は従者二人を連れて出て行ってしまった。
アヴァイル国の王はがくりとうなだれた後、怒りで顔を真っ赤にし、衛兵を呼んでリュカ王子を拘束、牢屋へと押し込んだ。
その日の夜、ルーカス王子は従者のエイダンと共に牢屋に訪れていた。
「牢屋番、少しリュカ王子と話がしたいんだが」
「いいですよ。この先です。勝手にどうぞ」
(なんだこの仕事をしない牢屋番は。それともあえて見逃しているのか)
「本当に、優秀な王太子様がこんなへまやらかすとはな。でもよかったんじゃねえの。王子より情夫の方がお似合いだしよ」
「はは、そうに違いねえ」
「ずっと下に見ていた俺たちに馬鹿にされてさぞ悔しいだろうな」
すれ違いざまに聞こえた下品な内容と笑い声。
(この国は本当にどうしようもない国だな)
そう思いながら牢屋の奥へと進んでいく。
「エイダン、ここで待っていろ」
「分かりました。お気をつけて」
「ああ」
さらに奥へと進みリュカ王子を発見する。
「ひどいざまだな」
ルーカス王子はハンカチで口元を抑えながら言う。
悪臭が酷すぎて今にも吐きたい気分だった。
「そうだな」
牢屋番に見逃された騎士や貴族たちがここに訪れたのだろう。リュカ王子は強姦、拷問され満身創痍であるのが見て分かる。
「リュカ王子、いや、元王子。私のつがいに手を出してこれで終わりだと思っているか」
「いや、思っていない。ルーカス王子。あとはこの国を頼むよ」
満身創痍でありながらどこかやりきった顔をしているリュカ王子にルーカス王子は怪訝な目を向けた。
「どういうことだ」
「僕はね、魔族の戦争を終わらせたかったんだ。この国は魔族との戦争のためにたくさんの犠牲を払い、そして禁忌を犯した。僕には力があるようで力がなかった。だからこうするしかなかったんだよ」
「まさか!」
(もしそういうことなら、あれは)
「たぶん、思っている通りだと思うよ。もしグレタに会ったら助けてやってくれ。この国は腐りすぎて……」
そこから言葉は続かなかった。気力だけで話していたのだろう。
「ちっ、そういうことかよ」
舌打ちをならし、ルーカス王子は離れて待機してた自分の従者を呼びに行った。
「エイダン、リュカ王子の治療をしてやってくれ」
「どういうことです?」
「パーティーのあれは猿芝居だったらしい。と言うことはアメリアもグルだ」
「そういうことですか」
「ああ、エイダンの思っている通りだ。リュカ王子を極秘にここから抜け出せるようにしておいてくれ。私はフローレス嬢を探しに行く」
「無茶を言いますね。我が主は」
「お前を信頼しているんだよ」
「どうなっても知りませんからね」
エイダンは耳を赤くしながらリュカ王子の元へ走って行った。
「は~、本当にリュカ王子にはとんでもない置き土産を残された」
ルーカス王子がため息を吐きながら放った言葉は誰の耳にも届くことはなかった。
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