(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?

水無月あん

文字の大きさ
上 下
102 / 125
番外編

私の悩み 7

しおりを挟む
が、その殺気をすぐさまおさえこみ、宝石だらけの令嬢に微笑みかけたフィリップ。

逆に怖い…。何を考えている?!

「ねえ、サラ嬢って、ぼくより2歳年下だったよね?」

なぜ、今、年を聞くんだ…? 
フィリップの思惑が見えず、不安しかない。

「ええ、14歳です」
と、宝石だらけの令嬢が答えた。

というか、14歳で、何故、あれほどの宝石をつけている?

宝石目当てで狙われるかもしれないし、重いし、動きにくいだろう。それに、なにより、変だ。
デメリットしか浮かばないな…。

が、今は、令嬢よりも、フィリップに注意を払わねば!

フィリップの怖さに気が付いたらしい木の実のようなゴルラン公爵家の令嬢は、本当に木の実のように、動かなくなった。
もはや、大きい木の実として、庭の木々に同化しようとしている。
フィリップにしても、ターゲットから外したようで、存在を忘れたかのように視界にも入れていない。

木の実の令嬢、フィリップの危険に気づいてくれて礼を言うぞ!
こちらも、一人に集中して守ればいいから、助かる。

と、心で語りかけていると、フィリップが意味ありげな笑みを浮かべた。

「ぼくの弟のルイスは10歳。まだ、婚約者はいないんだ。君は、婚約者が4歳年下というのはどう思う? 年下は嫌かな?」
と、やけに優しい声をだすフィリップ。

アイスバーク侯爵令嬢! これは罠だ! 言葉に気をつけろ!

「ルイス殿下なら、4歳年下でも、全く問題ないです!」
前のめりで答えたアイスバーク侯爵令嬢。

いや、問題ありありだ。
本当にやめてくれ…。

「そう…。じゃあ、もしも、サラ嬢に、ルイスの婚約者候補になって欲しいってお願いしたら、受けてくれるの?」
と、これまた、優しい声で、誘導していくフィリップ。

これも罠だ! 受けないと、即答しろ!!

私は、令嬢に向かって心の中で絶叫する。

が、魔石のスピーカーから聞こえてきたのは、嬉々とした声。

「もちろんです! 喜んで、お受けいたします!」

ああ、最悪だ。

宝石だらけの令嬢よ…。

まずもって、ここにいる意味を忘れてどうする? 
ここにきているのは、一応、フィリップとの見合いだぞ?

ルイスに、簡単になびくな…。

が、見合い相手から、そんな失礼な態度をとられても、フィリップ自身は、痛くもかゆくもないらしい。
というか、そんなことは思いもしないんだろう。

ほら、あの目。
ルイスへ近寄る者を次々と駆除してきた時の目だ…。

フィリップは、黒々とした笑みを浮かべながら言った。

「じゃあ、サラ嬢。ルイスの婚約者候補として、君の誇れるところは何か教えてくれるかな?」

「美的センスには自信があります! 幼い頃より、高価な宝石や、高価な美術品に囲まれてましたから目がこえてるんです!」
胸をはって答えた、宝石だらけの令嬢。

いや、だから、身を守るためにも、危険を見極める目を持て!
と、さっきと同じことを、宝石だらけの令嬢に向かって、またもや、心の中で叫ぶ。

「なるほど。今日も、素晴らしい宝石をいっぱい身に着けてるもんね?」

「はい! まだ、沢山もってるんです。今日は、なかでも、お気に入りの高価な宝石ばかりをつけてきました!」
そう自慢げに言った。

さすが、金が全ての成金侯爵の娘だな。
14歳にして、「高価な」を何度使うことか…。

「でも、残念。ぼく、ルイスの婚約者に美的センスは求めてないんだ。だって、ルイスが美そのものだろう? 見せかけだけのありふれた美じゃなくて、内面からあふれだす美。もう、存在自体が美なの。そんな崇高で圧倒的な美を前に、美的センスなんて、無用じゃない?」

え…? フィリップは何を言っている?

ひとつずつの言葉は理解できても、文として、まるで意味がわからん…。

宝石だらけのアイスバーク侯爵令嬢もきょとんとしている。

そこで、フィリップが獲物をおいつめるように、アイスバーク侯爵令嬢のほうに、少しだけ身をのりだした。
顔は笑っているが、襲いかかる寸前のような鋭い目…。

「それよりも、ルイスには優しい子がいいなあ」
と、フィリップ。

おっ、雰囲気は猛禽類だが、言ってることは、ごく普通だ…。
少しだけ、ほっとする。

きょとんとしていた宝石だらけの令嬢も、我に返ったように声をあげた。

「あの、私、優しいんです! お父様にも、しょっちゅう言われます。サラは優しい子だねって」

宝石だらけの令嬢よ。それを自分で言うか…?
しかも、娘を甘やし放題の父親が言った言葉なんて、全く信憑性がないじゃないか…。

「そう? なら、良かった。でも、ぼくが、ルイスの婚約者に求めるのは、普通の優しさじゃないんだ。だってね、ルイスはどう考えても、天使でしょう? だから、天使を少しでも汚すような令嬢は認められないの。天使を天使以上の優しさで包んでくれるような婚約者じゃないとね。だから、君の優しさがどれくらいの優しさなのか、ちょっと見せてもらおうかな?」
そう言って、フィリップは、真っ黒い笑みを見せた。

フィリップ…。おまえは、一体何を言ってるんだ?
父である私には、今の文もまるで理解できなかったぞ…。

それに、ルイスは天使じゃない。間違いなく人間だ!




※ この「私の悩み」編は、過去のお話になります。王太子が16歳、ルイスが10歳です。ちなみに、ルイスは、まだアリスと出会っていません。最初にも注釈をつけましたが、今回、年齢のくだりがでてきたので、再度ここでも書いておきます。
読みづらいところも多いと思いますが、読んでくださっている方、本当にありがとうございます!
お気に入り登録、エール、ご感想もありがとうございます! 大変励みになります!
しおりを挟む
感想 249

あなたにおすすめの小説

本日より他人として生きさせていただきます

ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。

ふまさ
恋愛
 伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。  けれど。 「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」  他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。

公爵令息は妹を選ぶらしいので私は旅に出ます

ネコ
恋愛
公爵令息ラウルの婚約者だったエリンは、なぜかいつも“愛らしい妹”に優先順位を奪われていた。正当な抗議も「ただの嫉妬だろう」と取り合われず、遂に婚約破棄へ。放り出されても涙は出ない。ならば持ち前の治癒魔法を活かして自由に生きよう――そう決めたエリンの旅立ち先で、運命は大きく動き出す。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

ご自慢の聖女がいるのだから、私は失礼しますわ

ネコ
恋愛
伯爵令嬢ユリアは、幼い頃から第二王子アレクサンドルの婚約者。だが、留学から戻ってきたアレクサンドルは「聖女が僕の真実の花嫁だ」と堂々宣言。周囲は“奇跡の力を持つ聖女”と王子の恋を応援し、ユリアを貶める噂まで広まった。婚約者の座を奪われるより先に、ユリアは自分から破棄を申し出る。「お好きにどうぞ。もう私には関係ありません」そう言った途端、王宮では聖女の力が何かとおかしな騒ぎを起こし始めるのだった。

処理中です...