(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?

水無月あん

文字の大きさ
上 下
85 / 125
番外編

閑話 アリスノート 19

しおりを挟む
「この魔石が元の一つの石に戻るところを見たいな…」
俺がぼそっとつぶやくと、兄上が、何故か上着の袖をまくりあげた。

やたらと張り切っているのが伝わってくる。

「ルイスがそんなに興味をもってくれるなんて、兄様は嬉しい! ではでは、兄様が、魔石が一つに戻るところをお見せしまーす!」
インチキな奇術師のようで、胡散臭さ満載だ…。

兄上は、上着の内ポケットから小さな鍵をとりだした。
キーホルダーなのか、アーモンドのような形のきらめく青い石がついている。

「あ、これもマーブル国の魔石なんだよ。これは砕かずに使ってるんだ。だって、なんといっても形が素敵だよね?」
兄上はそう言うと、その青い魔石を、俺の顔の横に持ってきた。

「うん、やっぱりちょっと似てる!」
嬉しそうな声をあげる兄上。

「なにがだ?」

「この石の形がね、ルイスの目の形に似てると思って! 見た瞬間、石との運命を感じたんだ。そりゃあ、ルイスの目はすばらしくて、ずーっと見てられる、素敵すぎる目だよ。他のものと比べようもない。でも、この石の形は少しだけ似てて、ルイスの目を思い出すから、すごーく気に入ってるんだ!」

「気持ち悪いな…」
俺が即座に言うと、

「そうだな…」
ウルスが相槌を打つ。

「えええ?! いやいや、よく見てよ?! ほら、ここ、ルイスの目って、涼やかな切れ長で…」

「やめろ。それ以上言うと、たたきこわして、二度と元の形に戻らないように畑にばらばらにして埋める」
俺の言葉に、兄上が零れ落ちそうなほど大きく目を見開いた。

「優しいルイスが、なんて、怖いことを言うの?! あっ、口の悪いウルスの影響?!」
ウルスをきっとにらむ兄上。

「はあ?! なんだ、その訳の分からない、とばっちりは? 俺じゃなくて、普通にフィリップが気持ち悪いだけだろ。目の形がどうのこうのなんてな…。俺がもしそんなこと言われたら、即刻、海になげ捨てる」

「ウルス。心配しなくても、ウルスの目の形に全く興味がないから」

「ああ、それは良かった。ルイス、気持ちの悪い兄で、かわいそうに…」
ウルスが挑戦的に言い返す。

脱線しすぎて、全く話がすすまない…。

「兄上…。もう、どうでもいいから、早くそのガラスケースをあけて、魔石がひとつに戻るところを見せてくれ」
いらいらしながら、俺が兄上を促す。

「あ、ごめんね。ウルスのせいで!」

「はああ?!」

またか…。

「兄上、鍵をかしてくれ。ケースの中から服をとりだせば、魔石が一つの石に戻るんだろ? 自分でやる。兄上は、ウルスと話を続けてくれ」
そう言うと、俺は素早く、兄上の手から鍵を奪い取った。

「ちょっと、ルイス! 待って、待って、ぼくが見せるんだから…!」
鍵を奪い返しにくる兄上を片手で阻止。

アリスを守るため体を鍛えている俺は、兄上より、はるかに力が強い。

わいわい言っている兄上を片手で阻止したまま、ガラスケースの鍵穴に鍵を差し込んだ。

が、その瞬間、鍵はびくとも動かなくなった。どれだけ強くまわそうとしても、全く動かない。
抜こうとしても、今度は抜くこともできない。
がっちりと固まってしまった。

なんだ、この鍵は?!







※ いつも読んでくださっている方々、ありがとうございます! 
そして、感想、お気に入り登録、エールを送ってくださった方々、励みにさせていただいています!
 本当にありがとうございます!












しおりを挟む
感想 249

あなたにおすすめの小説

本日より他人として生きさせていただきます

ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。

ふまさ
恋愛
 伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。  けれど。 「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」  他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。

公爵令息は妹を選ぶらしいので私は旅に出ます

ネコ
恋愛
公爵令息ラウルの婚約者だったエリンは、なぜかいつも“愛らしい妹”に優先順位を奪われていた。正当な抗議も「ただの嫉妬だろう」と取り合われず、遂に婚約破棄へ。放り出されても涙は出ない。ならば持ち前の治癒魔法を活かして自由に生きよう――そう決めたエリンの旅立ち先で、運命は大きく動き出す。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

ご自慢の聖女がいるのだから、私は失礼しますわ

ネコ
恋愛
伯爵令嬢ユリアは、幼い頃から第二王子アレクサンドルの婚約者。だが、留学から戻ってきたアレクサンドルは「聖女が僕の真実の花嫁だ」と堂々宣言。周囲は“奇跡の力を持つ聖女”と王子の恋を応援し、ユリアを貶める噂まで広まった。婚約者の座を奪われるより先に、ユリアは自分から破棄を申し出る。「お好きにどうぞ。もう私には関係ありません」そう言った途端、王宮では聖女の力が何かとおかしな騒ぎを起こし始めるのだった。

処理中です...