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番外編
閑話 アリスノート 27
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まあ、兄上の理解できない言動はいつものことだ。
それよりも、この不思議な特性を持つ魔石。
「これ、売れそうだな…」
俺がつぶやいたとたん、兄上が嬉しそうな声をあげた。
「さすが、ルイス! やっぱり、気づいちゃった?! そう、これ、売れるの!」
売れそうじゃなくて、売れる…。すでに断定した兄上の言葉に、思わず、俺は聞き返した。
「もしや、兄上、もうこの魔石にかんでるのか…?」
瞬間、兄上がにやりと笑った。なんとも、計算高い笑顔。
「もちろん! ぼくがこんなおもしろいもの、何もせずにいると思う?」
「…いや」
「でしょ! すぐに調べてみたけど、マーブル国で、この魔石の特性は知られていなかった。そんな使い方をしている人もいない。なので、買いつけてくれた魔石商とくんで、魔石でライトアップする展示ケースを、ぼく、売り出しました!」
「え? そんなものが売れるのか…?」
色々疑問がうずまく俺に、ウルスが説明してくれた。
「まだ魔石商のツテだけで発売しているが、すでに結構売れている。なんといっても、その手軽さだな。ケースに飾りたいものを入れ、魔石をその中で割る。魔石は、対象物のまわりを浮遊しながら発光する。今、ルイスがしたみたいに、対象物をとりのぞくと、一つの石に戻る。そして、また使いたい時は同じようにすればいい。再利用可能で永久に光るから経済的。ケースの中の湿度、温度管理も魔石でできる。なにより、おもしろい。博物館からも依頼がきているらしい」
「まあ、でも、対象物がふたつ以上ある時や、大きめのケースの場合、魔石が対象物をとりこむことをあきらめて、さっさとひとつの石に戻るから、改良が必要なんだけどね。そうしたら、もっと売れるでしょ?」
と、嬉しそうに微笑む兄上。
その顔は、まるでやり手の商人のようだ…。
「兄上。でも、売れたとしても、魔石商にもうけが入るだけなんじゃないのか?」
俺の言葉に、兄上がはっとしたようにウルスを見る。
「ちょっと、ウルス、今の聞いた?! 自分に利益が入らないこと前提で考えているルイスってほんと無欲! ほんと生きる天使! 金の亡者のウルスとは真逆だよね!」
「はあああ?! 誰が金の亡者だっ?!」
ウルスが吠えた。
が、そんなウルスを放置して、兄上は、ぼくのほうに向きなおった。
「ルイスに聞かせるには俗っぽい話なんだけど、一応、説明するね。もちろん、販売をするのは、魔石商だけれど、ぼく、このアイデアの特許をとったんだ。もちろん、わが国だけじゃなくて、この魔石がとれるマーブル国や、魔石を商売にしているシュルツ国もふくめてね。だから、売れたら売れただけ、アイデアの使用料が入ってくることになる。それでね、ぼくが得たお金は『ルイスのきらめく瞳基金』として、孤児院などにあてることにしました!」
「孤児院に使うのはいい…。だが、なんだ、その恥ずかしいネーミングは…!」
「えー、ちっとも恥ずかしくないよ! 素敵な名前だよ? 最初はね、『ルイスのきらめきに満ちた、美しく輝く青い瞳に見守られて基金』にしようかなって思ったんだけど、字数が長すぎるからって登録する係に断られてね。で、しょうがなく短くしたんだ」
は…?! 今のおかしな文言はなんだ…。幻聴か?
茫然とする俺に、ウルスが気の毒そうな顔で言った。
「ルイス、気持ちはわかる…。だが、今、フィリップが言った、センスの悪い長い基金名よりはましだと思って、あきらめてくれ。フィリップの動機はおかしいが、結果的には、国のためになる。孤児院のために使える資金が増えるのはありがたい。それに、魔石を買い付けることになったマーブル国は産業も少ないため非常に感謝されている」
「…なら、兄上の名前の基金にすればいい。俺は何もしていない」
「そんなことない! ぼく、知ってるんだからね。ルイスが孤児院のために今までしてきたこと。アリス嬢のお茶会用に作ったお菓子と同じものを、近くの孤児院に差し入れしてたことも、孤児院のバザーのために、ひとりで、沢山、お菓子をやいていたことも。それと、アリス嬢のためにルイスが考えたお菓子で、よりすぐりのものを、王室御用達のケーキ屋にレシピを売ったよね? その権利を孤児院名義にして」
「あ、…知ってたのか?」
「もちろん! ルイスのことは、なーんでも知ってるよ! だから、ぼくは、ルイスの思いを継いだだけだから。この基金の名前は絶対にルイスじゃないとダメ! それに、マーブル国の魔石を買ったのも、ルイスの瞳に似ていたからだし。つまり、全部、ルイスのおかげだもんね」
俺はため息をついて言った。
「…わかった。この際、基金の名前はどうでもいい。孤児院のためになるなら良かった。ありがとう、兄上…」
「どういたしまして、ルイス! あ、そうだ、もうひとつ、大事なことを言っておかなきゃ。ぼくの売り出したケースの名前は、じゃじゃーん、ずばり『気高き青、ルイスケース』です! こっちもいいでしょ?!」
は…?! 気高き青…って、なんだ、それは?!
恥ずかしすぎるだろ!ほんと、やめてくれ!
それよりも、この不思議な特性を持つ魔石。
「これ、売れそうだな…」
俺がつぶやいたとたん、兄上が嬉しそうな声をあげた。
「さすが、ルイス! やっぱり、気づいちゃった?! そう、これ、売れるの!」
売れそうじゃなくて、売れる…。すでに断定した兄上の言葉に、思わず、俺は聞き返した。
「もしや、兄上、もうこの魔石にかんでるのか…?」
瞬間、兄上がにやりと笑った。なんとも、計算高い笑顔。
「もちろん! ぼくがこんなおもしろいもの、何もせずにいると思う?」
「…いや」
「でしょ! すぐに調べてみたけど、マーブル国で、この魔石の特性は知られていなかった。そんな使い方をしている人もいない。なので、買いつけてくれた魔石商とくんで、魔石でライトアップする展示ケースを、ぼく、売り出しました!」
「え? そんなものが売れるのか…?」
色々疑問がうずまく俺に、ウルスが説明してくれた。
「まだ魔石商のツテだけで発売しているが、すでに結構売れている。なんといっても、その手軽さだな。ケースに飾りたいものを入れ、魔石をその中で割る。魔石は、対象物のまわりを浮遊しながら発光する。今、ルイスがしたみたいに、対象物をとりのぞくと、一つの石に戻る。そして、また使いたい時は同じようにすればいい。再利用可能で永久に光るから経済的。ケースの中の湿度、温度管理も魔石でできる。なにより、おもしろい。博物館からも依頼がきているらしい」
「まあ、でも、対象物がふたつ以上ある時や、大きめのケースの場合、魔石が対象物をとりこむことをあきらめて、さっさとひとつの石に戻るから、改良が必要なんだけどね。そうしたら、もっと売れるでしょ?」
と、嬉しそうに微笑む兄上。
その顔は、まるでやり手の商人のようだ…。
「兄上。でも、売れたとしても、魔石商にもうけが入るだけなんじゃないのか?」
俺の言葉に、兄上がはっとしたようにウルスを見る。
「ちょっと、ウルス、今の聞いた?! 自分に利益が入らないこと前提で考えているルイスってほんと無欲! ほんと生きる天使! 金の亡者のウルスとは真逆だよね!」
「はあああ?! 誰が金の亡者だっ?!」
ウルスが吠えた。
が、そんなウルスを放置して、兄上は、ぼくのほうに向きなおった。
「ルイスに聞かせるには俗っぽい話なんだけど、一応、説明するね。もちろん、販売をするのは、魔石商だけれど、ぼく、このアイデアの特許をとったんだ。もちろん、わが国だけじゃなくて、この魔石がとれるマーブル国や、魔石を商売にしているシュルツ国もふくめてね。だから、売れたら売れただけ、アイデアの使用料が入ってくることになる。それでね、ぼくが得たお金は『ルイスのきらめく瞳基金』として、孤児院などにあてることにしました!」
「孤児院に使うのはいい…。だが、なんだ、その恥ずかしいネーミングは…!」
「えー、ちっとも恥ずかしくないよ! 素敵な名前だよ? 最初はね、『ルイスのきらめきに満ちた、美しく輝く青い瞳に見守られて基金』にしようかなって思ったんだけど、字数が長すぎるからって登録する係に断られてね。で、しょうがなく短くしたんだ」
は…?! 今のおかしな文言はなんだ…。幻聴か?
茫然とする俺に、ウルスが気の毒そうな顔で言った。
「ルイス、気持ちはわかる…。だが、今、フィリップが言った、センスの悪い長い基金名よりはましだと思って、あきらめてくれ。フィリップの動機はおかしいが、結果的には、国のためになる。孤児院のために使える資金が増えるのはありがたい。それに、魔石を買い付けることになったマーブル国は産業も少ないため非常に感謝されている」
「…なら、兄上の名前の基金にすればいい。俺は何もしていない」
「そんなことない! ぼく、知ってるんだからね。ルイスが孤児院のために今までしてきたこと。アリス嬢のお茶会用に作ったお菓子と同じものを、近くの孤児院に差し入れしてたことも、孤児院のバザーのために、ひとりで、沢山、お菓子をやいていたことも。それと、アリス嬢のためにルイスが考えたお菓子で、よりすぐりのものを、王室御用達のケーキ屋にレシピを売ったよね? その権利を孤児院名義にして」
「あ、…知ってたのか?」
「もちろん! ルイスのことは、なーんでも知ってるよ! だから、ぼくは、ルイスの思いを継いだだけだから。この基金の名前は絶対にルイスじゃないとダメ! それに、マーブル国の魔石を買ったのも、ルイスの瞳に似ていたからだし。つまり、全部、ルイスのおかげだもんね」
俺はため息をついて言った。
「…わかった。この際、基金の名前はどうでもいい。孤児院のためになるなら良かった。ありがとう、兄上…」
「どういたしまして、ルイス! あ、そうだ、もうひとつ、大事なことを言っておかなきゃ。ぼくの売り出したケースの名前は、じゃじゃーん、ずばり『気高き青、ルイスケース』です! こっちもいいでしょ?!」
は…?! 気高き青…って、なんだ、それは?!
恥ずかしすぎるだろ!ほんと、やめてくれ!
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