僕は幸せになるために復讐したい!

雨夜澪良

文字の大きさ
上 下
17 / 102
二章 異世界探索

エルフの里での宴

しおりを挟む
 ロジェがこの国に戻ってこれたこと、そして新たな旅立ちを祝して宴を開くことになったのだが、まさか宴の前にこんなことするはめになるとは思わなかった。

 時は数時間前にさかのぼる。

「お主ら、王太子が連れてかれ、国を守ってちゃんちゃんだと思っているのかのう?」

「えっ? そうじゃないんですか?」

「お主らの戦闘のせいで玉座の間はボロボロじゃ。直してくれるじゃろう?」

 圧がすごい。これ僕たちが直すの? アニメとかだといつの間にか直っていたからそういうものだと。龍馬さては逃げたな。あ、オリヴィアさんも逃げようとしている。ロジェまで。僕だけおいていこうなんて。そうはさせない。

 それからの行動は早かった。オリヴィアさんとロジェの首根っこをつかむ。

「オリヴィアさん、ロジェ、どこに行こうとしているのかな? まさか僕だけ置いていくなんてひどいことしないよね?」

 あっ、リアン君、顔は笑ってるけど怒ってる。

『ロジェ、しっかり捕まってて』

『うん』

 二人はアイコンタクトで意思疎通をした。なぜなら思うことは同じだからである。

『絶対、やりたくない』

「リアン君、ごめんね?」

「お兄ちゃん、ごめんね?」

 そう言ってリアンの手から逃れる。いつの間に?!二人がその気なら僕も!

 二人の元へ走ろうとしたが王様に手を捕まれてしまった。ニゲラレナイ。

「リアン君や、君はやってくれるじゃろ?」

「…………はい」

 二人とも覚えてろよ。



 まさか、部屋の修理をするとは思わなかった。他の人たちも手伝ってはくれたけど。腰痛い。

「ロジェ、このケーキ食べたら次あのケーキ食べに行こう」

「お姉ちゃん、ケーキ食べすぎだよ!」

 ロジェもオリヴィアさんも楽しそう。それにしてもオリヴィアさん、ケーキでほっぺがハムスターのごとく膨らんでる。なんかかわいい。

「リアンの坊ちゃんやお主も宴を楽しまないと損じゃよ」

 王様は宴の端で座っていた僕に話しかけてきた。

 王様も皿にケーキがたくさん。ここの王族ってみんな甘党なのかな。

「そうですね。でも僕今宴って気分じゃないんですよね」

「何か考え事かのう?」

「そうですね……。僕、玉座で戦ったときの記憶が途中からないんですよ。それでいつの間にか全てが終わっていて。僕このままでいいのかなって。オリヴィアさんに守られてばかりいて……」

「そうじゃの、それでいいのじゃないか。人にはできることできないことが違うのじゃし。ここからはわしの独り言じゃ。オリヴィアの嬢ちゃんも最初は弱かったのじゃ」

「えっ、オリヴィアさんが?」

 就職試験であんなにブイブイ言わせてたのに?

「聖女じゃし、役割はあったが別に戦闘力は重要視されていなかったのじゃ。どっちかというと後方支援じゃったから今ほど強くなかったのう。
 オリヴィアの嬢ちゃんの仲間はみんな嬢ちゃんを残してどこか遠くへ行ってしまったらしくてのう。それが許せなかったのじゃろう。オリヴィアの嬢ちゃんは失墜から立ち上がることを選んだ。
 そこからじゃ、強さを追い求め、自分が弱いことが許せなくなったのは」

 だからあのとき本気を出さなかった僕に怒っていたんだ。

「リアンや、努力を続ければ能力がいずれそれに応えてくれる。きっと主の助けになってくれる。能力は願望が顕現したものじゃからな。今のまま努力を続けるがよい。叶えたい望みがあるのじゃろう?」

「よく僕に叶えたい望みがあるって分かりましたね?」

「目を見れば分かる。さてと、ケーキを食べに行こうかのう」

 まだ食べるの?! ケーキもう五個以上食べているんじゃ……。

「あ、おじいちゃん。もうケーキだめ。糖尿病になっちゃうよ」

「ほうほう、難しい言葉知っておるのう。でも大丈夫や、いざとなればオリヴィアの嬢ちゃんが治してくれる」

「ああまたそんなこと言って! この前それで痛い目見たばかりでしょ!」

 ロジェって案外しっかり者なんだ。それに王様、キメ顔で言っているけど言っていることは大人としてどうなの?

 この光景がなんだかおかしくて僕は笑ってしまった。

「リアン君も食べないと損だぞ。行こう」

「はい!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※毎週、月、水、金曜日更新 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。 ※追放要素、ざまあ要素は第二章からです。

【サクッと読める】2ch名作スレまとめ

_
ファンタジー
2chで投稿された名作スレをまとめています。 物語に影響しない程度で一部変更する場合がございます。 ご了承ください。 ※不定期更新

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~

平尾正和/ほーち
ファンタジー
引きこもりニート山岡勝介は、しょーもないバチ当たり行為が原因で異世界に飛ばされ、その世界を救うことを義務付けられる。罰として異世界勇者的な人外チートはないものの、死んだらステータスを維持したままスタート地点(セーブポイント)からやり直しとなる”死に戻り”と、異世界の住人には使えないステータス機能、成長チートとも呼べる成長補正を駆使し、世界を救うため、ポンコツ貧乳エルフとともにマイペースで冒険する。 ※『死に戻り』と『成長チート』で異世界救済 ~バチ当たりヒキニートの異世界冒険譚~から改題しました

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...