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第十四話
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───第14話───
「あたし、光地之君の親友になりたいの!」
朝、教室に入ってかけられた第一声。昨日の「試」のことがあったので、もっと他の問いかけがとんでくるかと思っていた。
それが意外であった、という以前に、“友達”を超えて“親友”になりたいと。
そもそも、親友とは、“なりたい”と言われてそうなるものなのか。
それはさておき、幸乃さんの一件もまだはっきりとしていないのに、また謎の人物が絡んでくるとなると、負担が大きくなりすぎる。誰かから、親友だと思っていると言われたことも、ましてや親友になりたい、なんて言われたこともなかったので、そう言われて嬉しかったというのが本当のところであったが、なんせ、タイミングが悪すぎた。
最近の僕には色々と負担がありすぎる。
その負担の原因が人間関係のことであったゆえ、相手には悪いが、親友になるのはお断りさせてもらうことにした。名前も知らない相手と、いきなり“親友”になんてなれない。
「あの、失礼ですが、どちら様ですか?」
「あっ、そういえば、あたしまだ名乗っていませんでしたよね。あたし、茨城 未栗(いばらき みくり)っていいます。光地之君、今日からあたしと親友になってやってください!」
親友、親友、親友。
なぜそんなに“親友”という建前に固執するのだろうか。
仲良くなりたいのなら、“仲の良い友達”ではダメなのだろうか。
「“親友”という言葉に、なぜそこまでこだわるのですか?仲良くなりたいのなら、“友達”でよくないですか?」
「……、……」
「それに、名前も知らなかった人に、いきなり“親友になりたい”、だなんて言われてもねぇ……」
そういってしまってから、それがマズかったことに気付く。
沈黙から一転して、流れるように語り始めた。
「親友になるのに、名前とか立場とか性別とか、関係ないじゃん!あたしは、あなたの『試』を見ていてビビっときたから、『あっ!この人だ!』と感じたから、そう言っているの!」
圧力とか勢いとか、そういった裏があるようなものではなく、彼女からは、とても純粋な何かを感じ取ってしまった。
それゆえ、彼女のことを粗雑にあしらってしまうことに抵抗を覚えた。
純粋に友達になりたい、と言ってくれている。純粋に親友になりたい、と。
彼女が本心で、僕と親友になりたいと思っているのかなんて、このときの僕にとっては、もはやどうでもいいことになっていた。
それよりも。僕は彼女のその純粋なまなざしに、少なからぬ好感を抱いてしまったことは確かであった。
結論。僕が出した答えは以下のようだった。
「……うん、わかった、そうしよう」
「えっ……?いまなんて───」
「僕も君と親友になりたい。今、君の話を聞いてそう思ったよ」
「えっ、えっ、えっ……?ほんとにいいの?私と親友になってくれるの?」
「もちろん。今そう言ったでしょ」
そう言い終わった後の僕の頭の中には、幸乃さんや無条さん、それから星護のことなど、その片鱗すら入っていなかった。
“親友”を得て、“友達”を失う。
何かを得るために、何かを失うのがこの世の摂理。
それは、今もあの時も変わらぬ不変の真理である。
~続く~
「あたし、光地之君の親友になりたいの!」
朝、教室に入ってかけられた第一声。昨日の「試」のことがあったので、もっと他の問いかけがとんでくるかと思っていた。
それが意外であった、という以前に、“友達”を超えて“親友”になりたいと。
そもそも、親友とは、“なりたい”と言われてそうなるものなのか。
それはさておき、幸乃さんの一件もまだはっきりとしていないのに、また謎の人物が絡んでくるとなると、負担が大きくなりすぎる。誰かから、親友だと思っていると言われたことも、ましてや親友になりたい、なんて言われたこともなかったので、そう言われて嬉しかったというのが本当のところであったが、なんせ、タイミングが悪すぎた。
最近の僕には色々と負担がありすぎる。
その負担の原因が人間関係のことであったゆえ、相手には悪いが、親友になるのはお断りさせてもらうことにした。名前も知らない相手と、いきなり“親友”になんてなれない。
「あの、失礼ですが、どちら様ですか?」
「あっ、そういえば、あたしまだ名乗っていませんでしたよね。あたし、茨城 未栗(いばらき みくり)っていいます。光地之君、今日からあたしと親友になってやってください!」
親友、親友、親友。
なぜそんなに“親友”という建前に固執するのだろうか。
仲良くなりたいのなら、“仲の良い友達”ではダメなのだろうか。
「“親友”という言葉に、なぜそこまでこだわるのですか?仲良くなりたいのなら、“友達”でよくないですか?」
「……、……」
「それに、名前も知らなかった人に、いきなり“親友になりたい”、だなんて言われてもねぇ……」
そういってしまってから、それがマズかったことに気付く。
沈黙から一転して、流れるように語り始めた。
「親友になるのに、名前とか立場とか性別とか、関係ないじゃん!あたしは、あなたの『試』を見ていてビビっときたから、『あっ!この人だ!』と感じたから、そう言っているの!」
圧力とか勢いとか、そういった裏があるようなものではなく、彼女からは、とても純粋な何かを感じ取ってしまった。
それゆえ、彼女のことを粗雑にあしらってしまうことに抵抗を覚えた。
純粋に友達になりたい、と言ってくれている。純粋に親友になりたい、と。
彼女が本心で、僕と親友になりたいと思っているのかなんて、このときの僕にとっては、もはやどうでもいいことになっていた。
それよりも。僕は彼女のその純粋なまなざしに、少なからぬ好感を抱いてしまったことは確かであった。
結論。僕が出した答えは以下のようだった。
「……うん、わかった、そうしよう」
「えっ……?いまなんて───」
「僕も君と親友になりたい。今、君の話を聞いてそう思ったよ」
「えっ、えっ、えっ……?ほんとにいいの?私と親友になってくれるの?」
「もちろん。今そう言ったでしょ」
そう言い終わった後の僕の頭の中には、幸乃さんや無条さん、それから星護のことなど、その片鱗すら入っていなかった。
“親友”を得て、“友達”を失う。
何かを得るために、何かを失うのがこの世の摂理。
それは、今もあの時も変わらぬ不変の真理である。
~続く~
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