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番外編

俺は出会った 13

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今日は、マークの家、つまり公爵家の屋敷に初めてやって来た。

マークに、アリスの好みの食材を探ってもらったお礼に、学園の課題を俺が教えることになったからだ。

出迎えてくれたマークが、俺を見て言った。
「期待しているところ悪いけど、アリスは今いないよ」

「そんなこと思ってない…」
と、俺が言うと、

「顔は動いてないけど、目がすごいきょろきょろしてる。アリスを探してるんだろ?」
と、マークがにやりと笑った。

「いや、会ったらまずいと思って…。ほら、婚約した時、月一回だけ、お茶会で会う約束だったから。
他の日にも会うと、ルール違反だろ」
俺がそう言ったら、マークがあきれた顔をした。

「はあ? 本当に、ルイスは変に真面目で、不器用というか…。
まあ、いいや。俺の部屋に案内するから、ついてきて」
そう言って、廊下をズンズンと歩きはじめた。

一緒に歩いていると、突然、目にとびこんでくるものがあった。

「あれはなんだ?!」
つい、大きな声をあげてしまった。

マークがたちどまって、
「どうした? ルイス」
と、聞いてくる。

俺は、廊下の壁を指さした。
かわいらしい花の絵が飾ってある。

「なんともいえないオーラを感じる! もしや、これは、アリスがかいたのか?!」

マークが、驚いた顔で、俺を見た。そして、言った。
「…確かに、これは、アリスが描いたものだ。アリスは絵を習ってるからな。
でも、他にも、沢山、廊下に絵がかけてあるのに、アリスの絵に、即座に、ピンポイントで反応するって…。
アリスのセンサーがすごすぎて、こわいんだけど…」

そんなことはどうでもいい。
それより、アリスは、絵の天才だったんだな。
この前、プレゼントに俺のかいた絵を渡さなくてよかった。

が、この絵が欲しい…。

「なあ、この絵、売ってくれないか?」

「はああ?! いやいや、おかしいだろ?! 素人の絵だぞ」

「いや、こんな素晴らしい絵を俺は見たことがない」

マークは、大きなため息をついた。

「ルイス、冷静になれ。アリスフィルターがかかったら、なんでも良く見えるんだな。アリスは絵を習ってはいるが、絵の腕前は、まあ普通だ。…というか、あまり上手くない。
それに、どっちにしても、この絵は、アリスが父にプレゼントした絵だ。父は喜んで、こんな目立つところに飾ってる。まあ、手放すことは絶対ない。
ほら、行くぞ」
と、マークにうながされ、しぶしぶ俺は歩き出した。

結婚したら、俺も、絵をいっぱい描いてもらおう!
そして、屋敷中に飾るんだ!

俺に新たな夢ができた。

そんなことを考えていると、マークの部屋についた。

想像した通り、石だらけだった。
しかも、部屋中、いたるところに石がおいてあって、まるで野外のような雰囲気だ。

「俺の集めてきた石だ! どうだ?」
と、マークが期待に目を輝かせて聞いてきた。

「すごいな、(量が…)」
と、答えてみる。

すると、マークが、
「ルイスにも特別に、ひとつわけてあげようか?」
と言ってきた。

「いや、遠慮する」
と、即答した。正直、石には微塵も興味がない。

「そうか? ルイスには、この石がいいかと思ったんだが」
と言って、ごく普通の石を俺に見せた。

「この石はな、河原で、アリスの誕生日にあげた石の隣にあった石なんだ。対になってるように思えたから、一緒に持って帰って来た。なんか、夫婦みたい雰囲気をだしている石だから、ルイスにあげようと思ったけど、まあ、いらないならいいか」

「もらう! いただく! くれ!」
俺は連呼する。

「すごい変わり身だな。まあ、大事にしろ」
と、言って、俺に石を渡してくれた。

「わかった。最上級のクッションに置いておこう」

「いや、そうじゃない。石を、触ったり、眺めたり、時にはなしかけたりして、愛でてくれ。そうすれば、石も喜ぶ」

「わかった。そうしていたら、アリスと仲良くなれるだろうか?」

「それは、自分次第だな。石に頼るな!」
と、マークが厳しく言った。

「つまり、願い事が叶うとかではないのか?」

「いや、もしかしたら、応援してくれるかもしれない。でも、石の気持ち次第だ。頼ってはいけない」
と、マークが真剣な顔で言った。

本当に、マークは、石に関してだけは驚くほど繊細だな。
他はおおざっぱなのに…。










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