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番外編
閑話 アリスノート 22
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「それは、もちろん、言葉通りだよ! ルイスはね、ぼくのはしばみ色の瞳がだーいすきなんだよ」
…ん? ルイスって、俺か…?
いや、好きも何も、兄上の瞳について、考えたこともないが…。
思考が迷子になっていると、ウルスも首をかしげた。
「おい、フィリップ。ルイスがそう言ったのか? いや、どう考えても言わないだろ。いつもどおり、都合よく妄想してるんじゃないのか? だいたい、ルイスは、アリス嬢の瞳でなかったら、興味すらないだろうしな」
ウルスが言った。
確かに、ウルスの言う通りだ。アリスの瞳以外、誰の瞳にも興味はない。微塵もない。
すると、兄上が、フフフフッと嬉しそうに笑った。
「それが、違うんだよねー。ルイスは、ぼくのはしばみ色の瞳に興味があるんだもんねー」
「いや、ない」
俺は即答した。
「えー?! もしかして、忘れちゃった?! でも、大丈夫。ルイスが忘れても、ぼくが、しーっかり覚えてるから! ルイスがぼくのはしばみ色の瞳を褒めてくれたこと。ぼくの瞳の色が大好きだって言ってくれたこと」
え? 俺が、兄上の瞳をほめた?
俺は記憶をたどる。が、何も思い出せない。
記憶がなさすぎて、逆に気になってきた。
「兄上、俺は、いつ、そんなことを言った? どんな状況で、そう言ったんだ?」
俺が聞くと、兄上が、やたらと目を輝かせて話し始めた。
「ルイスがぼくの瞳をほめてくれたのは、ちょうど、ルイスが6歳と3か月が過ぎた時だったね」
「ちょうどって、なにがちょうどなんだ?! しかも、6歳と3か月って…。細かすぎて、怖いだろ…! その時点で先を聞きたくない気がする」
ウルスが眉間にしわをよせて言った。
俺も、まさに同じ気持ちだ。ウルス…。
が、兄上は、そんな俺たちを気にすることなく、楽しそうに話を続ける。
「ルイスの瞳の色は、父上に似てブルー。そして、ルイスの髪の色は、母上に似て金色。それにひきかえ、ぼくの瞳の色は、はしばみ色で、母上と同じ。髪の色は、赤茶色で父上と同じだよね」
「…まあ、そうだな。それが、どうかしたか?」
先が見えない不気味さに包まれて、俺は、慎重にあいづちをうった。
「その時、ぼくは、そのことで、すごーく悩んでたんだ」
「…は? 何故だ?」
「だって、ルイスと同じ色がないよね?! 両親に似た瞳の色と髪の色が、ルイスとは逆なんだよ! 両親に似なくていいから、ぼくは、ルイスとおそろいがよかったのに!」
「「…」」
思わず無言になる俺とウルスのそばで、更に勢いづく兄上。
「特に、瞳の色が一緒がうらやましくて。そりゃあ、ルイスの瞳の色は美しい唯一無二のブルーだよ。父上は、ありふれたブルーだけれど、それでも、同じ系統でしょ? ずるいよね? しかも、ウルスだって、ほぼグレーみたいな色だけど、ブルーといえば、ブルーに見えないこともない。それも、ずるいよね? 名前だって似てるのに、ずるいよね? だから、やっぱり違う名前で呼ぼうかなって、考えてんだよね。一度、ウルルって呼んで激怒されたから、じゃあ、ウララかウリリにしようかなって」
「はああ?! そんなこと考えてたのか?! ほんと、ルイスのこととなると、ろくなことを考えないな?! もっと、まともなことで悩め! 王太子だろ!」
と、ウルスが叫ぶ。
確かにな…。
が、兄上は、吠えるウルスを完全に無視。
「でも、そんな悩みを一言で吹き飛ばしてくれたのが、ルイスなんだよ!」
そう言って、俺に向かって、満面の笑みを見せた。
※ 更新がすっかり遅くなり、すみません!
不敵な更新ですが、読んでくださっている方、ありがとうございます!
そして、エールもありがとうございます! 励みになります!
…ん? ルイスって、俺か…?
いや、好きも何も、兄上の瞳について、考えたこともないが…。
思考が迷子になっていると、ウルスも首をかしげた。
「おい、フィリップ。ルイスがそう言ったのか? いや、どう考えても言わないだろ。いつもどおり、都合よく妄想してるんじゃないのか? だいたい、ルイスは、アリス嬢の瞳でなかったら、興味すらないだろうしな」
ウルスが言った。
確かに、ウルスの言う通りだ。アリスの瞳以外、誰の瞳にも興味はない。微塵もない。
すると、兄上が、フフフフッと嬉しそうに笑った。
「それが、違うんだよねー。ルイスは、ぼくのはしばみ色の瞳に興味があるんだもんねー」
「いや、ない」
俺は即答した。
「えー?! もしかして、忘れちゃった?! でも、大丈夫。ルイスが忘れても、ぼくが、しーっかり覚えてるから! ルイスがぼくのはしばみ色の瞳を褒めてくれたこと。ぼくの瞳の色が大好きだって言ってくれたこと」
え? 俺が、兄上の瞳をほめた?
俺は記憶をたどる。が、何も思い出せない。
記憶がなさすぎて、逆に気になってきた。
「兄上、俺は、いつ、そんなことを言った? どんな状況で、そう言ったんだ?」
俺が聞くと、兄上が、やたらと目を輝かせて話し始めた。
「ルイスがぼくの瞳をほめてくれたのは、ちょうど、ルイスが6歳と3か月が過ぎた時だったね」
「ちょうどって、なにがちょうどなんだ?! しかも、6歳と3か月って…。細かすぎて、怖いだろ…! その時点で先を聞きたくない気がする」
ウルスが眉間にしわをよせて言った。
俺も、まさに同じ気持ちだ。ウルス…。
が、兄上は、そんな俺たちを気にすることなく、楽しそうに話を続ける。
「ルイスの瞳の色は、父上に似てブルー。そして、ルイスの髪の色は、母上に似て金色。それにひきかえ、ぼくの瞳の色は、はしばみ色で、母上と同じ。髪の色は、赤茶色で父上と同じだよね」
「…まあ、そうだな。それが、どうかしたか?」
先が見えない不気味さに包まれて、俺は、慎重にあいづちをうった。
「その時、ぼくは、そのことで、すごーく悩んでたんだ」
「…は? 何故だ?」
「だって、ルイスと同じ色がないよね?! 両親に似た瞳の色と髪の色が、ルイスとは逆なんだよ! 両親に似なくていいから、ぼくは、ルイスとおそろいがよかったのに!」
「「…」」
思わず無言になる俺とウルスのそばで、更に勢いづく兄上。
「特に、瞳の色が一緒がうらやましくて。そりゃあ、ルイスの瞳の色は美しい唯一無二のブルーだよ。父上は、ありふれたブルーだけれど、それでも、同じ系統でしょ? ずるいよね? しかも、ウルスだって、ほぼグレーみたいな色だけど、ブルーといえば、ブルーに見えないこともない。それも、ずるいよね? 名前だって似てるのに、ずるいよね? だから、やっぱり違う名前で呼ぼうかなって、考えてんだよね。一度、ウルルって呼んで激怒されたから、じゃあ、ウララかウリリにしようかなって」
「はああ?! そんなこと考えてたのか?! ほんと、ルイスのこととなると、ろくなことを考えないな?! もっと、まともなことで悩め! 王太子だろ!」
と、ウルスが叫ぶ。
確かにな…。
が、兄上は、吠えるウルスを完全に無視。
「でも、そんな悩みを一言で吹き飛ばしてくれたのが、ルイスなんだよ!」
そう言って、俺に向かって、満面の笑みを見せた。
※ 更新がすっかり遅くなり、すみません!
不敵な更新ですが、読んでくださっている方、ありがとうございます!
そして、エールもありがとうございます! 励みになります!
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