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番外編
私の悩み 10
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フィリップに狙われた首飾りをしっかりと押さえ、差し出された箱を前に、とまどっている様子の宝石だらけの令嬢。
そんな令嬢に向かって、フィリップが、更に箱を押し出した。
「サラ嬢。ほら、どうぞ? こんなに優しさを見せちゃってどうしよう、…みたいな、遠慮なんか、全くしないでいいからね? ルイスに似合うくらいの優しさがあるのなら、思う存分、アピールしてみてよ」
そう言って、黒々とした笑みを浮かべたフィリップ。
ほんとに、何を言っているんだ、フィリップは…?
と、その時、さっきまで気配を消していた木の実のような令嬢が、いきなり動き出した。
機械仕掛けの人形のように、ぎこちない動きでブレスレットを取り外した。
そして、箱の中に、さっと放り込んだ。
フィリップが怖いのか、できるだけ近づきたくないようだ。
だが、木の実のような令嬢よ。急にどうした…?
私の予想では、そのまま、気配を消していると思っていたのだが?!
すると、フィリップが、ゆっくりと視線を木の実のような令嬢に移す。
「ひっ!」
と、小さく声をあげた木の実のような令嬢。
「あれ? 君も、もしかして、優しさを証明したいの? まさかと思うけど、ルイスの婚約者を狙ってる?」
と、ものすごい圧をかけて聞くフィリップ。
木の実のような令嬢が、ブンブンブンと、猛烈な勢いで首を横に振った。
すると、フィリップがにっこり微笑んで、箱の中から、ブレスレットを取り出して令嬢の前に置いた。
「なら、これはお返しするよ。こんな高級なブレスレットは、教会のバザーにだせないし。基本的には、ハンドメイド製品が主なんだ」
…はあ?!
それなら、何故、宝石だらけの令嬢からは、高価すぎるほど高価そうな宝石を奪い取ろうとしているんだ?!
と、宝石だらけの令嬢も気づいたらしく、「ちょっと待ってください!」と、声をあげた。
木の実のような令嬢が、ぎょっとした顔で、宝石だらけの令嬢を見た。
「なにかな、サラ嬢?」
そう口にしたフィリップと、宝石だらけの令嬢の視線がバチバチと音をたてた。
一応、そもそもは見合いだろう?
なぜ、こんな険悪な雰囲気になるんだ…。
宝石だらけの令嬢は不満気な声をだした。
「それなら、私のアクセサリーはバザーにだせません! だって、そのブレスレットより、私のアクセサリーのほうが、ずっとずっと高価だもの! ハンドメイドなら、屋敷に戻って、大量の焼き菓子を用意してきますわ!」
「へええ。大量の焼き菓子か…。それは、喜ばれそうだね。もちろん、そのお菓子は君が作るんだよね?」
フィリップの問いに、宝石だらけの令嬢は自慢げに言った。
「まさか! 私が自ら作ったりなんかしませんわ! だって、私の屋敷には、沢山、料理人がいるんですから。お父様が、王宮にも負けないって言うほどの、腕のたつ料理人ばかり、ものすごいお金を払って、ひきぬいてきたんです! もちろん、デザート専門のシェフも何人もいるので、いくらでも作らせます!」
おい、王宮にもまけないとか、王宮で言うのか…?
しかも、まだ14歳なのに、金の匂い満載の価値観…。
金の亡者アイスバーク侯爵のミニチュアだな…。
王として、一国民の少女の未来が心配になってきた。
「あ、それは優しさ審査なら即失格ね。だって、それだと君は何もしてないし。手作りのものが出せないのなら、君の大切なその宝石をだしてもらうしかないかなって思ったんだけど」
「でも、高級なものはバザーにだせないって、さっき言いましたよね?」
「うん、バザーでは売れないけれど、換金すればいいだけだから。ぼくの側近のウルスもね、金の亡者なんだけど、…あ、もちろん、君の足元にも及ばないよ? つまり、小金の亡者だね」
何故、ここでウルスがでてくる…。
しかも、なんて紹介のされ方だ…。
「その小金の亡者ウルスにね、バザーの品物をだしてって頼んだら、現金を箱にいれたの。で、ぼくは『募金箱』じゃないんだけど?って注意したら、『なにより、金が一番だ。俺の下手なハンドメイドより、当然金だろ』そう言われて、納得したわけ。それに、バザーの品物はだせないけれど、ウルスのように、寄付はしたいという人たちが他にもいてね。ぼくも、そっちにのったの。結構、集まったから、そのお金で教会の補修をすることにしたんだ。君のアクセサリーも、すぐに換金したら、補修どころか、まるまる、教会が建て直せるかもね。そうなったら、君の優しさを認めてしまうかも…フフ」
と、宝石だらけの令嬢に、挑むように言うフィリップ。
その顔が、なんというか、ぬけめない守銭奴にしか見えない。
本当に王太子か…?
我が息子ながら、疑ってしまうんだが…。
※ 不定期な更新のなか、読んでくださった方、本当にありがとうございます!
お気に入り登録、ご感想、エールも、本当にうれしく、励みにさせていただいています!
そんな令嬢に向かって、フィリップが、更に箱を押し出した。
「サラ嬢。ほら、どうぞ? こんなに優しさを見せちゃってどうしよう、…みたいな、遠慮なんか、全くしないでいいからね? ルイスに似合うくらいの優しさがあるのなら、思う存分、アピールしてみてよ」
そう言って、黒々とした笑みを浮かべたフィリップ。
ほんとに、何を言っているんだ、フィリップは…?
と、その時、さっきまで気配を消していた木の実のような令嬢が、いきなり動き出した。
機械仕掛けの人形のように、ぎこちない動きでブレスレットを取り外した。
そして、箱の中に、さっと放り込んだ。
フィリップが怖いのか、できるだけ近づきたくないようだ。
だが、木の実のような令嬢よ。急にどうした…?
私の予想では、そのまま、気配を消していると思っていたのだが?!
すると、フィリップが、ゆっくりと視線を木の実のような令嬢に移す。
「ひっ!」
と、小さく声をあげた木の実のような令嬢。
「あれ? 君も、もしかして、優しさを証明したいの? まさかと思うけど、ルイスの婚約者を狙ってる?」
と、ものすごい圧をかけて聞くフィリップ。
木の実のような令嬢が、ブンブンブンと、猛烈な勢いで首を横に振った。
すると、フィリップがにっこり微笑んで、箱の中から、ブレスレットを取り出して令嬢の前に置いた。
「なら、これはお返しするよ。こんな高級なブレスレットは、教会のバザーにだせないし。基本的には、ハンドメイド製品が主なんだ」
…はあ?!
それなら、何故、宝石だらけの令嬢からは、高価すぎるほど高価そうな宝石を奪い取ろうとしているんだ?!
と、宝石だらけの令嬢も気づいたらしく、「ちょっと待ってください!」と、声をあげた。
木の実のような令嬢が、ぎょっとした顔で、宝石だらけの令嬢を見た。
「なにかな、サラ嬢?」
そう口にしたフィリップと、宝石だらけの令嬢の視線がバチバチと音をたてた。
一応、そもそもは見合いだろう?
なぜ、こんな険悪な雰囲気になるんだ…。
宝石だらけの令嬢は不満気な声をだした。
「それなら、私のアクセサリーはバザーにだせません! だって、そのブレスレットより、私のアクセサリーのほうが、ずっとずっと高価だもの! ハンドメイドなら、屋敷に戻って、大量の焼き菓子を用意してきますわ!」
「へええ。大量の焼き菓子か…。それは、喜ばれそうだね。もちろん、そのお菓子は君が作るんだよね?」
フィリップの問いに、宝石だらけの令嬢は自慢げに言った。
「まさか! 私が自ら作ったりなんかしませんわ! だって、私の屋敷には、沢山、料理人がいるんですから。お父様が、王宮にも負けないって言うほどの、腕のたつ料理人ばかり、ものすごいお金を払って、ひきぬいてきたんです! もちろん、デザート専門のシェフも何人もいるので、いくらでも作らせます!」
おい、王宮にもまけないとか、王宮で言うのか…?
しかも、まだ14歳なのに、金の匂い満載の価値観…。
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王として、一国民の少女の未来が心配になってきた。
「あ、それは優しさ審査なら即失格ね。だって、それだと君は何もしてないし。手作りのものが出せないのなら、君の大切なその宝石をだしてもらうしかないかなって思ったんだけど」
「でも、高級なものはバザーにだせないって、さっき言いましたよね?」
「うん、バザーでは売れないけれど、換金すればいいだけだから。ぼくの側近のウルスもね、金の亡者なんだけど、…あ、もちろん、君の足元にも及ばないよ? つまり、小金の亡者だね」
何故、ここでウルスがでてくる…。
しかも、なんて紹介のされ方だ…。
「その小金の亡者ウルスにね、バザーの品物をだしてって頼んだら、現金を箱にいれたの。で、ぼくは『募金箱』じゃないんだけど?って注意したら、『なにより、金が一番だ。俺の下手なハンドメイドより、当然金だろ』そう言われて、納得したわけ。それに、バザーの品物はだせないけれど、ウルスのように、寄付はしたいという人たちが他にもいてね。ぼくも、そっちにのったの。結構、集まったから、そのお金で教会の補修をすることにしたんだ。君のアクセサリーも、すぐに換金したら、補修どころか、まるまる、教会が建て直せるかもね。そうなったら、君の優しさを認めてしまうかも…フフ」
と、宝石だらけの令嬢に、挑むように言うフィリップ。
その顔が、なんというか、ぬけめない守銭奴にしか見えない。
本当に王太子か…?
我が息子ながら、疑ってしまうんだが…。
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