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星をつぐもの

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 三日ぶりに訪れた松ヶ崎高校に何の変化もなかった。壊れたヘリも既に撤去され、旧校舎一階の窓枠を覆うベニヤ板が、騒動の痕跡をわずかに伝える程度だ。表向きは小火(ぼや)のため二日間休校になったらしい。校門をくぐり下駄箱で履き替え、新校舎二階の教室に向かった。足が重い。顔を遭わせたくない。あの連中と。
 恐る恐る教室の扉を開けた。
「篠原!」
 黒田と松本だ。ケータイに無数の着歴があったのだが、今まで無視していたのだ。しかしもう逃れようがない。目の前でシュピーゲル号に吸い込まれるところを見られてしまったんだぞ! なんと説明したら良いのだ。
「ちょっと顔を貸せ」
 間もなく始業時間だというのに二人に下駄箱まで引っ張られる。ここはしらを切り通すしかないのか。黒田が言った。
「俺たちは当事者だ」
 は?
「聞いたよ、篠原のことは。だから心配しなくていい」と松本も言った。
「篠原がアブダクションされたことは俺たちだけの秘密だ」
 アブダクション? 誘拐? 何のことだ?
「皆まで言うな。すべてはディノサウロイド対策室の人に聞いた。一昨日のことは墓場まで持っていく。お前も辛かっただろうが、早く忘れることだ。目撃者がこういった問題に理解のある俺たちで良かったな。ありがたく思えよ」
 黒田が俺の肩をぽんと叩いた。何か裏で都合の良いシナリオのもと、情報が操作されているらしい。俺を見つめる黒田と松本の目に、哀れみの表情を感じるのは気のせいだろうか。何を忘れろというのだ。俺が何か同情を引くようなシナリオになっているのか。だとしたらルカ姉の仕業に他ならない。それにしても非日常に足を踏み入れてしまった黒田の、この活き活きとした表情はどうだろう。

 翌週、岩倉がペン入れを終えたまんがコロシアム用の原稿を持ってきた。実に仕事が早い。岩倉は学校が終わると、毎日深夜までディノサウロイドの翻訳作業を行っているという。その合間を縫ってのこの早さだ。
「せめて彩色ぐらいは」という幡枝さんの提案に従い、部員全員で彩色を行った。統一感に欠ける仕上がりにはなったことは否めないが、全員が係わったという事実の方が俺には貴重なことに思えた。作品は巨大なゴミの山の前で「エコって知ってるか?」と愛犬に語りかけるホームレスの姿。梅雨に入る直前、締め切り日を待たずして完成した作品は、無事俺の手によって郵送(簡易書留)された。
 岩倉が学校に通いながらディノサウロイドの研究翻訳ができるようプロジェクトチームが組まれ、夏休みにも木造の部室棟が国の予算で新築されるという。漫研をカモフラージュに岩倉専用の研究室がその中に作られるのだ。プロジェクト責任者はルカ姉。ルカ姉は岩倉のサポートと未亜の監視という名目のもと、英会話講師としてこのまま学校に残ることになった。

「うふふ。これ見て」
 市立図書館一階の喫茶店で幡枝さんが悪戯っぽく微笑み、財布から十円硬貨を一枚取り出す。両手の指先でつまむと「大山倍達!」と言ってふにゃりと曲げた。種も仕掛けもない純粋なパワーである。怖っ! 指先でまた何事もなかったように元に戻したけど、自販機では二度と使えないだろうな。
「このパワーがあと数日で消えちゃうだなんて。千五百メートル走で息切れひとつしないのよ。冷蔵庫を一人で持ち上げられるのよ。本気を出せば、オリンピックで金メダルも夢じゃない」
 夏コミ用の原稿を予定よりも早く印刷会社に入稿し終え、若干ハイになっているようだ。
「体調もすごくいいの。一週間徹夜しても少しも疲れないのよ。その分、気を失いそうになるぐらいお腹が空くけどね」
 なんか覚醒剤の禁断症状っぽい。本当に後遺症ないんだろうな、ナノマシン。
「定期的にゴリョウさんに処方してもらおうかなぁ」
「それって、定期的に未亜とキスするってことですよ」
「ちょっと恥ずかしいけどゴリョウさん可愛いから全然OK。今のうち練習しておくのも悪くないかも」
 練習って……。
「そう言えば篠原君、ナノマシン持っていないよね?」
「それが何か?」
「ってことはゴリョウさんとまだキスしていないんだ。どうして?」
 は? どうして? 何を言っているのです? そもそもそういう事って俺一人でできるものじゃないし、タイミングとか向こうの都合とか色々あるわけで……。
 あれ? おかしいな。俺、何を言っているんだろう。
「ゴメン。ちょっと言ってみただけ」
 しっとりと微笑む幡枝さんが少し遠くに見えた。 
「それにしても、ここでゴリョウさんについてとやかく言っていた自分が恥ずかしいよ。全く次元が違うんだもの。それに引き替え篠原君は凄いよね」
「何がです?」
「人類を超越した存在をコントロールできる、唯一の人だから」
 コントロールだなんてとんでもない。宇宙で最もフリーダムな女ですよ、あいつは。

 夏休みに突入した七月のある日。人類史に刻まれるであろう歴史的な瞬間が訪れようとしていた。ニューヨークの国際連合本部にて、ディノサウロイド代表と国連事務総長との共同会見が行われるのだ。テレビ、ラジオ、ネット、あらゆるメディアを通しての全世界同時中継。アメリカ東部時間午前九時。日本ではゴールデンタイムだ。
「ルカ姉だ!」
 あかねがテレビ画面を指さす。ヘッドセットをしたルカ姉が国連事務総長の後ろにいるのが映った。メガネをかけ髪型を変えているので、城崎先生と気づく人は少ないだろう。今最もノーベル賞に近い、若き日本人科学者として紹介された。初耳。
「お兄ちゃん、そんなことも知らなかったの? 信じられない!」
 どうやら一部で「エロすぎる科学者」として有名らしい。
「ああ見えてお姉ちゃんは材料工学、物理学、分子生物学の博士号を持っている天才なんだよ。特に材料工学においてはレアアースの代替品研究、常温超伝導研究の最先端にいる。だからペンタゴンから声がかかったんだ」 
 堅焼き煎餅をかじりながら、なぜか我が家でテレビを見ている未亜が自慢気に解説する。ルカ姉は「ディノサウロイド語の専門家」として通訳を行うことになっていた。もちろんディノサウロイド語など存在しない。実際の通訳は裏で岩倉が行い、岩倉の日本語をルカ姉が英語に訳すのだ。岩倉はその存在自体が最重要機密なのだ。
 事務総長による演説が始まった。歴史的瞬間に立ち会うことができて光栄だとか、人類発展の大きな礎になるであろうとか、面白みのない話が同時通訳で延々と続く。未亜が堅焼き煎餅をバリバリ食いながら言った。
「ウザいねぇ。みんなが見たいのはロリコントカゲなのに」
「みゃーちゃん、うるさい。テレビ聞こえない」
「はいはい」
 あらかじめ言っておこう。ディノサウロイドの姿は我々日本人にとって「意外」だ。それは彼らの装備によるところも大きい。ディノサウロイド本星の大気組成は太古の地球とも現在の地球とも大きく異なる。したがって彼らは地球環境下で行動する際には呼吸器を背負い、マスクを装着しなければならない。その姿が我々日本人にはあまりにも意外で、何かの冗談か悪ふざけとしか思えないのだ。ルカ姉がその姿の公開を渋ったのも肯けるぐらいに。
『それでは紹介いたしましょう。我らの先覚者にして朋友、ディノサウロイドです』
 事務総長がバラエティー番組の司会者のように叫ぶと、会場からの割れんばかりの拍手に包まれ、小さな生き物が舞台袖から現れた。なめらかな二足歩行で事務総長に歩み寄る。身長は一メートルちょっとぐらい。シルエットは四頭身の直立した太めのニホンザルのようだ。会場からどよめきが起こり、スタンディングオベーションとなる。画面がディノサウロイドのバストショットに切り替わった。
「え? これって……」あかねがしばし呆気にとられる。
 つぶらな瞳に薄黄緑色の滑らかな皮膚。
 ナスのヘタ状に垂れ下がった頭頂部の濃緑色の羽毛。
 大きな菱形のマスクと背中の平たい呼吸器。
 皮膚の色に合わせたかのような緑色のボディースーツと靴。
 そうなのだ。頭頂部にお皿こそなかったが、どこからどう見ても日本で最も有名な妖怪である「カッパ」にしか見えないのだ。そして……。
「いやん、なにこれぇ! かぁーわぁーいぃーいぃーっ!」と兄の俺でさえ聞いたことのない変な声であかねが悶えた。
 無理もない。女性百人中百人が「かぁーわぁーいぃーいぃーっ!」と悶え狂うほど母性を刺激してやまない愛らしい容姿なのだ。しかもマスクを外した口もとはシロイルカに似ており、可愛さが二乗に比例して増加するという凶悪さ。ちなみに手は人間と同じ拇指対向性を有する五本指で「水かき」はない。
 ディノサウロイドは事務総長と握手を交わし、会場を見回すと
『きゅう』と鳴いた。
「カッパのキューちゃん!」
 あかねと未亜がソファーの上で腹を抱え爆笑した。ルカ姉が英語でしゃべり出す。どうやら今の『きゅう』を翻訳しているらしい。同時通訳の日本語が流れる。
『こんにちは。宇宙人です』
「ぎゃははは。自分で宇宙人って言った!」
「おなか痛い。死ぬ」
 
 あの日あの瞬間、俺は自分の目を疑った。素直に受け入れろという方が無理だ。だってブリッジに大挙して押し寄せてきたのは「カッパ」だったのだから! 
 俺と未亜が唖然と見つめる中、彼らはブリッジ入口で全裸のハックと鉢合わせする。凍り付いたように動きを止め、ハックを遠巻きにするカッパたち。三分近い睨み合いを経て、一匹(一人)のカッパがゆっくりとハックに手を伸ばす。その指先がハックの白く美しい胸にムニュっと触れたとたん、全てのカッパたちが「きゅう」と叫びながらバタバタと倒れていったのである。
 ハックに俺のシャツを着せ、射出直前の岩倉をブリッジに戻し精神感応をしてもらう。結果、「擬死(ぎし)」が集団発生したことがわかった。擬死とは敵等の急激な攻撃に対し、反射的に不活動に陥る状態をいう。早い話彼らはショックのあまり気を失ったのだ。ハックの裸を見、触ることで。
 物欲に端を発した集団ヒステリーは集団擬死により治まった。二百数十名のディノサウロイド船乗組員も、本星に暮らす三億人のディノサウロイドも、皆冷静さを取り戻したのである。
 その後応急修理を施し、ディノサウロイド船から離脱したシュピーゲル号はホワイトハウス直上に降下する。無言の圧力を背景に、ルカ姉はアメリカ大統領との直談判に臨んだ。結果当初考えられていたファーストコンタクトの指針に、新たな項目が追加されることになった。その一部が次のものだ。
 ディノサウロイド対策室を合衆国政府から切り離し、国連組織に編入させること。
 人類、ディノサウロイドの交流は文化的なものに限定すること。
 人類、ディノサウロイド双方は、ペルム紀文明への干渉を行ってはならないこと。
 ペルム紀文明の存在は一切公にしないこと等々。
 最後にルカ姉は文化的交流を逸脱した行為、即ちディノサウロイドの技術を産業的軍事的に転用する行為が発覚した場合には、それ相当のペナルティーを課すと宣言した。これに対し合衆国閣僚から「我が国を恫喝するつもりか」と激しい反発が出たが、各閣僚の前に置かれたコップの水がボコボコと音を立て沸騰する様子を見て全員が沈黙したという。未亜が「チンした」のだ。
 国防長官は健康上の都合を理由に、その場で辞意を表明した。
  
 再びディノサウロイドが「きゅう」と鳴いた。相変わらずあかねと未亜が笑い転げている。ディノサウロイドは鳴く必要がない。これは言葉を喋っているように見せかけている演出だ。ディノサウロイドがテレパシーで会話することも、岩倉の存在と同等の機密なのだ。
『きゅ、きゅう』
『我々は電波通信により、初めて人類の存在を知りました』
『きゅう、きゅ、きゅう』
『電波通信にて接した人類の文化は、奇跡のように思えました』
 あかねが涙を流しながらヒーヒー喘いでいる。箸が転んでもおかしい年頃とはいうが、ここまで笑い転げるあかねを見るのは初めてかも知れない。よほどツボにはまったのだろう。それにしてもディノサウロイドが鳴く長さと、翻訳文の長さがあまりにも違いすぎる。やっつけ仕事っぽいなぁ。
『きゅ、きゅ、きゅう? きゅ、きゅう』
『我々先遣隊は地球に降り立ち、その考えが間違いのないものと確信を得ました』
 ディノサウロイドが演台下に用意されていた箱を取り出す。
 その箱の中から出て来たのは……。
「あーっ!」と未亜が大声を上げた。
「なになに? みゃーちゃん、どうしたの?」
 涙を拭いながらあかねが未亜に尋ねる。
『きゅきゅきゅ、きゅう。きゅ』
『この造型、この彩色。珠玉とは正にこのことです。人類文化の粋がここにあります』
 それは高さ二十センチほどの、恥ずかしいぐらいに煌びやかなアニメ系美少女フィギュアだった。これが人類文化の粋? オーギュスト・ロダン先生に謝れ!。
「思い出した!」
 未亜が立ち上がり画面を指さす。
「あのフィギュアを買うために、ボクはアキバに行ったんだ!」
 なに?
「通販で予約するつもりでいたのに、いつのまにか予約が締め切られていていたんだ。地元の小売りでは予約分しか販売しないっていうから、仕方なく当日販売品を狙ってアキバまで行ったんだよ! 朝から並んで最後の一個をギリギリ手に入れることができたんだ。それをあのガラクタロボットが!」
 お前の失われた記憶とはそれか! ちゅうか滅茶苦茶ハッキリ憶えているじゃん!
「幡枝先輩にしたのと同じことを、連中は去年ボクに対してやっていたんだ! おのれ、許さん! やっぱり戦争だ。今度こそロリコントカゲを殲滅してくれる!」
 待ってくれ! せっかく事態が収拾したのにまた戦争? 勘弁してくれ!
「トカゲじゃないよ、カッパだよ」とあかねが再び笑い出す。
 お前、うるさい。
「ただいまー。宇宙人さん、もう出た? あら未亜ちゃん、いらっしゃい」
 母である。パート帰りだ。
「お帰りなさい、お母さん! 宇宙人、もうテレビに映っているよ! ほらカッパ! カッパだよ! 超可愛いのっ!」とあかねがまた笑い転げる。
「まぁ、本当。カッパさんだ。可愛いじゃないの宇宙人さん。まるでゆるキャラみたい」と母も声を上げて笑った。
「おばさん。戦争の準備があるのでボクはここでお暇(いとま)します」
 未亜が帰り支度を始める。
「あらあら、それは大変ね。でもプリン食べるぐらいの時間はあるでしょ?」
「プリン?」 
 未亜が手を止める。
「いや、でも、今日はちょっと急いでいるので……」
「それは残念ねぇ。マールブランシュのなめらか生プリンなのに」
「マールブランシュ! ……頂きます」

 ディノサウロイドが「人類の皆さんとお友達になりたい」と言ったところで、テレビの中継が一段落した。プリンを平らげ、すっかりクールダウンした未亜が「帰る」と言った。
「送るよ」
 何度となく歩いた道を二人肩を並べ歩く。
「もう戦争はしないのか」
「もういいや。戦争面倒くさい。シュピーゲル号も修理中だし、お姉ちゃんにまた怒られるし。あのフィギュアもたぶん年内に再販予約かかるし」
 ひとまず安心である。
 しかし俺は自分の判断に確信を持てずにいた。あの時は勢いで大見得を切ったものの、改めて事の重大性を考えたとき膝の震えが止まらなかったのだ。今後人類とディノサウロイドとの間にどの様なトラブルが発生するのか、そして双方の社会にどんな影響が出るのか、誰にも予測できないのだ。
 そんな俺の心情を察したのか、未亜が俺の顔を覗き込む。
「ボクに対しては責任がないなんて言っておきながら、自分自身では何かしらの責任を感じているわけ?」
「ちょっとだけ」と正直に答えた。
「気にしない気にしない。視点を変えれば、やって来たのがロリコントカゲで良かったという考え方もあるよ」
「どういう意味だ?」
「ロリコントカゲが人類と同じ地球発祥の生き物だということ。人類と同じ先祖、同じDNAを持つ生き物だということ。少なくともお互いを生命として認識できている。これは重要。仮に地球とは縁もゆかりもないシリコンベースのエイリアンが存在し、彼らがこの星を訪れたとしよう。生化学的レベルから何の共通点も持たない彼らは、ボクたちを生命として認識しないかもしれない。認識しても価値のあるものと考えないかも知れない。そうなると話し合い以前の問題だ。考えただけでも恐ろしいよ」
 そんなものなのだろうか。いや、こいつが言うのだ。そうなのだろう。
 見上げると星空の中に、小さな円錐形の光がゆっくりと移動しているのが見えた。地球を周回するディノサウロイド船だ。今は進行方向に円錐の先端を向け、高度六百キロメートルを慣性飛行している。
 榊田さんは夏コミ用漫画の入稿が終わったその日から、人が変わったように勉強しまくっているという。政治家を目指すのだそうだ。どうやら本気で日本を変える気らしい。今まで俺はどこかの大学に入り、どこかの企業にもぐり込むことができれば、それで人生なんとかなるものだと考えてきた。けして間違いじゃないと思う。間違いじゃないけど俺の中にある「何か面倒臭いもの」がそれを疑問に感じつつある。でもその「何か面倒臭いもの」が何なのか、今はまだ解らない。
「ヒロシー」
「なんだ」
「シュピーゲル号の修理が終わったら、漫研のみんなで土星のリングを見に行こう。飛ばせば五日ぐらいで往復できるよ」
「また十G?」
「ゆっくり加減速していたら、二週間ぐらいかかっちゃうよ」
「もっと近場にしないか、月とかさ。八月はまんがコロシアムの本戦とか、夏コミのヘルプとか、マジ忙しいぞ」
「わかった。月だね。よーし、月面散歩用の一気圧宇宙服作っちゃうぞ。そうだ、アポロ着陸船に落書きしてやろう。地球防衛軍参上って」
 未亜が笑った。
 取り敢えずは……。未亜の好意に甘えて月面散歩にでも出かけてみるかな。
 答えを出すのはそれからでも遅くはないさ。きっと。
 俺は未亜の手をそっと握った。

 了
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