15 / 125
番外編
我が息子、ルイス 1
しおりを挟む
※ ルイスの父、国王視点です。
「父上、王子をやめさせてください」
話があると言ってやってきたルイスの衝撃の一言がこれだ。
は?! 王子をやめる?
ああ、そうか。これは、もしや、ルイス流の冗談なのか?
顔をじっくり見た。
が、我が息子ながら、真意はつかめない。
そう、ルイスは、幼い頃より、極めて無表情だからだ。
が、いくらなんでも、冗談だよな、ということにして…、
「ルイスでも、冗談を言うんだな。ハハハ」
と、私は笑った。
が、ぴくりとも動かぬ無表情のまま、
「冗談ではありません。王子をやめさせてください」
と、強い口調で言った。
「本気で言ってるのか?! いきなり、どうした? なにかあったのか?!」
「アリスが王子妃になるのが嫌だと言ったからです」
聞いた瞬間、私は大きなため息をついた。
ルイスが、婚約者であるアリス嬢の名前を出したということは、その意思は固い。
はあ、面倒なことになった…。
我が息子、第二王子のルイスは、幼い頃より、何をやらしても優秀だった。
が、なんでもできるが故か、何も興味がないように見えた。
家庭教師たちは、こぞって天才だと騒ぎ立てたが、当の本人は、冷めた目で見ていた。
その上、ぬきんでた美貌。
しかし、その顔は、いつも表情がなかった。
あまりに表情がないので、陰で人形王子と呼ばれていたらしい。
そんな、ルイスが12歳のころ。
すごい勢いで私のもとにやってきたことがあった。
走ってきたのか、汗をいっぱいかいている。
頬は紅潮し、無表情ながらも、ただごとではない感じが伝わってきた。
「どうした、ルイス?! 何かあったのか?!」
私は、あわててかけよった。
すると、ルイスは強く真剣なまなざしで、私を見て、
「アリスと婚約させてください!」
と、大きな声で言ったのだ。
ルイスが、こんなに大きな声をだしたのも、私に頼みごとをしたのも、この時が初めてだった。
「アリスとは誰だ?」
私が聞くと、
「公爵令嬢です。今日、会いました」
ああ、ヴァルド家の令嬢か。
家柄も申し分なく、なにより、信用のおける宰相であり、友人でもあるジュリアンの娘だからな。
婚約者候補の筆頭として、会わせてくれるよう、頼んでいたんだった。
「ということは、二人は仲良くなったんだな?」
すると、ルイスは黙った。
と思ったら、大きな目から、大粒の涙がぽろぽろこぼれだした。
え?! 泣いてるのか?! ルイスが?!
「いきなり、どうした、ルイス?」
顔は無表情のまま、大粒の涙をながすルイス。
「アリスを泣かせました」
仲良くなったのではないのか?
「何をして、泣かせた?」
「ちびだな、って言いました。ちびで、かわいかったから」
「ちびはダメだな。失礼だろ。つまり、ルイスは、小さくてかわいいと思ったのか?」
ルイスはうなずいた。
「だったら、今度会った時、思ったとおり言えばいい。小さくてかわいいとな」
また、ルイスは、大きくうなずいた。
よくよく見ると、無表情ながら、いつもとは違う。わずかに、落ち込んでいるように見える。
無表情が、少し動いたのか?!
よし、私にまかせとけ、ルイス! おまえの初めての頼みだ。この父が、叶えてみせよう!
とういうことで、私はがんばった。
すぐに、アリス嬢の父、ジュリアンと話をした。
が、娘を溺愛するジュリアンは、怒り心頭。もともと、娘を王子の婚約者にするのも乗り気ではなかったのに、ルイスが大泣きさせたからだ。
が、私もルイスに初めて頼まれたのだ。ここはひけない!
その後は、ジュリアンに何度も頼み込んで、最後は手段を選ばず、王命を使って、なんとか婚約をとりつけた。
また泣かせた時は、即刻、婚約を解消することを条件につけられたが。
そして、それを報告した時、ルイスは、ほんのわずか微笑んだように見えた。
「父上、王子をやめさせてください」
話があると言ってやってきたルイスの衝撃の一言がこれだ。
は?! 王子をやめる?
ああ、そうか。これは、もしや、ルイス流の冗談なのか?
顔をじっくり見た。
が、我が息子ながら、真意はつかめない。
そう、ルイスは、幼い頃より、極めて無表情だからだ。
が、いくらなんでも、冗談だよな、ということにして…、
「ルイスでも、冗談を言うんだな。ハハハ」
と、私は笑った。
が、ぴくりとも動かぬ無表情のまま、
「冗談ではありません。王子をやめさせてください」
と、強い口調で言った。
「本気で言ってるのか?! いきなり、どうした? なにかあったのか?!」
「アリスが王子妃になるのが嫌だと言ったからです」
聞いた瞬間、私は大きなため息をついた。
ルイスが、婚約者であるアリス嬢の名前を出したということは、その意思は固い。
はあ、面倒なことになった…。
我が息子、第二王子のルイスは、幼い頃より、何をやらしても優秀だった。
が、なんでもできるが故か、何も興味がないように見えた。
家庭教師たちは、こぞって天才だと騒ぎ立てたが、当の本人は、冷めた目で見ていた。
その上、ぬきんでた美貌。
しかし、その顔は、いつも表情がなかった。
あまりに表情がないので、陰で人形王子と呼ばれていたらしい。
そんな、ルイスが12歳のころ。
すごい勢いで私のもとにやってきたことがあった。
走ってきたのか、汗をいっぱいかいている。
頬は紅潮し、無表情ながらも、ただごとではない感じが伝わってきた。
「どうした、ルイス?! 何かあったのか?!」
私は、あわててかけよった。
すると、ルイスは強く真剣なまなざしで、私を見て、
「アリスと婚約させてください!」
と、大きな声で言ったのだ。
ルイスが、こんなに大きな声をだしたのも、私に頼みごとをしたのも、この時が初めてだった。
「アリスとは誰だ?」
私が聞くと、
「公爵令嬢です。今日、会いました」
ああ、ヴァルド家の令嬢か。
家柄も申し分なく、なにより、信用のおける宰相であり、友人でもあるジュリアンの娘だからな。
婚約者候補の筆頭として、会わせてくれるよう、頼んでいたんだった。
「ということは、二人は仲良くなったんだな?」
すると、ルイスは黙った。
と思ったら、大きな目から、大粒の涙がぽろぽろこぼれだした。
え?! 泣いてるのか?! ルイスが?!
「いきなり、どうした、ルイス?」
顔は無表情のまま、大粒の涙をながすルイス。
「アリスを泣かせました」
仲良くなったのではないのか?
「何をして、泣かせた?」
「ちびだな、って言いました。ちびで、かわいかったから」
「ちびはダメだな。失礼だろ。つまり、ルイスは、小さくてかわいいと思ったのか?」
ルイスはうなずいた。
「だったら、今度会った時、思ったとおり言えばいい。小さくてかわいいとな」
また、ルイスは、大きくうなずいた。
よくよく見ると、無表情ながら、いつもとは違う。わずかに、落ち込んでいるように見える。
無表情が、少し動いたのか?!
よし、私にまかせとけ、ルイス! おまえの初めての頼みだ。この父が、叶えてみせよう!
とういうことで、私はがんばった。
すぐに、アリス嬢の父、ジュリアンと話をした。
が、娘を溺愛するジュリアンは、怒り心頭。もともと、娘を王子の婚約者にするのも乗り気ではなかったのに、ルイスが大泣きさせたからだ。
が、私もルイスに初めて頼まれたのだ。ここはひけない!
その後は、ジュリアンに何度も頼み込んで、最後は手段を選ばず、王命を使って、なんとか婚約をとりつけた。
また泣かせた時は、即刻、婚約を解消することを条件につけられたが。
そして、それを報告した時、ルイスは、ほんのわずか微笑んだように見えた。
121
お気に入りに追加
1,778
あなたにおすすめの小説

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。
アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。
いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。
だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・
「いつわたしが婚約破棄すると言った?」
私に飽きたんじゃなかったんですか!?
……………………………
たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

公爵令息は妹を選ぶらしいので私は旅に出ます
ネコ
恋愛
公爵令息ラウルの婚約者だったエリンは、なぜかいつも“愛らしい妹”に優先順位を奪われていた。正当な抗議も「ただの嫉妬だろう」と取り合われず、遂に婚約破棄へ。放り出されても涙は出ない。ならば持ち前の治癒魔法を活かして自由に生きよう――そう決めたエリンの旅立ち先で、運命は大きく動き出す。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

本日より他人として生きさせていただきます
ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。

わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。
ふまさ
恋愛
伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。
けれど。
「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」
他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる