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第1話 宮廷への招待状
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町で行われる最も大きなスイーツ料理の大会。
その優勝者が、まさに今、発表されようとしていた。
緊張した面持ちで、腕自慢の料理人たちが並ぶ中、ひとり、静かに優勝者の発表を待つ女がいた。
「優勝者は、カンタリラ・アップリーゼ!」
名前を呼ばれた途端、湧き上がる歓声と両サイドから漏れるため息。
「さすが、シュガーウィッチ。スイーツじゃ負けなしだな」
大会の主催者が、優勝者であるカンタリラへ声をかければ、カンタリラは深々と頭を下げた。
「ありがとうございます。おかげで、夢だった宮廷料理人に一歩近づけます」
”シュガーウィッチ”
その名の示す通り、彼女たちの扱う魔力は甘く、極上の砂糖と言われている。
その砂糖で作り上げられたスイーツは、人々を魅了し、不治の病すらも治す伝説すら存在している。
シュガーウィッチであるカンタリラは、まだ若いが、例に漏れずスイーツ作りの才能を開花させ、既にこの町に彼女の名前を知らない者はいない。
「それはよかった。一昔前は、この大会にもシュガーウィッチが、ズラリと並んでいたものだが、随分と減ってしまったからな。寂しいものだよ」
寂し気に、壇上を見つめる主催者に、カンタリラの目にも少しだけ曇りが見えたが、口元の笑みは絶やさなかった。
「本当におめでとう。カンタリラ。宮廷料理人ならば、身の安全も保障されるだろう。あと少しだよ」
そう言って、宮廷料理人となるため、最後の試験会場である宮廷への招待状を彼女へ差し出せば、カンタリラは嬉しそうに目を細め、受け取った。
「ありがとうございます」
大切にその封筒を抱きしめると、思い出したようにバックの中から小包を取り出す。
「これ、以前お話した妹が作ったお菓子です。ぜひ皆さんで食べてください」
小さなお菓子の入った小包を、主催者に押し付けるように渡す。
「それでは、私はこれで。妹にもこのことを教えないといけないので!」
カンタレラはもう一度礼すると、町はずれの自宅へ急いだ。
*****
少しだけ日が傾き始めた頃、少女はいつものようにお菓子作りに励んでいた。
「ジャマするぜ~」
窓から聞こえる慣れ親しんだ声に目をやれば、窓枠に腰掛ける黒猫の頭の上に、白と黄色の羽を持つインコが座っていた。
「いらっしゃい。鳥さん。ハコビヤさん」
毎日のようにやってくる、少女の数少ない友人だ。
「今日はメレンゲクッキーだよ」
「いつも悪いな」
”ハコビヤ”と呼ばれた黒猫は、不愛想な目つきで少女を見つめれば、嬉しそうに微笑まれた。
「そんなことないよ。お菓子作るのは好きだし、ふたりとお茶するの、毎日楽しみにしてるんだ」
「そうか」
少しだけ不愛想な目つきを柔らかくさせるハコビヤを、羽を無言で何度も叩く鳥。
口からは何も発していないはずだが、騒がしい鳥を苛ついたように払い落とそうするハコビヤに、鳥はパタパタと音を立てて飛び立つと、少女の肩に乗った。
「いやーん。こわーい」
「ふふ……じゃあ、お茶用意するね」
いつもと変わらない仲の良い二匹に、少女は小さく笑うと、ポットを取りに立ち上がった。
その優勝者が、まさに今、発表されようとしていた。
緊張した面持ちで、腕自慢の料理人たちが並ぶ中、ひとり、静かに優勝者の発表を待つ女がいた。
「優勝者は、カンタリラ・アップリーゼ!」
名前を呼ばれた途端、湧き上がる歓声と両サイドから漏れるため息。
「さすが、シュガーウィッチ。スイーツじゃ負けなしだな」
大会の主催者が、優勝者であるカンタリラへ声をかければ、カンタリラは深々と頭を下げた。
「ありがとうございます。おかげで、夢だった宮廷料理人に一歩近づけます」
”シュガーウィッチ”
その名の示す通り、彼女たちの扱う魔力は甘く、極上の砂糖と言われている。
その砂糖で作り上げられたスイーツは、人々を魅了し、不治の病すらも治す伝説すら存在している。
シュガーウィッチであるカンタリラは、まだ若いが、例に漏れずスイーツ作りの才能を開花させ、既にこの町に彼女の名前を知らない者はいない。
「それはよかった。一昔前は、この大会にもシュガーウィッチが、ズラリと並んでいたものだが、随分と減ってしまったからな。寂しいものだよ」
寂し気に、壇上を見つめる主催者に、カンタリラの目にも少しだけ曇りが見えたが、口元の笑みは絶やさなかった。
「本当におめでとう。カンタリラ。宮廷料理人ならば、身の安全も保障されるだろう。あと少しだよ」
そう言って、宮廷料理人となるため、最後の試験会場である宮廷への招待状を彼女へ差し出せば、カンタリラは嬉しそうに目を細め、受け取った。
「ありがとうございます」
大切にその封筒を抱きしめると、思い出したようにバックの中から小包を取り出す。
「これ、以前お話した妹が作ったお菓子です。ぜひ皆さんで食べてください」
小さなお菓子の入った小包を、主催者に押し付けるように渡す。
「それでは、私はこれで。妹にもこのことを教えないといけないので!」
カンタレラはもう一度礼すると、町はずれの自宅へ急いだ。
*****
少しだけ日が傾き始めた頃、少女はいつものようにお菓子作りに励んでいた。
「ジャマするぜ~」
窓から聞こえる慣れ親しんだ声に目をやれば、窓枠に腰掛ける黒猫の頭の上に、白と黄色の羽を持つインコが座っていた。
「いらっしゃい。鳥さん。ハコビヤさん」
毎日のようにやってくる、少女の数少ない友人だ。
「今日はメレンゲクッキーだよ」
「いつも悪いな」
”ハコビヤ”と呼ばれた黒猫は、不愛想な目つきで少女を見つめれば、嬉しそうに微笑まれた。
「そんなことないよ。お菓子作るのは好きだし、ふたりとお茶するの、毎日楽しみにしてるんだ」
「そうか」
少しだけ不愛想な目つきを柔らかくさせるハコビヤを、羽を無言で何度も叩く鳥。
口からは何も発していないはずだが、騒がしい鳥を苛ついたように払い落とそうするハコビヤに、鳥はパタパタと音を立てて飛び立つと、少女の肩に乗った。
「いやーん。こわーい」
「ふふ……じゃあ、お茶用意するね」
いつもと変わらない仲の良い二匹に、少女は小さく笑うと、ポットを取りに立ち上がった。
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