(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?

水無月あん

文字の大きさ
上 下
49 / 125
番外編

挿話 王太子の受難 10

しおりを挟む
「部屋に閉じ込めて、どれだけ待たせるんだ! さっさと、捕縛すればいいものを、何、たらたらしゃべってる!」
と、王妃がどなる。

「母上と違って、脳筋ではないもので。ただ、捕まえるなんて、つまらないでしょう?」
と、ぼくが言うと、

母上の額にぴきりと青筋がたった。
「だれが、脳筋だー!」

後ろから、息をきらして、やっと入って来たのは、王だ。
「まあまあ、ミラベル。落ち着いて…。ちゃんと、経緯は聞けたじゃないか」

そう、王妃と王は、別の部屋に待機してもらっていて、この部屋の映像と音声はずっと流していた。
それで、すべて終わった時に、二人に登場してもらう予定だったのに…。

母上は、ほんと待てないよね? これだから脳筋は…。

ぼくは、女の方を向いて、
「もっとじっくり話がしたかったけど、時間切れみたい。君の身柄は、ロンダ国に引き渡されるよ。二度と、この国に来ないでね? 
ほんとに、ルイスに近づかなかったら、ぼくの興味もひかなかったのに。残念だったね?」

ぼくの言葉を聞いたとたん、女が、ワインの入ったグラスを手にとり、ぼくに向かって投げつけようと、腕を高くふりあげた。
すぐに、ウルスがぼくをかばうように、間に入り、それと同時に、騎士も女を羽交い絞めにして、グラスをとりあげた。

「もうー、なんてことするの! 危ないでしょ? 罪が増えるよ?」
ぼくが、親切に忠告すると、女はうなりながら、血走った目で、にらみ返してきた。

うん、なかなか、根性があるね。

その点、ブルーノ伯爵夫妻といえば、ガタガタふるえている。

突然、ブルーノ伯爵夫人のほうが、王妃に駆け寄ろうとした。
が、すぐに騎士にとめられた。

「王妃様! 親戚の私たちをお助けください! 私たちは、騙されてただけなんです!」
と、ブルーノ伯爵夫人が、騎士に取り押さえられたまま叫ぶ。

王妃は、首をかしげて、
「あれは、親戚なのか?」
と、王に聞いた。

「王妃の従妹の主人の連れ子が、あのブルーノ伯爵夫人だそうだ」
と、王が説明する。

「はあ?! なんだ、それ。王は、よくそんなつまらんことを覚えてられるな? 
まあ、いい」
そう言うと、ブルーノ伯爵夫人に近づいた。

「そなたが、親戚だとは知らなかったよ」
そう言って、美しく微笑んだ。

ブルーノ伯爵夫人の顔が、ぱっと明るくなる。
「そうなんです! 親戚なんです! お助けください、王妃様!」
と、連呼している。

「はああー、何言ってんの? この人。
仮にも、王妃の親戚を語るなら、せめて、王妃の性格ぐらい把握しといてよ。
根っからの騎士で、脳筋にそんなことが通用するわけないよね?」
と、隣にいるウルスに向かって、小声でささやく。

「おい、こら、フィリップ。全部、聞こえてるぞ。私は脳筋ではない!」

しかも、辺境の森で鍛えられた、おそろしいほどの地獄耳だ。

王妃は、期待に目をぎらぎらさせている伯爵夫人に向かって、
「身内なら、特別待遇にしないとな」
と、微笑むと、

「騎士団長!」
と、呼んだ。

「はっ!」
という声とともに、すぐに、騎士団長がそばによる。

「ブルーノ伯爵夫妻を、違法薬物の密輸、販売で、厳しく取り調べ、罰せよ!
親戚だそうなので、なおさら遠慮はいらん! 連れて行け!」
と、命をくだす。

騎士団長は王妃に軽く頭をさげ、すぐに、騎士たちに指示をだす。
あっという間に、ブルーノ伯爵夫妻は、縄をかけられて、連行されていった。

「それで、こっちの令嬢のお迎えは?」
と、ぼくが聞くと、

見慣れない制服の人たちが入って来た。

「ロンダ国の騎士の方たちだ」
そう王妃が言うと、一番前にいた大男が、ぼくの前に進みでた。

「ロンダ国の第二騎士団長のブリートと申します。
この度、王太子殿下には、多大なご協力をくださり、まことにありがとうございます。
後日、ロンダ国、国王より、改めてお礼を申し上げる所存でございます」
そう言うと、深々と頭をさげた。
しおりを挟む
感想 249

あなたにおすすめの小説

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

公爵令息は妹を選ぶらしいので私は旅に出ます

ネコ
恋愛
公爵令息ラウルの婚約者だったエリンは、なぜかいつも“愛らしい妹”に優先順位を奪われていた。正当な抗議も「ただの嫉妬だろう」と取り合われず、遂に婚約破棄へ。放り出されても涙は出ない。ならば持ち前の治癒魔法を活かして自由に生きよう――そう決めたエリンの旅立ち先で、運命は大きく動き出す。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

本日より他人として生きさせていただきます

ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。

わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。

ふまさ
恋愛
 伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。  けれど。 「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」  他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。

文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。 父王に一番愛される姫。 ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。 優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。 しかし、彼は居なくなった。 聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。 そして、二年後。 レティシアナは、大国の王の妻となっていた。 ※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。 小説家になろうにも投稿しています。 エールありがとうございます!

処理中です...