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番外編
閑話 アリスノート 12
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「…兄上、モニュメントの話はもういい。現時点で現物がないのなら、アリスの目にふれる心配もないしな…。それより、そもそも、俺の初公務で着た服の話を聞こうとしていたはずだったのだが? なのに、服の話がでる前に、こうも疲労するとは…」
すると、ウルスが悲壮な顔で、アップルパイをのみこんで、口を開いた。
「時系列としては、ルイス初公務の時、まず、このモニュメントを建てる事件がおき、王妃様が激怒して、やっと終わったと思ったら、ルイスの着ていた服を手に入れろ事件がおきたんだ…」
「ウルス、何、言ってんの? 事件じゃなくて、当たり前のことばかりなんだけど?」
「当たり前って…。そんなわけないだろ!」
ウルスが、ドスのきいた声で反論する。
「つまり、モニュメントも服も、要は全部、俺絡みなんだよな…。ウルス、苦労をかけて悪かった…」
不憫なウルスを見ていると、思わず謝罪の言葉がとびだした。
「いや、ルイスはちっとも悪くない。ぜーんぶ、フィリップのせいだ。それに、フィリップに振り回されるのは、このモニュメント事件だけじゃないし。それどころか、ほぼほぼ、毎日だ。慣れている。大丈夫だ…」
自分に言い聞かせるようにつぶやくウルス。
いや、ちっとも大丈夫じゃないだろ?!
「でも、モニュメントの時、ウルスは、ぼくの邪魔をしたのに、王と王妃から褒賞をもらったよね?」
うらめしそうに言う兄上。
おい、兄上、なんだその反応は?!
誰のせいで、ウルスが苦労してると思ってるんだ?
でも、褒賞をもらったのなら、不憫なウルスに、少しでもいいことがあって良かった…。
「ああ、王様からは、フィリップをよくぞ止めたと特別褒賞をいただいた。王妃様からも、よく知らせてくれたと褒賞をくださると言われたが、王妃様のは謹んで辞退した」
と、疲れたように話すウルス。
「遠慮でもしたのか? どっちからも、もらっとけばいいのに」
俺が不思議に思って聞く。
「いや、遠慮したわけでは決してない。王妃様の褒賞はいらなかっただけだ。金じゃなかったからな」
「え? じゃあ、なんだったんだ?」
「辺境騎士団へ入団できる権利だ。フィリップに対抗できるとは、見どころがある。辺境騎士団にきたら、私が直に鍛えるとおっしゃったんだがな…」
「はあ?! いや、それ、いらなさすぎるだろ…」
あきれた声をだす俺に、兄上が言った。
「母上は、だれもが騎士になりたいと思っているからねー。根っからの脳筋騎士だし」
「…なんか、ウルス…。母上までもが、悪かったな…」
再度、謝罪の言葉が口をつく。
ウルスは、首を横にふり、
「いや、王妃様にとったら、最高の褒賞をくださろうとしたんだと思う…。残念ながら、俺が全く欲しくなかっただけでな…。その分、王様には過分にいただいた。…ルイス、俺はさとった。金は裏切らない。だから、もらえるものは遠慮なく、もらうんだ!」
と、きっぱり言い切ったウルス。
急にどうした、ウルス…?
「ウルスはね、最近、お金しか信じられないんだって。ほら、へーんな女にひっかかりそうになったから。フフフ」
兄上が、楽しそうに微笑む。
やめろ。その笑顔、もはや悪魔にしか見えない…。
そんな兄上を見て、ウルスの全身から、めらっと何かが燃え上がった。
「ああ、そうだな。俺は、毎日、だれかさんに、こき使われすぎて、思考能力がとまっていたんだろうな。だから、あんな変な女にひっかかりそうになったんだろ。だって、俺からフィリップにのりかえようとした変な女だぞ? 趣味わるすぎ、ハハッ…」
あ、ウルスがきれた。
そして、兄上も、その性格上、だまって受け流すわけもなく、黒々した笑顔を、更に黒光りさせて、一気にしゃべりだした。
「へええ。だれのおかげで、あの女にひっかかる寸前でとめてもらったんだろうね? ぼくがとめなかったら、今頃、ウルスは、ため込んでるお金もぜーんぶとられて、単なる足がかりにされて、もっと、金と地位のあるバカ貴族にのりかえられてただろうね。かわいそうなウルス。今頃、ぼろきれみたいになって、転がってたかも」
そう言いきると満足そうな笑みを浮かべる兄上。子どもすぎる…。
好きな子をいじめる小さな子どもみたいだ。
そんな二人を見て、俺はぼそっとつぶやいた。
「けんかするほど仲がいいっていうもんな。兄上は、よほど、ウルスが好きなんだな…」
シーンとした後、「「ちがう!」」と、二人が叫んだ。
やはり、息ぴったりじゃないか…。
すると、ウルスが悲壮な顔で、アップルパイをのみこんで、口を開いた。
「時系列としては、ルイス初公務の時、まず、このモニュメントを建てる事件がおき、王妃様が激怒して、やっと終わったと思ったら、ルイスの着ていた服を手に入れろ事件がおきたんだ…」
「ウルス、何、言ってんの? 事件じゃなくて、当たり前のことばかりなんだけど?」
「当たり前って…。そんなわけないだろ!」
ウルスが、ドスのきいた声で反論する。
「つまり、モニュメントも服も、要は全部、俺絡みなんだよな…。ウルス、苦労をかけて悪かった…」
不憫なウルスを見ていると、思わず謝罪の言葉がとびだした。
「いや、ルイスはちっとも悪くない。ぜーんぶ、フィリップのせいだ。それに、フィリップに振り回されるのは、このモニュメント事件だけじゃないし。それどころか、ほぼほぼ、毎日だ。慣れている。大丈夫だ…」
自分に言い聞かせるようにつぶやくウルス。
いや、ちっとも大丈夫じゃないだろ?!
「でも、モニュメントの時、ウルスは、ぼくの邪魔をしたのに、王と王妃から褒賞をもらったよね?」
うらめしそうに言う兄上。
おい、兄上、なんだその反応は?!
誰のせいで、ウルスが苦労してると思ってるんだ?
でも、褒賞をもらったのなら、不憫なウルスに、少しでもいいことがあって良かった…。
「ああ、王様からは、フィリップをよくぞ止めたと特別褒賞をいただいた。王妃様からも、よく知らせてくれたと褒賞をくださると言われたが、王妃様のは謹んで辞退した」
と、疲れたように話すウルス。
「遠慮でもしたのか? どっちからも、もらっとけばいいのに」
俺が不思議に思って聞く。
「いや、遠慮したわけでは決してない。王妃様の褒賞はいらなかっただけだ。金じゃなかったからな」
「え? じゃあ、なんだったんだ?」
「辺境騎士団へ入団できる権利だ。フィリップに対抗できるとは、見どころがある。辺境騎士団にきたら、私が直に鍛えるとおっしゃったんだがな…」
「はあ?! いや、それ、いらなさすぎるだろ…」
あきれた声をだす俺に、兄上が言った。
「母上は、だれもが騎士になりたいと思っているからねー。根っからの脳筋騎士だし」
「…なんか、ウルス…。母上までもが、悪かったな…」
再度、謝罪の言葉が口をつく。
ウルスは、首を横にふり、
「いや、王妃様にとったら、最高の褒賞をくださろうとしたんだと思う…。残念ながら、俺が全く欲しくなかっただけでな…。その分、王様には過分にいただいた。…ルイス、俺はさとった。金は裏切らない。だから、もらえるものは遠慮なく、もらうんだ!」
と、きっぱり言い切ったウルス。
急にどうした、ウルス…?
「ウルスはね、最近、お金しか信じられないんだって。ほら、へーんな女にひっかかりそうになったから。フフフ」
兄上が、楽しそうに微笑む。
やめろ。その笑顔、もはや悪魔にしか見えない…。
そんな兄上を見て、ウルスの全身から、めらっと何かが燃え上がった。
「ああ、そうだな。俺は、毎日、だれかさんに、こき使われすぎて、思考能力がとまっていたんだろうな。だから、あんな変な女にひっかかりそうになったんだろ。だって、俺からフィリップにのりかえようとした変な女だぞ? 趣味わるすぎ、ハハッ…」
あ、ウルスがきれた。
そして、兄上も、その性格上、だまって受け流すわけもなく、黒々した笑顔を、更に黒光りさせて、一気にしゃべりだした。
「へええ。だれのおかげで、あの女にひっかかる寸前でとめてもらったんだろうね? ぼくがとめなかったら、今頃、ウルスは、ため込んでるお金もぜーんぶとられて、単なる足がかりにされて、もっと、金と地位のあるバカ貴族にのりかえられてただろうね。かわいそうなウルス。今頃、ぼろきれみたいになって、転がってたかも」
そう言いきると満足そうな笑みを浮かべる兄上。子どもすぎる…。
好きな子をいじめる小さな子どもみたいだ。
そんな二人を見て、俺はぼそっとつぶやいた。
「けんかするほど仲がいいっていうもんな。兄上は、よほど、ウルスが好きなんだな…」
シーンとした後、「「ちがう!」」と、二人が叫んだ。
やはり、息ぴったりじゃないか…。
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