(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?

水無月あん

文字の大きさ
上 下
30 / 125
番外編

俺は出会った 6

しおりを挟む
※ 今回もルイス視点です。


ついに、明日、アリスとのお茶会だ。
菓子の仕込みもとりあえず、終わった。あとは、当日、焼いたり、仕上げたりするのみだ。

本当は、アリスとのお茶会の前日である金曜日は、お茶会の準備以外は、心身ともに整えるべく静かに過ごすようにしている。

が、今日は、モリー二国から王と王女が午後にやってくることになった。
できることならば、俺だけ外してもらいたいが、王子なので仕方がない。
明日は、兄上に任せることにしてるし、嫌だけど、今日はつきあわないとな。

ということで、父上と兄上と俺で待っていると、モリー二国の一団が到着した。

先頭にいる恰幅のいい男性が王だろう。その横に、王女らしき人物がいた。

まず、父上が、
「ようこそいらっしゃった。歓迎しますぞ」
と、共通語で言った。

モリー二国は隣国であっても、言語は全然違う。
そのため、父上は、大陸全土で使われている共通語で話したようだ。
我が国でも、ほぼ全国民が共通語も話せるぐらい、古くから大陸中に浸透している言語だ。

モリー二国の王も、
「急な訪問なのに、歓迎してくださって感謝します」
と、共通語で答えた。

そして、隣の王女を見ながら、
「娘のマレイラです。他国を見るのも、今後のためになるかと、連れてきました。ほら、挨拶しなさい」
王が促すと、王女が、つつっと前にでた。

背は高く、金色の髪をぐるぐると巻いている。真っ赤なドレスも派手な印象だ。

アリスは、絶対着ないドレスだな。
アリスは、明日は何を着てくるんだろう。楽しみだ。
先月は、うすい水色のドレスを着てたが、まさに妖精だった。
まあ、アリスは、何を着ても似合うし、何を着ても妖精だけどな。

…と、気が付けば、アリスのことばかり考えていて、王女の挨拶は聞いてないうちに終わっていた。

そこで、兄上が、
「王太子のフィリップです。モリーニ国の王様、王女様、わが国へようこそ」
そう挨拶して、軽く礼をした。

俺も
「第二王子のルイスです。ようこそおいでくださいました」
と、簡単に挨拶をする。

と、王女が俺の前にぐいっと寄って来た。
近づきすぎだろ。一体、なんの用だ?

「ルイス殿下。私と同じ年だとお聞きし、お話しできるのを楽しみにしておりました。仲良くしてくださいね」
そう言って、上目遣いに、笑いかけてきた。
自信に満ち溢れた顔。
そして、笑ってる目がどろりとして見える。苦手な目だ。

アリスの目は、澄んでいて、きれいなのにな…。
早く、アリスを見たい。会いたい。目にやきつけたい…。

意識をアリスへ飛ばしていると、
「私、お父様が国王様とお話している間、ルイス殿下に、このお城を案内してほしいですわ!」
と、王女が言い出した。

はあ?! 突然、何を言い出すんだ?!

思わず、王女をにらむと、王女は顔を赤く染め、目をさらにドロリとさせた。

「マレイラは、ルイス殿下が一目で気に入ったようだ。ハッハッハ」
と笑っているモリーニ国の王。

「そうですかな? ハハハ」
父上は、面倒なことになったと言わんばかりの顔で、愛想笑いをしている。

兄上は、俺の耳元で、
「大丈夫だ、ルイス。おまえは苦手なタイプだろ。王女は兄様に任せろ。ルイスに案内させるなど、図々しいにもほどがある」
と、自国の言葉で、それも、ものすごい早口で、小声でささやいたかと思うと、王女の前にさっと歩み出た。

「城については、ぼくのほうが詳しいので、事細かく説明しながら、ご案内いたしましょう」
兄上は、そう王女に言うと、にっこり笑いかけた。

悪いな、兄上。よろしく頼む。
心の中で、兄上に感謝していると、

「いえ、そこまで詳しく知らなくても結構ですから。それに、同じ年のルイス殿下のほうが気軽にお話できそうなので、ルイス殿下にお願いしたいですわ」
と、王女。

おい、それは、やめてくれ! 
そして、兄上をおこらすのもやめてくれ!

というか、もう、遅いな。
兄上の目が笑ってない。すでに、戦闘モードに入ったってことか。

自分で言うのもなんだが、兄上は、俺が嫌がるのに、俺に近づく人間を敵とみなす習性がある。
というのも、幼少のころから、無表情であっても、俺の容姿にひかれた危ない人間が、何度も俺に近づこうとしたしたからだ。

兄上は、穏やかな笑みを浮かべて、王女に言った。
「とんでもない。せっかく王女においでいただいたのに、ルイスのつたない説明では失礼にあたります。ぼくが、しっかりと、懇切丁寧に、この城を説明していきますよ。特に、地下牢とか歴史があっておすすめです」

父上は、眉間にしわを寄せ、「やめろ」と、目で圧をかけている。

が、兄上は、にっこり笑って、
「では、ぼくが、丁寧に、王女様にこの城を案内してきます。父上は、モリー二国の王様とごゆっくりご歓談を。ルイスは明日の準備をしてきていいぞ」
と、言った。

それはありがたい。
お礼に、兄上の分のアップルパイも焼いておくことにしよう。


しおりを挟む
感想 249

あなたにおすすめの小説

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

公爵令息は妹を選ぶらしいので私は旅に出ます

ネコ
恋愛
公爵令息ラウルの婚約者だったエリンは、なぜかいつも“愛らしい妹”に優先順位を奪われていた。正当な抗議も「ただの嫉妬だろう」と取り合われず、遂に婚約破棄へ。放り出されても涙は出ない。ならば持ち前の治癒魔法を活かして自由に生きよう――そう決めたエリンの旅立ち先で、運命は大きく動き出す。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

本日より他人として生きさせていただきます

ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。

わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。

ふまさ
恋愛
 伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。  けれど。 「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」  他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。

文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。 父王に一番愛される姫。 ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。 優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。 しかし、彼は居なくなった。 聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。 そして、二年後。 レティシアナは、大国の王の妻となっていた。 ※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。 小説家になろうにも投稿しています。 エールありがとうございます!

処理中です...