28 / 122
番外編
俺は出会った 4
しおりを挟む
※ 今回もルイス視点になります。
半年ぶりに会ったアリスは、
「きょうは、おまねきいただき、ありがとうございます」
と、警戒した顔で、俺に挨拶をしてきた。
前回のような、無邪気な笑顔は見られない。
もちろん、笑顔が見られないのはさみしいが、すべては不用意な言葉を言った俺のせい。
また会えただけでも、俺は幸せだ。
それに、どんな表情であれ、アリスのはちみつ色の瞳は、やはり、澄みきって、とてもきれいだ。
思わず、すいこまれそうで見入ってしまう。
そして、半年ぶりに会っても、アリスは小さいままだった。
すごく小さくて、とんでもなく、かわいい…。
やっぱり、アリスは、俺の妖精だ。
アリスの大きな目が、じっと俺を見ている。
心臓の音が聞こえてきそうなほど、警戒しているのが、手にとるように伝わってくる。
大丈夫だ、アリス。
今度は、「ちび」だとは口が裂けても言わないからな。
前回は、俺の無知で傷つけて、すまなかった。
今日は、選びに選んだ最低限の言葉しか発しないように、気をつける。
だから、頼む。泣かないでくれ。
俺は、祈るような気持ちで、精一杯の心をこめて言った。
「小さいな」
そして、かわいいな、と、心の中で、しっかりと付け加える。
今回も、恥ずかしくて、やっぱり口にはだせなかった。
アリスのはちみつ色の瞳が大きく揺れた。
え?! まさか、泣かないよな?!
驚いた顔をしているが、アリスは泣かなかった。
この言葉は大丈夫だった。「小さくて、かわいい」という、俺の気持ちが伝わったんだな。
まずは、良かった…。
俺が椅子に座ると、テーブルをはさんで、アリスも向かい側に座った。
メイドが、手早く、お茶を淹れた。
俺が用意した茶葉だ。念のため、まずは、ひとくち飲んでみる。
よし、大丈夫だ。
さあ、アリス、飲んでくれ!
俺がアリスのために、選びに選んだ茶葉だ!
が、これをアリスに伝えるのは、押しつけがましいだろうと思い、だまっておく。
俺の無言の圧が通じたのか、アリスがカップをとって、一口のんだ。
ほんの少し、口角があがった。
ほほえんでる!!
よし、この茶葉は気に入ったんだな!
ひとまず、良かった。
が、アリスは、だまってお茶を飲んではいるが、菓子には手を伸ばさない。
どうしたんだ?
アリス好みの路線をねらった菓子ばかりだぞ!
それに、アリスは小さい。とてつもなく、かわいいけれど、風がふいたらとんでいってしまいそうだ。
大きな音で、壊れてしまいそうだ。
心配だ…。
アリス、食べてくれ!
あ、もしかして、テーブルいっぱいに菓子をおいたから、どれがいいか選べないのか?!
全て、俺がえらんできた菓子だから、材料、作り方、由来、栄養など、事細かく説明できるよう頭に入れてある。
が、聞かれてもいないのに説明するのは、嫌がられるかもしれない。
なにより、口数が増えると、また失言をして、泣かせてしまうかもしれない。
さあ、どうするか…。
あ、ひらめいた!
俺のおすすめを、教えればいい。
うっかり油断して、変な言葉を言うな、俺!
そして、俺は、まずはじめに、アリスが好きだというイチゴを使ったお菓子を指差し、
「これを食べろ」
そう言った。
最小限の言葉で、おすすめを教えたが、どうだ?
アリスが、とまどった目をして俺を見たが、手をのばし、そのイチゴの菓子の皿をとった。
そして、食べた!
全部食べてくれた! 良かった!
よし、この作戦でいこう。
次は、さっきの菓子とは、まるでちがうケーキを指差した。
そして、言った。
「次はこれを食べろ」
アリスは、目を見開いて、俺を見たが、だまって、そのケーキ皿をとった。
そして、食べた!
それにしても、一生懸命、菓子を食べているアリス。なんてかわいいんだ!
見てるだけで癒される。
もっと食べさせたい!
食べてるところを見ていたい!
そうだ、次は、俺が菓子を作ろう。
俺が作った菓子を食べるアリス。想像しただけで、幸せな気分だ。
次のお茶会まで一か月。俺は菓子作りをがんばることにしよう。
半年ぶりに会ったアリスは、
「きょうは、おまねきいただき、ありがとうございます」
と、警戒した顔で、俺に挨拶をしてきた。
前回のような、無邪気な笑顔は見られない。
もちろん、笑顔が見られないのはさみしいが、すべては不用意な言葉を言った俺のせい。
また会えただけでも、俺は幸せだ。
それに、どんな表情であれ、アリスのはちみつ色の瞳は、やはり、澄みきって、とてもきれいだ。
思わず、すいこまれそうで見入ってしまう。
そして、半年ぶりに会っても、アリスは小さいままだった。
すごく小さくて、とんでもなく、かわいい…。
やっぱり、アリスは、俺の妖精だ。
アリスの大きな目が、じっと俺を見ている。
心臓の音が聞こえてきそうなほど、警戒しているのが、手にとるように伝わってくる。
大丈夫だ、アリス。
今度は、「ちび」だとは口が裂けても言わないからな。
前回は、俺の無知で傷つけて、すまなかった。
今日は、選びに選んだ最低限の言葉しか発しないように、気をつける。
だから、頼む。泣かないでくれ。
俺は、祈るような気持ちで、精一杯の心をこめて言った。
「小さいな」
そして、かわいいな、と、心の中で、しっかりと付け加える。
今回も、恥ずかしくて、やっぱり口にはだせなかった。
アリスのはちみつ色の瞳が大きく揺れた。
え?! まさか、泣かないよな?!
驚いた顔をしているが、アリスは泣かなかった。
この言葉は大丈夫だった。「小さくて、かわいい」という、俺の気持ちが伝わったんだな。
まずは、良かった…。
俺が椅子に座ると、テーブルをはさんで、アリスも向かい側に座った。
メイドが、手早く、お茶を淹れた。
俺が用意した茶葉だ。念のため、まずは、ひとくち飲んでみる。
よし、大丈夫だ。
さあ、アリス、飲んでくれ!
俺がアリスのために、選びに選んだ茶葉だ!
が、これをアリスに伝えるのは、押しつけがましいだろうと思い、だまっておく。
俺の無言の圧が通じたのか、アリスがカップをとって、一口のんだ。
ほんの少し、口角があがった。
ほほえんでる!!
よし、この茶葉は気に入ったんだな!
ひとまず、良かった。
が、アリスは、だまってお茶を飲んではいるが、菓子には手を伸ばさない。
どうしたんだ?
アリス好みの路線をねらった菓子ばかりだぞ!
それに、アリスは小さい。とてつもなく、かわいいけれど、風がふいたらとんでいってしまいそうだ。
大きな音で、壊れてしまいそうだ。
心配だ…。
アリス、食べてくれ!
あ、もしかして、テーブルいっぱいに菓子をおいたから、どれがいいか選べないのか?!
全て、俺がえらんできた菓子だから、材料、作り方、由来、栄養など、事細かく説明できるよう頭に入れてある。
が、聞かれてもいないのに説明するのは、嫌がられるかもしれない。
なにより、口数が増えると、また失言をして、泣かせてしまうかもしれない。
さあ、どうするか…。
あ、ひらめいた!
俺のおすすめを、教えればいい。
うっかり油断して、変な言葉を言うな、俺!
そして、俺は、まずはじめに、アリスが好きだというイチゴを使ったお菓子を指差し、
「これを食べろ」
そう言った。
最小限の言葉で、おすすめを教えたが、どうだ?
アリスが、とまどった目をして俺を見たが、手をのばし、そのイチゴの菓子の皿をとった。
そして、食べた!
全部食べてくれた! 良かった!
よし、この作戦でいこう。
次は、さっきの菓子とは、まるでちがうケーキを指差した。
そして、言った。
「次はこれを食べろ」
アリスは、目を見開いて、俺を見たが、だまって、そのケーキ皿をとった。
そして、食べた!
それにしても、一生懸命、菓子を食べているアリス。なんてかわいいんだ!
見てるだけで癒される。
もっと食べさせたい!
食べてるところを見ていたい!
そうだ、次は、俺が菓子を作ろう。
俺が作った菓子を食べるアリス。想像しただけで、幸せな気分だ。
次のお茶会まで一か月。俺は菓子作りをがんばることにしよう。
60
お気に入りに追加
1,725
あなたにおすすめの小説
婚約者は私を愛していると言いますが、別の女のところに足しげく通うので、私は本当の愛を探します
早乙女 純
恋愛
私の婚約者であるアルベルトは、私に愛しているといつも言いますが、私以外の女の元に足しげく通います。そんな男なんて信用出来るはずもないので婚約を破棄して、私は新しいヒトを探します。
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
姉の身代わりで冷酷な若公爵様に嫁ぐことになりましたが、初夜にも来ない彼なのに「このままでは妻に嫌われる……」と私に語りかけてきます。
夏
恋愛
姉の身代わりとして冷酷な獣と蔑称される公爵に嫁いだラシェル。
初夜には顔を出さず、干渉は必要ないと公爵に言われてしまうが、ある晩の日「姿を変えた」ラシェルはばったり酔った彼に遭遇する。
「このままでは、妻に嫌われる……」
本人、目の前にいますけど!?
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
恋人でいる意味が分からないので幼馴染に戻ろうとしたら‥‥
矢野りと
恋愛
婚約者も恋人もいない私を憐れんで、なぜか幼馴染の騎士が恋人のふりをしてくれることになった。
でも恋人のふりをして貰ってから、私を取り巻く状況は悪くなった気がする…。
周りからは『釣り合っていない』と言われるし、彼は私を庇うこともしてくれない。
――あれっ?
私って恋人でいる意味あるかしら…。
*設定はゆるいです。
婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。
アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。
いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。
だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・
「いつわたしが婚約破棄すると言った?」
私に飽きたんじゃなかったんですか!?
……………………………
6月8日、HOTランキング1位にランクインしました。たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!
じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが
カレイ
恋愛
天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。
両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。
でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。
「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」
そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。
婚約者に好きな人ができたらしい(※ただし事実とは異なります)
彗星
恋愛
主人公ミアと、婚約者リアムとのすれ違いもの。学園の人気者であるリアムを、婚約者を持つミアは、公爵家のご令嬢であるマリーナに「彼は私のことが好きだ」と言われる。その言葉が引っかかったことで、リアムと婚約解消した方がいいのではないかと考え始める。しかし、リアムの気持ちは、ミアが考えることとは違うらしく…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる