37 / 125
番外編
俺は出会った 12
しおりを挟む
※ ルイス視点に戻りました。
今日はアリスとのお茶会だった。
1か月、あんなに待ちかねたのに、今回も、はじまったら、あっという間に終わってしまった…。
でも、俺が作った新作のレモンケーキ。口にいれたとたん、顔がゆるんだのを俺は見た。
気に入ってくれたんだと思う。それだけで、俺は満足だ。
今回も、ほとんど、しゃべることはできなかったけど、お菓子を食べるかわいい姿を堪能できた。
泣かすこともなかったし…。
全身全霊でのぞんだお茶会の後、心地よい脱力感で、ふらふらしながら廊下を歩いていると、
「見たぞー!」
と、横の部屋から、何かが飛びだしてきた。
げっ。母上だ。
「なあ、ルイス。話がある。ちょっと、お茶しないか?」
「今、したところだ。いらない」
と言うと、
「あいかわらず、そっけない奴だな。久しぶりのお母さまとの再会だぞ。お茶ぐらい何杯でもつきあえ!」
と言うやいなや、ぐいっと、襟首をもたれ、部屋に連れて行かれた。
本当に、昔から、すごい馬鹿力だ…。
部屋に入ると椅子にすわらされた。前に、母上が座った。
前のめりすぎて、圧がすごい。
アリスとのお茶会の後に会いたくなかった。
アリスとの余韻にひたっていたいのに、圧がすごすぎて、余韻が消えてしまうじゃないか!
はあと、ため息をつき、
「それで、なんの用?」
と聞くと、母上が、不敵な笑みをうかべた。
絶対、ろくなことを考えてない。
「いいことを思いついた。ルイスを辺境伯の後継者にすることにした。喜べ、ルイス!」
「断る」
俺は即答した。
「なんでだ?」
母上が、更に前のめりになってきた。近い! 離れろ!
「あんなところに、行きたくないから」
「なぜだ? いいところだぞ。自然だらけで」
「ダメだ。あそこは寒すぎる。アリスには耐えられない」
そこで、母上が、にやりとした。
ぞわっとする。なんだ?!
「今日、ルイスとアリスの茶会を見たぞ! アリスは、かわいいな。私は気に入った」
まあ、アリスがかわいいことは、間違いないが…。
「ということで、アリスには、辺境伯婦人となってもらう。あんな小動物、…いや、辺境伯婦人がいたら、癒されるだろ? もし、ルイスが辺境伯になりたくないなら、アリスだけでもいい。アリスに似合う、辺境伯を見つけるから。心置きなく、婚約を解消してくれ」
「はあああ?! するわけないだろ?! ふざけるな!」
俺は声を荒げた。
が、母上は、真顔で、俺の顔を見ていたかと思ったら、ハハハと豪快に笑った。
「ルイスは、怒っても無表情なんだな! おもしろい!
その動かない表情筋、辺境伯にむいてるぞ。隣国との交渉の際、その無表情なら、心を読まれることもない。使える!」
「だから、断る。あの土地は、アリスには無理だ」
すると、母上は、
「大丈夫だ。私はこう見えて、幼い頃から、森の中で小動物を沢山みてきた。徐々に寒さになれるよう、私が鍛えていく」
と、胸をはった。
話が、どんどんおかしくなってきた。
「あのな、アリスは小動物ではない。妖精だ!」
そう言ったとたんに、母上がふきだした。
「妖精だと?! ルイスもまだまだ子どもだな。アリスは、間違いなく小動物だ。頬をふくらませ、菓子をほおばってる姿。見たか? 一生懸命食べている姿の、いじらしいこと。なんて、かわいらしい生きものなんだ!
ということで、絶対、嫁にもらう。相手はルイスでなくてもいい。
あ、そうだ。あの、ルイスと名前の似た…あ、ウルス。あれでもいいんじゃないか?!
今から鍛えれば、辺境伯としてやれるだろう。あの、面倒なフィリップに仕えてるぐらいだからな」
ウルスだと?! 冗談でも、アリスの相手として他の男の名前をあげるなんて、許せない!
俺は、母上をにらみつけた。
「あ、それくらいの殺気、なんともないから、出しても無駄だ」
と、軽くあしらわれた。
くそっ…。
「ルイスも、まだまだな。茶会の様子を見たが、アリスとの距離も、はるか遠そうだったしな。
どうだ、辺境伯をついでくれたら、この頼りになるお母さまが、アリスの心をつかめるよう、全面的に後押しするが? どうする?」
と、母上は鋭い目で、俺を見据えた。
どう見ても、母親が子どもを心配している目ではない。
幾多の戦いをくぐってきた騎士が、交渉しようとしている目だ。
だれが、のるか!
「結構だ。自分でなんとかする」
母上は、
「わかった。うかうかしていると、アリスをさっさと辺境につれていくからな。まあ、せいぜい頑張れ!」
そう言うと、にやりと笑った。
アリスも、面倒な人に目をつけられたな。でも、大丈夫。俺がアリスを守る。
今日はアリスとのお茶会だった。
1か月、あんなに待ちかねたのに、今回も、はじまったら、あっという間に終わってしまった…。
でも、俺が作った新作のレモンケーキ。口にいれたとたん、顔がゆるんだのを俺は見た。
気に入ってくれたんだと思う。それだけで、俺は満足だ。
今回も、ほとんど、しゃべることはできなかったけど、お菓子を食べるかわいい姿を堪能できた。
泣かすこともなかったし…。
全身全霊でのぞんだお茶会の後、心地よい脱力感で、ふらふらしながら廊下を歩いていると、
「見たぞー!」
と、横の部屋から、何かが飛びだしてきた。
げっ。母上だ。
「なあ、ルイス。話がある。ちょっと、お茶しないか?」
「今、したところだ。いらない」
と言うと、
「あいかわらず、そっけない奴だな。久しぶりのお母さまとの再会だぞ。お茶ぐらい何杯でもつきあえ!」
と言うやいなや、ぐいっと、襟首をもたれ、部屋に連れて行かれた。
本当に、昔から、すごい馬鹿力だ…。
部屋に入ると椅子にすわらされた。前に、母上が座った。
前のめりすぎて、圧がすごい。
アリスとのお茶会の後に会いたくなかった。
アリスとの余韻にひたっていたいのに、圧がすごすぎて、余韻が消えてしまうじゃないか!
はあと、ため息をつき、
「それで、なんの用?」
と聞くと、母上が、不敵な笑みをうかべた。
絶対、ろくなことを考えてない。
「いいことを思いついた。ルイスを辺境伯の後継者にすることにした。喜べ、ルイス!」
「断る」
俺は即答した。
「なんでだ?」
母上が、更に前のめりになってきた。近い! 離れろ!
「あんなところに、行きたくないから」
「なぜだ? いいところだぞ。自然だらけで」
「ダメだ。あそこは寒すぎる。アリスには耐えられない」
そこで、母上が、にやりとした。
ぞわっとする。なんだ?!
「今日、ルイスとアリスの茶会を見たぞ! アリスは、かわいいな。私は気に入った」
まあ、アリスがかわいいことは、間違いないが…。
「ということで、アリスには、辺境伯婦人となってもらう。あんな小動物、…いや、辺境伯婦人がいたら、癒されるだろ? もし、ルイスが辺境伯になりたくないなら、アリスだけでもいい。アリスに似合う、辺境伯を見つけるから。心置きなく、婚約を解消してくれ」
「はあああ?! するわけないだろ?! ふざけるな!」
俺は声を荒げた。
が、母上は、真顔で、俺の顔を見ていたかと思ったら、ハハハと豪快に笑った。
「ルイスは、怒っても無表情なんだな! おもしろい!
その動かない表情筋、辺境伯にむいてるぞ。隣国との交渉の際、その無表情なら、心を読まれることもない。使える!」
「だから、断る。あの土地は、アリスには無理だ」
すると、母上は、
「大丈夫だ。私はこう見えて、幼い頃から、森の中で小動物を沢山みてきた。徐々に寒さになれるよう、私が鍛えていく」
と、胸をはった。
話が、どんどんおかしくなってきた。
「あのな、アリスは小動物ではない。妖精だ!」
そう言ったとたんに、母上がふきだした。
「妖精だと?! ルイスもまだまだ子どもだな。アリスは、間違いなく小動物だ。頬をふくらませ、菓子をほおばってる姿。見たか? 一生懸命食べている姿の、いじらしいこと。なんて、かわいらしい生きものなんだ!
ということで、絶対、嫁にもらう。相手はルイスでなくてもいい。
あ、そうだ。あの、ルイスと名前の似た…あ、ウルス。あれでもいいんじゃないか?!
今から鍛えれば、辺境伯としてやれるだろう。あの、面倒なフィリップに仕えてるぐらいだからな」
ウルスだと?! 冗談でも、アリスの相手として他の男の名前をあげるなんて、許せない!
俺は、母上をにらみつけた。
「あ、それくらいの殺気、なんともないから、出しても無駄だ」
と、軽くあしらわれた。
くそっ…。
「ルイスも、まだまだな。茶会の様子を見たが、アリスとの距離も、はるか遠そうだったしな。
どうだ、辺境伯をついでくれたら、この頼りになるお母さまが、アリスの心をつかめるよう、全面的に後押しするが? どうする?」
と、母上は鋭い目で、俺を見据えた。
どう見ても、母親が子どもを心配している目ではない。
幾多の戦いをくぐってきた騎士が、交渉しようとしている目だ。
だれが、のるか!
「結構だ。自分でなんとかする」
母上は、
「わかった。うかうかしていると、アリスをさっさと辺境につれていくからな。まあ、せいぜい頑張れ!」
そう言うと、にやりと笑った。
アリスも、面倒な人に目をつけられたな。でも、大丈夫。俺がアリスを守る。
81
お気に入りに追加
1,778
あなたにおすすめの小説

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。
アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。
いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。
だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・
「いつわたしが婚約破棄すると言った?」
私に飽きたんじゃなかったんですか!?
……………………………
たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

公爵令息は妹を選ぶらしいので私は旅に出ます
ネコ
恋愛
公爵令息ラウルの婚約者だったエリンは、なぜかいつも“愛らしい妹”に優先順位を奪われていた。正当な抗議も「ただの嫉妬だろう」と取り合われず、遂に婚約破棄へ。放り出されても涙は出ない。ならば持ち前の治癒魔法を活かして自由に生きよう――そう決めたエリンの旅立ち先で、運命は大きく動き出す。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

本日より他人として生きさせていただきます
ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。

わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。
ふまさ
恋愛
伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。
けれど。
「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」
他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる