(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?

水無月あん

文字の大きさ
上 下
57 / 125
番外編

閑話 ウルスの休日 4

しおりを挟む
脳筋ローアンが変にふってきたせいで、なんて、言えばいいのか…。
休みモードだと、頭が動かないんだが…。

没落したあの伯爵家ですね、…じゃなくて、昔、栄えてましたね、もダメだよな…。
…あ、そうだ!

「もちろん存じてます。由緒ある伯爵家ですからね」
と、御令嬢であるロクサーヌ嬢にむかって言う。

ロクサーヌ嬢は
「まあ、光栄ですわ」
と、艶やかに微笑んだ。

セーフ…!

しかし、ロクサーヌ嬢と、ローアンの婚約者のマリー嬢は、あまりにもタイプが違うな。

素朴な印象のマリー嬢とは違い、ロクサーヌ嬢は派手な雰囲気の美人だ。
ドレスにしても、地味目のマリー嬢。派手目のロクサーヌ嬢。
二人の共通項が見いだせない。

まあ、全く違うタイプが友人と言うのはよくあるが、この二人から、親し気な空気感みたいなものが伝わってこないんだが…。

なので、
「お二人は、お友達なんですか?」
と聞いてみた。

すると、マリー嬢が、
「実は、今までロクサーヌさんとは、あまり話したことがなかったんです。
でも、私がローアンに王都へ会いに行くんだけど、一緒に行ってくれるはずの友達が行けなくなったから不安だって、学園で話してたら、ロクサーヌさんが声をかけてきてくれたんです。
王都のことは、良く知ってるから、一緒にいきましょうって。私、ほっとして…。
親切でしょう?」
と、微笑んだ。

ロクサーヌ嬢が、
「私、以前、王都に住んでましたから。久々に遊びに来たいと思ってたので、ご一緒しましょうと、声をかけてみたんです」
そう言うと、華やかな笑みを浮かべた。

「おお、ロクサーヌさんは優しいなあ! な、な、ウルス! おまえもそう思うだろ?!」
と、またもや、やたらと大げさに俺に同意を求めるローアン。

俺に出会いをと思ってくれているんだろうが、脳筋が気を使うと、余計に変な空気になる…。

そんな、ローアンをにこにこしながら見ているマリー嬢のふところの深さに、ほんと感動するわ!
俺が女なら、こんな婚約者は絶対に嫌だ。

ローアン、おまえを受け入れてくれる稀有けうな存在に出会えて幸運だったな! 
絶対、離すなよ!

すると、ロクサーヌ嬢が俺の目をじっと見ながら、
「ウルスさんは、王太子殿下の側近でいらっしゃるんでしょ? すごいですよね! いつからなんですか?」
と聞いてきた。

大きな黒い瞳は少しうるっとしていて、すいこまれそうになる。

「王太子とは幼馴染なので、学園を卒業してから、側近として働きはじめました。なので、子どもの頃から、ずっと一緒にいますね」
そう答えると、

彼女が、
「まあ、そんなに王太子殿下に信頼されてらして、すごいわ。大変なお仕事をされていて尊敬します」
そう言うと、うるうるとした瞳で、俺を見つめてきた。

久しくなかった状況に、ドキッとする。

気持ちがあがってきたところで、ローアンが、
「そうなんですよ! ウルスは、王太子様と常に一緒にいるくらい、一番、信頼されてるんですよ! 将来有望ですよ! そして、婚約者もいません!」
と、前のめりで、ロクサーヌ嬢に話す。

恥ずかしいから、やめてくれ…。

が、ロクサーヌ嬢はローアンのうるささを気にもせず、俺にむかって、恥じらうように微笑みながら、聞いてきた。
「あの、ウルスさんは宿舎に住まわれてると最初にお聞きしましたが、ご実家はどちらなんですか?」

「実家は王都にあります。ただ、仕事が忙しいので宿舎にはいってますが、王宮まで通える距離です。馬車なら30分くらいでしょうか」

「まあ、便利なところにご実家があるんですね! うらやましいですわ。私も、王都に住んでいたころが懐かしくて…。また、いつか、こちらで住みたいと思ってるんです」
と、俺の目を見つめながら、美しく微笑みかけてきた。

なんだか、熱量を感じるんだが…?! 気のせいか?! 俺の思い過ごしか?!

もしや、こんな美人が、俺を気に入ったのか…? 
いや、まさかな…。 でも、もしかして、もしかするかも…。

と、考えをめぐらせていたら、ローアンのでかい声で引き戻された。
「ロクサーヌさん! なら、ウルスはお買い得! 実家は、堅実なブライト子爵家で、気楽な次男坊。王太子様の側近で、ずっと王都住まいは確定してるからね!」

俺をアピールしてくれてるんだろうが、セール品みたいな気持ちになってきた…。
しおりを挟む
感想 249

あなたにおすすめの小説

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

公爵令息は妹を選ぶらしいので私は旅に出ます

ネコ
恋愛
公爵令息ラウルの婚約者だったエリンは、なぜかいつも“愛らしい妹”に優先順位を奪われていた。正当な抗議も「ただの嫉妬だろう」と取り合われず、遂に婚約破棄へ。放り出されても涙は出ない。ならば持ち前の治癒魔法を活かして自由に生きよう――そう決めたエリンの旅立ち先で、運命は大きく動き出す。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

本日より他人として生きさせていただきます

ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。

わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。

ふまさ
恋愛
 伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。  けれど。 「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」  他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。

文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。 父王に一番愛される姫。 ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。 優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。 しかし、彼は居なくなった。 聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。 そして、二年後。 レティシアナは、大国の王の妻となっていた。 ※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。 小説家になろうにも投稿しています。 エールありがとうございます!

処理中です...