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番外編
辺境で 8 (ウルス視点)
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※ 今回も引き続き、ウルス視点です。
ルイスとマークはアリス嬢を心配し、フィリップはルイスを心配する。
過保護に思う相手は違っても、似たところのある三人。
なかでもルイスとフィリップの思いは強すぎて、過剰というか異常というか……。
このまま、こいつらを放置していたら、変な相乗効果を発揮する。
そして、気が付いたら、とんでもない奇天烈な方向へ話が行ってしまうに違いない。
というか、もう、すでに変だよな……。
アリス嬢のかわりに、ルイスが自分が行くといい、しかも、フィリップもルイスについていくと言う。
なんでそうなるのか意味が分からん……。
つまり、この二人の言う通りになるのなら、肝心のアリス嬢は行かず、何故か、王子二人が王妃様の辺境の城で茶会をするわけだ。
万が一にも、そんなことになってみろ……。想像するだけで恐ろしい。
王妃様にとったら楽しみにしていたアリス嬢が来ず、なぜか、呼んでもない息子たちが来た。まあ、控えめにいっても荒れ狂うだろうな……。
で、普段は冷静沈着なルイスも、ことアリス嬢のこととなると一気におかしな方向へ突っ走る。
アリス嬢を辺境まで呼び寄せようとした一点で、王妃様に怒りをぶつけるだろう。
そこへ、いつなんどきでも全身全霊でルイスの味方をするフィリップが参戦。
そうなると、その構図は王妃様 VS フィリップにすりかわる。もはや、誰もとめられない……。
なんという、カオス……。
茶会というか、茶器が頭上を飛び交う絵しか想像できない……。
そうなる前に、ここは、なんとしてでも、俺が止めなければ!
話し込む三人のテーブルを俺はバンっと叩いた。
王太子と王子を相手に不敬だろうが、関係ない!
三人の視線が俺にむいた。
アリス嬢のことで殺気立つルイスと、ルイスとの会話に水をさされたフィリップの不満げな視線がつきささる。
が、付き合いが長い俺は、こんなことではひるまない。
思っていることを一気にまくしたてた。
「三人とも冷静になれ! 確かに辺境伯様の城は遠いが、アリス嬢が行くと決めたのなら、それで、いいじゃないか。なんといっても、あの辺境騎士団の団長でもある王妃様の城だぞ。絶対に大丈夫だ。だから、ルイスもフィリップも行く必要なんてない。とういうか、行くな! 王妃様から呼ばれてもないのに勝手に行ったら、もめるだけだ!」
どうだ、正論だろう! と、胸をはる俺に、すぐさま、ルイスが冷たい声で言った。
「母上ともめようが、そんなことはどうでもいい。それよりもアリスだ。なぜ、アリスを一人で行かせて絶対大丈夫だなんて、ウルスは言いきれる!?」
ルイスが挑むように俺を見た。
ものすごい美貌なだけに、こんな目つきをしたら、ド迫力だ……。
ルイスを見慣れた俺でも、思わず息をのむ。
が、飲まれている場合じゃない!
なにがなんでも、俺が止めないと!
「そりゃ、辺境の城は鉄壁だからな。道中だって、辺境騎士団の騎士が護衛する馬車に何かしかけるバカはいないだろ? つまり、アリス嬢の身は絶対に安全だ!」
「なら、アリスの心は? アリスが一人で知らないところにいって、心細くて泣いたらどうする?」
間髪入れずに、ルイスが言い返してきた。
「は? ……いや、そこまでは知らん。だが、それこそ、別にルイスたちがどうこうできる話じゃあない……」
と言いかけて、俺は口をつぐんだ。
ルイスに殺されそうな視線を向けられていたからだ。
そこで、バチンと手を叩いた音がした。
フィリップだ。
「あ、そうだ! 僕、いいこと思いついた!」
やけに楽しそうな笑顔で、そう宣言したフィリップ。
が、その顔を見ると、俺の脳内では、自然と「僕、悪いこと思いついた!」に変換されてしまった。
長年の条件反射だな……。
フィリップ……。
これ以上、俺に面倒なことをふるのだけはやめてくれ……。
※ またまた更新が遅くなりました!
不定期な更新で読みづらいと思いますが、読んでくださったかた、本当にありがとうございます!
お気に入り登録、エール、いいねもありがとうございます! とても励みになっております!
ルイスとマークはアリス嬢を心配し、フィリップはルイスを心配する。
過保護に思う相手は違っても、似たところのある三人。
なかでもルイスとフィリップの思いは強すぎて、過剰というか異常というか……。
このまま、こいつらを放置していたら、変な相乗効果を発揮する。
そして、気が付いたら、とんでもない奇天烈な方向へ話が行ってしまうに違いない。
というか、もう、すでに変だよな……。
アリス嬢のかわりに、ルイスが自分が行くといい、しかも、フィリップもルイスについていくと言う。
なんでそうなるのか意味が分からん……。
つまり、この二人の言う通りになるのなら、肝心のアリス嬢は行かず、何故か、王子二人が王妃様の辺境の城で茶会をするわけだ。
万が一にも、そんなことになってみろ……。想像するだけで恐ろしい。
王妃様にとったら楽しみにしていたアリス嬢が来ず、なぜか、呼んでもない息子たちが来た。まあ、控えめにいっても荒れ狂うだろうな……。
で、普段は冷静沈着なルイスも、ことアリス嬢のこととなると一気におかしな方向へ突っ走る。
アリス嬢を辺境まで呼び寄せようとした一点で、王妃様に怒りをぶつけるだろう。
そこへ、いつなんどきでも全身全霊でルイスの味方をするフィリップが参戦。
そうなると、その構図は王妃様 VS フィリップにすりかわる。もはや、誰もとめられない……。
なんという、カオス……。
茶会というか、茶器が頭上を飛び交う絵しか想像できない……。
そうなる前に、ここは、なんとしてでも、俺が止めなければ!
話し込む三人のテーブルを俺はバンっと叩いた。
王太子と王子を相手に不敬だろうが、関係ない!
三人の視線が俺にむいた。
アリス嬢のことで殺気立つルイスと、ルイスとの会話に水をさされたフィリップの不満げな視線がつきささる。
が、付き合いが長い俺は、こんなことではひるまない。
思っていることを一気にまくしたてた。
「三人とも冷静になれ! 確かに辺境伯様の城は遠いが、アリス嬢が行くと決めたのなら、それで、いいじゃないか。なんといっても、あの辺境騎士団の団長でもある王妃様の城だぞ。絶対に大丈夫だ。だから、ルイスもフィリップも行く必要なんてない。とういうか、行くな! 王妃様から呼ばれてもないのに勝手に行ったら、もめるだけだ!」
どうだ、正論だろう! と、胸をはる俺に、すぐさま、ルイスが冷たい声で言った。
「母上ともめようが、そんなことはどうでもいい。それよりもアリスだ。なぜ、アリスを一人で行かせて絶対大丈夫だなんて、ウルスは言いきれる!?」
ルイスが挑むように俺を見た。
ものすごい美貌なだけに、こんな目つきをしたら、ド迫力だ……。
ルイスを見慣れた俺でも、思わず息をのむ。
が、飲まれている場合じゃない!
なにがなんでも、俺が止めないと!
「そりゃ、辺境の城は鉄壁だからな。道中だって、辺境騎士団の騎士が護衛する馬車に何かしかけるバカはいないだろ? つまり、アリス嬢の身は絶対に安全だ!」
「なら、アリスの心は? アリスが一人で知らないところにいって、心細くて泣いたらどうする?」
間髪入れずに、ルイスが言い返してきた。
「は? ……いや、そこまでは知らん。だが、それこそ、別にルイスたちがどうこうできる話じゃあない……」
と言いかけて、俺は口をつぐんだ。
ルイスに殺されそうな視線を向けられていたからだ。
そこで、バチンと手を叩いた音がした。
フィリップだ。
「あ、そうだ! 僕、いいこと思いついた!」
やけに楽しそうな笑顔で、そう宣言したフィリップ。
が、その顔を見ると、俺の脳内では、自然と「僕、悪いこと思いついた!」に変換されてしまった。
長年の条件反射だな……。
フィリップ……。
これ以上、俺に面倒なことをふるのだけはやめてくれ……。
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不定期な更新で読みづらいと思いますが、読んでくださったかた、本当にありがとうございます!
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