(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?

水無月あん

文字の大きさ
上 下
45 / 125
番外編

挿話 王太子の受難 6

しおりを挟む
「それで、ブルーノ伯爵夫人とボラージュ伯爵令嬢はどういったご縁なのですか? ボラージュ伯爵といえば、わが国の貴族ではないでしょう?」
と、人畜無害な王太子という、穏やかな雰囲気で、聞いてみた。

一気に、前のめりになったブルーノ伯爵夫人。
話したくて仕方がないんだろう。

ちょうどいい。どんどんしゃべって、どんどんボロをだして!
手間が省けるし、早く終わるし、なにより、ルイスに早く会える!

さあ、洗いざらい、しゃべって!

「ええ、ボラージュ伯爵はロンダ国の方です。あまり交流のない国ですのに、なんと、私が王妃様の親戚ということを噂でお聞きになったそうなんですのよ! 
それで、信頼して、お声をかけていただいたんですわ。ねえ、あなた」
と、ブルーノ伯爵夫人は、ブルーノ伯爵に同意を求めた。

ブルーノ伯爵も大きくうなずいて、
「お会いしてみたら、とても気があいましてな。ボラージュ伯爵の領地でとれるワインを輸出してもらって、うちが売ることにしたんです。まあ、そしたら、これが好評でしてね。ハハッハ」
と、上機嫌で笑っている。

「そんなに美味しいワインなら、一度飲んでみたいもんですねえ。ロンダ国のワインは飲んだことがありませんから。ねえ、ウルス」
と、ウルスにふってみた。

いきなり、ふられて、びくっとしているウルス。

下準備のため、奔走していたウルスは、目の下にクマがある。睡眠不足なんだろう。
こんなつまらない話を聞いてたら、眠ってしまうだろうから、ちょっとはしゃべらないとね?

ぼくって、ほんと、気がきくね。

「…ええ、ブルーノ伯爵がワインを売られているとは、全くしりませんでしたよ。
どこで買えるのですか?」
と、ウルス。

一瞬、目が泳いだブルーノ伯爵。

と、ここで、何故か、ルイスに声をかけた、女が、口をだしてきた。

「実は、うちのワイン、とても人気がありまして、ブルーノ伯爵のところにおろしても、すぐに売れてしまうんですよね。残念ながら、出回ってないのです」
と、おっとりと説明した。

ブルーノ伯爵も、
「そうなんですよ! あっという間に売れてしまいましてね」
と、勢いよく同調した。

「それは残念です。ところで、ボラージュ伯爵令嬢は、ワインの事業にも携わっておられるのですか? 事情をよくご存じなので」
と、ウルスが聞く。

すると、女は、
「いえ、事業のことは、父から少し聞きかじっただけですわ。お恥ずかしいことに、ワインについても詳しくないのです。あまり、アルコールに強くないもので…」
と、奥ゆかしそうに微笑んだ。

が、表情を読むに、…この女、嘘の塊だな。

そんな女が、邪心のない、まっすぐなルイスに話しかけたとは! 
ルイスが穢れるじゃないか! 

やっぱり、この女、兄様は許せない…。
じゃあ、そろそろ、終わらせよう。

「せっかく来ていただいてるのに、もてなすのも忘れて、すっかり、魅力的な御令嬢に魅入られていました」
と、ぼくは、女に微笑みかける。

「まあ、そんな…」
と、嬉しそうに微笑み返してくる女。

言葉とは裏腹に、その表情を代弁すると、「あたりまえでしょ」って、いうところかな?

ぼくは、ウルスのほうを見て、
「あれ、持ってきて」
と言うと、ウルスはうなずいて、席をたった。

「少しお待ちください。お飲み物を持ってくるように、伝えましたので。
ゆっくりなさってくださいね」
と、三人に笑いかける。

すでに、ブルーノ伯爵夫人は、期待で目がぎらついている。
自分のコネで、王太子妃が決まると思って、興奮しているのだろう。

ブルーノ伯爵も、この先に広がる恩恵に思いを馳せているのか、口元がゆるみきっている。

そして、謙虚そうに、微笑みをうかべている女は、全く、目が笑ってない。
獲物を狙う目だ。

あ、そういえば、ぼくも猛禽類だとか、獲物を狙う目をしてるだとか、ルイスに言われたことがあるな。
ええー?! こんなんと一緒にされたら嫌だな。兄様、泣いちゃう。

おっと、つい、ルイスのことへ思考がいってしまうが、集中、集中。

そこへウルスが戻って来た。
トレイに、飲み物をのせ、メイドに任せず、自ら運んできた。

「お待たせしました」
と、言いながら、ウルスが、それぞれの前に飲み物をおいていく。

「あら、これは、ワインですか?」
と、ブルーノ伯爵夫人。

「ええ、あなたたちのワインには到底及ばないでしょうが、最近、人気のあるワインだそうです。
取り寄せましたので、みなさん、どうぞ、飲んでみてください」
と、ぼくが言う。

ブルーノ伯爵夫妻も、女もグラスを手にとった。

そして、ぼくも手にとって、グラスを少し上に掲げると、
「では、今日の良き日に!」
と、声をかけた。

その後に続く、(虫をすっきり!)は、心の中で言う。

そして、ワインを一口飲んだ。
三人も続いて、ワインを飲む。

瞬間、女の顔色が変わった。
あとの、バカ二人、いや、伯爵夫妻は普通に飲んでいる。

へええ、なるほどね…。

しおりを挟む
感想 249

あなたにおすすめの小説

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

公爵令息は妹を選ぶらしいので私は旅に出ます

ネコ
恋愛
公爵令息ラウルの婚約者だったエリンは、なぜかいつも“愛らしい妹”に優先順位を奪われていた。正当な抗議も「ただの嫉妬だろう」と取り合われず、遂に婚約破棄へ。放り出されても涙は出ない。ならば持ち前の治癒魔法を活かして自由に生きよう――そう決めたエリンの旅立ち先で、運命は大きく動き出す。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

本日より他人として生きさせていただきます

ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。

わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。

ふまさ
恋愛
 伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。  けれど。 「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」  他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。

文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。 父王に一番愛される姫。 ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。 優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。 しかし、彼は居なくなった。 聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。 そして、二年後。 レティシアナは、大国の王の妻となっていた。 ※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。 小説家になろうにも投稿しています。 エールありがとうございます!

処理中です...