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番外編
閑話 ウルスの休日 9
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泣いていたロクサーヌ嬢の涙がとまった。
ルイスの顔に完全に見とれている。
フィリップの目は、ロクサーヌ嬢をじっと見ている。獲物に飛びかかる寸前の目だ。
が、フィリップ、待て!!
ルイスの顔に見とれるのは、ある意味、致し方ない。ルイスは人並外れて美しいからな。
なんとも思わないほうが珍しいんだ。
美しいものに見とれているだけなら、罪じゃないだろ?
そして、ロクサーヌ嬢。見とれているだけにして、その先は何も言うな!
命が惜しくば、絶対に言うな!
ロクサーヌ嬢に騙されかけた俺だが、まだ、騙されたわけではない。
しかも、判断力がなかった俺がバカだっただけで、まともな奴ならひっかかからない程度のレベルだ。
ロクサーヌ嬢は浅はかだが、犯罪をおかしたわけではない。
悪役令嬢と言うほどの狡猾さもなく、ただ、権力のある男を狙うだけの女性だ。
逆に俺に関わったせいで、ロクサーヌ嬢がフィリップに関わってしまったことを気の毒に思いはじめたぐらいだ。
腹黒王太子のフィリップの攻撃をまともに受けると、ロクサーヌ嬢は再起不能になってしまう。
そうなれば、俺の罪にカウントされるんじゃないのか?
そして、俺の幸せが、更に遠のいていくんじゃんないのか?
まずい! 神様! ロクサーヌ嬢の口が開かないようにしてくれ!
という願いもむなしく、ロクサーヌ嬢が、すごい勢いで立ちあがった。
頬を染め、俺やフィリップに向けていた、演技がかった潤んだ目ではなく、熱がこもった目で、ルイスを見つめる。
そして、口を開いた。
「ルイス殿下。私は、ザクセン伯爵家の長女、ロクサ…」
「だれが、ルイスに挨拶していいって言った?!」
フィリップの冷たい声が響く。
さっきまでの声とはまるで違う声に、ローアンが隣でぶるっと震えた。
「え? …なんで」
状況がよくわからないロクサーヌ嬢が、驚いて、フィリップを見る。
「君、今、なんでって言った? なんでなんて、聞かなくてもわかるでしょ? 君は、ルイスを見る資格も、話す資格も、挨拶する資格もないからだよ?」
「やめろ、兄上」
そこで、ルイスが口をはさんだ。
よく言った! フィリップをとめれるのは、ルイスだけだ!
これでなんとか最悪の事態は免れたか…と思ったら、ロクサーヌ嬢がルイスの言葉で何を誤解したのか、ルイスにかけより、すがりつこうとして、ルイスに即座に手を払われた。
が、あきらめることなく、涙をながしながら、
「ルイス殿下、お助けください…! 私、王太子殿下に誤解されて、ひどいことを言われてるんです!」
と、上目遣いで見上げている。
あー、終わった…。
そして、人ひとりを不幸になるのを止められなかった俺は、その因果で、また幸せが遠のいていくんだな…。
「なんだ、この女?」
ルイスの表情はかわらないが、不快感いっぱいの視線をフィリップに投げた。
「ごめんね、ルイス! 変なもの見せて。ルイスが子どもの頃、散々、悩まされてきた、どろりとした目って、こんな感じなんだよね? ほんと、ごめんね。あとで、ウルスが責任とるから」
…はあああ?! 俺?! 責任って、なんで俺が?!
そして、フィリップは、ルイスに話しかける時と違って、がらりと声のトーンをさげ、ロクサーヌ嬢に言った。
「ということで、ロクサーヌ嬢。ぼくの忠告も聞かず、ルイスを見て、ルイスに近寄り、ルイスに話しかけ、あろうことか、ルイスを触ろうとした。ぼく、許せないんだけど? どう罪をつぐなってくれる?」
フィリップの放つ真っ黒な気に、ローアンもマリー嬢も震えて動けなくなっている。
「ええと、君、確か、ザクセン伯爵家だったよね。ほんと、お父さんにそっくりだね? 君の家、なんで没落したかわかる? 君の父、ザクセン伯爵が欲深かったからだよ。自分の利益のために、人を利用した。結果的に信用を失い没落した」
「嘘言わないで! お父様がだまされたのよ!」
すっかり素になったロクサーヌ嬢が、フィリップをにらみつけた。
フィリップは、ぞっとするような笑みを浮かべた。
「ほんと、しぶといね。まだそんな元気が残ってるんだ?」
「…なんで、王太子殿下は、私を目の敵にするんですの! 私、何もしてないわ!」
と、ロクサーヌ嬢は叫んだ。
フィリップは、はーっとため息をついて、
「だから、何度同じことを言わせるの? ぼく、馬鹿は嫌いなんだけど? 別に、ウルスを利用しようとしたことは、どうでもいいよ? こんな安っぽいハニートラップにひっかかるウルスが馬鹿なんだから」
…うっ、…痛い。心の傷をえぐらないでくれ…フィリップ。
ルイスの顔に完全に見とれている。
フィリップの目は、ロクサーヌ嬢をじっと見ている。獲物に飛びかかる寸前の目だ。
が、フィリップ、待て!!
ルイスの顔に見とれるのは、ある意味、致し方ない。ルイスは人並外れて美しいからな。
なんとも思わないほうが珍しいんだ。
美しいものに見とれているだけなら、罪じゃないだろ?
そして、ロクサーヌ嬢。見とれているだけにして、その先は何も言うな!
命が惜しくば、絶対に言うな!
ロクサーヌ嬢に騙されかけた俺だが、まだ、騙されたわけではない。
しかも、判断力がなかった俺がバカだっただけで、まともな奴ならひっかかからない程度のレベルだ。
ロクサーヌ嬢は浅はかだが、犯罪をおかしたわけではない。
悪役令嬢と言うほどの狡猾さもなく、ただ、権力のある男を狙うだけの女性だ。
逆に俺に関わったせいで、ロクサーヌ嬢がフィリップに関わってしまったことを気の毒に思いはじめたぐらいだ。
腹黒王太子のフィリップの攻撃をまともに受けると、ロクサーヌ嬢は再起不能になってしまう。
そうなれば、俺の罪にカウントされるんじゃないのか?
そして、俺の幸せが、更に遠のいていくんじゃんないのか?
まずい! 神様! ロクサーヌ嬢の口が開かないようにしてくれ!
という願いもむなしく、ロクサーヌ嬢が、すごい勢いで立ちあがった。
頬を染め、俺やフィリップに向けていた、演技がかった潤んだ目ではなく、熱がこもった目で、ルイスを見つめる。
そして、口を開いた。
「ルイス殿下。私は、ザクセン伯爵家の長女、ロクサ…」
「だれが、ルイスに挨拶していいって言った?!」
フィリップの冷たい声が響く。
さっきまでの声とはまるで違う声に、ローアンが隣でぶるっと震えた。
「え? …なんで」
状況がよくわからないロクサーヌ嬢が、驚いて、フィリップを見る。
「君、今、なんでって言った? なんでなんて、聞かなくてもわかるでしょ? 君は、ルイスを見る資格も、話す資格も、挨拶する資格もないからだよ?」
「やめろ、兄上」
そこで、ルイスが口をはさんだ。
よく言った! フィリップをとめれるのは、ルイスだけだ!
これでなんとか最悪の事態は免れたか…と思ったら、ロクサーヌ嬢がルイスの言葉で何を誤解したのか、ルイスにかけより、すがりつこうとして、ルイスに即座に手を払われた。
が、あきらめることなく、涙をながしながら、
「ルイス殿下、お助けください…! 私、王太子殿下に誤解されて、ひどいことを言われてるんです!」
と、上目遣いで見上げている。
あー、終わった…。
そして、人ひとりを不幸になるのを止められなかった俺は、その因果で、また幸せが遠のいていくんだな…。
「なんだ、この女?」
ルイスの表情はかわらないが、不快感いっぱいの視線をフィリップに投げた。
「ごめんね、ルイス! 変なもの見せて。ルイスが子どもの頃、散々、悩まされてきた、どろりとした目って、こんな感じなんだよね? ほんと、ごめんね。あとで、ウルスが責任とるから」
…はあああ?! 俺?! 責任って、なんで俺が?!
そして、フィリップは、ルイスに話しかける時と違って、がらりと声のトーンをさげ、ロクサーヌ嬢に言った。
「ということで、ロクサーヌ嬢。ぼくの忠告も聞かず、ルイスを見て、ルイスに近寄り、ルイスに話しかけ、あろうことか、ルイスを触ろうとした。ぼく、許せないんだけど? どう罪をつぐなってくれる?」
フィリップの放つ真っ黒な気に、ローアンもマリー嬢も震えて動けなくなっている。
「ええと、君、確か、ザクセン伯爵家だったよね。ほんと、お父さんにそっくりだね? 君の家、なんで没落したかわかる? 君の父、ザクセン伯爵が欲深かったからだよ。自分の利益のために、人を利用した。結果的に信用を失い没落した」
「嘘言わないで! お父様がだまされたのよ!」
すっかり素になったロクサーヌ嬢が、フィリップをにらみつけた。
フィリップは、ぞっとするような笑みを浮かべた。
「ほんと、しぶといね。まだそんな元気が残ってるんだ?」
「…なんで、王太子殿下は、私を目の敵にするんですの! 私、何もしてないわ!」
と、ロクサーヌ嬢は叫んだ。
フィリップは、はーっとため息をついて、
「だから、何度同じことを言わせるの? ぼく、馬鹿は嫌いなんだけど? 別に、ウルスを利用しようとしたことは、どうでもいいよ? こんな安っぽいハニートラップにひっかかるウルスが馬鹿なんだから」
…うっ、…痛い。心の傷をえぐらないでくれ…フィリップ。
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