(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?

水無月あん

文字の大きさ
上 下
83 / 125
番外編

閑話 アリスノート 17

しおりを挟む
マーブル国の情報で、この青い光に結びつくものは…。

俺は答えた。
「もしかして、魔石か…?」

「さっすがルイス! すごいよ! 大当たりー!」
にこにこしながら、力いっぱい拍手をする兄上。

しかし、ウルスは目を見開き、驚いた声で聞いてきた。
「おい、ルイス! たった5秒で、どうして答えにたどりつく?! 俺にはわからん!」

いや、俺には、何故、ウルスがそんなに驚いているのかがわからない。
が、とりあえず、聞かれたことに答える。

「マーブル国で、青い魔石が採れることを思い出したからだ」
至極当然のことだ。

なのに、それを聞いたとたん、
「はああああ?!」
ウルスが大声をあげた。

「うるさいよ、ウルス」
兄上が顔をしかめ、耳をふさぐ。

が、ウルスは兄上を見ることもなく、俺の方へ体を乗り出してきた。
「いやいやいや、色々おかしいだろ? 納得がいかん! ルイス、おまえが答えに行きつくまでの経路を確認させてくれ。まず、マーブル国は、ここから遠く遠く離れている小さな国だ。国交はない。無縁の国だ。よってほとんど情報もない。ここまでの認識は俺と同じか?」

「ああ、そうだな」
俺の答えに、ウルスがうなずく。

「よしっ、では次!」

「ちょっと、ウルスー。ルイスに対してえらそーに言うのやめてくれる?」
兄上が不満そうに言うが、ウルスは聞こえてないようだ。

真剣な眼差しで俺を見ている。
気になると、とことん突き詰めて知りたがるウルスらしいな。

「俺は、フィリップがマーブル国の商人から魔石を買ったと聞くまで、マーブル国で魔石が採れるとは全く知らなかった。魔石と言えば、シュルツ国のものが有名で手軽に買える。それにひきかえ、マーブル国の魔石の知名度はゼロだ。なのに、何故、ルイスは魔石が採れることを知っていた?」

「子どものころ、暇つぶしに王宮の書庫にある外国に関する資料を片っ端から読んでいた時があった。その中に、マーブル国について書かれた資料が一冊だけあり、産出量は少ないが、青い色の魔石が採れると1行だけ書いてあったのを思い出した」

ウルスが、眉間にしわをよせた。
「たった1行?! しかも、子どもの頃、読んだだけなんだろ?! それに、子どもの頃の暇つぶしに、資料なんて読むか普通?! が、それよりも、なんだその記憶力は?! しかも、その記憶を引き出すまでにたった5秒って…。ほんと、人間離れした記憶力の良さ、フィリップにそっくりで恐ろしい兄弟だな…」
一気にまくし立てた後、怯えた顔で、俺と兄上を見比べるウルス。

「ちょっと、ウルス、なに失礼なこと言ってんの?! ルイスは、ぼくよりずーっと頭がよくて、…あ、もちろん、頭だけじゃなくて、ぜーんぶが素晴らしくて、愛らしくて、優しくて、まさに生きる天使だからね!」
フフフッっと笑いながら、見当はずれのことを並べたてる兄上。

「兄上、生きる天使は、この世にアリスだけだ」
俺は、しっかりと訂正をいれておく。

「うわ…。そういうところも似すぎてて怖すぎる…」
と、身を震わすウルス。

怖い? 何がだ? 
アリスのことは事実しか言ってない。

アリスは、俺の天使、俺の妖精、…そして、俺のすべてだ。
しおりを挟む
感想 249

あなたにおすすめの小説

本日より他人として生きさせていただきます

ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。

ふまさ
恋愛
 伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。  けれど。 「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」  他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。

公爵令息は妹を選ぶらしいので私は旅に出ます

ネコ
恋愛
公爵令息ラウルの婚約者だったエリンは、なぜかいつも“愛らしい妹”に優先順位を奪われていた。正当な抗議も「ただの嫉妬だろう」と取り合われず、遂に婚約破棄へ。放り出されても涙は出ない。ならば持ち前の治癒魔法を活かして自由に生きよう――そう決めたエリンの旅立ち先で、運命は大きく動き出す。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

ご自慢の聖女がいるのだから、私は失礼しますわ

ネコ
恋愛
伯爵令嬢ユリアは、幼い頃から第二王子アレクサンドルの婚約者。だが、留学から戻ってきたアレクサンドルは「聖女が僕の真実の花嫁だ」と堂々宣言。周囲は“奇跡の力を持つ聖女”と王子の恋を応援し、ユリアを貶める噂まで広まった。婚約者の座を奪われるより先に、ユリアは自分から破棄を申し出る。「お好きにどうぞ。もう私には関係ありません」そう言った途端、王宮では聖女の力が何かとおかしな騒ぎを起こし始めるのだった。

処理中です...