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無表情に隠された心

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「なんか、私のひとりごとで、大変なことになって申し訳ありません…。でも、それで、なぜ、ルイス殿下が、王子をやめる決断をされるんですか?」
と、私は聞いた。

「アリスが嫌がることをさせたくない」
と、ルイス殿下は、無表情のまま答えた。

なんだか、確固たる強い意志が目に感じられるような気がする。
よくよく見れば、無表情の中にも変化があるんだわ。

…と感心してる場合じゃないわね。

「じゃあ、婚約解消だけしてくださったらよかったのでは?」
と、私が聞く。

「それは嫌だ」
すぐさま、ルイス殿下が答えた。

ますます意味がわからなくなった…。

マーク兄様は、うすうすわかってきたみたいで、あきれたように言った。
「ルイスは、仕事は有能なくせに、なんだ、この変な筋書き? びっくりするほど、不器用だな?」

そして、ため息をついて、
「ほら、自分の言葉でしっかり説明しろ。アリスは、まだ何もわかってないぞ」
と、ルイス殿下に言った。

確かに。混乱してきただけだ。

ルイス殿下は、順をおって、話し始めた。
「アリスが王子妃になるのが嫌と聞き、王子をやめることにした。が、父に言っても、認めてくれない。だったら、認めざるをえないことをしでかそうと思った。俺の評判が落ちることを」

えええ? 

「ちょうどその頃、ピンク色の髪をした変な女がまとわりつきだした。影に調べさせると、最近、男爵の養女になった女で、高位貴族の男に近づく、評判の悪い女だった。が、そこでひらめいた」

もう、嫌な予感しかないよね…。

「評判のいいアリスと婚約を解消し、こんな評判の悪い女と婚約したいといいだしたら、父も王子をやめさせてくれると思い、すぐに行動にうつした」

すごい発想なんだけど…。

「うっとうしかったが、まとわりついてくる女を追い払わずにいた。すると、すぐに噂がひろまった。俺が変な女を連れていると」

まあ、私も、ピンク色の髪をした女性とルイス殿下が親密になっているという風の噂は耳にしていたもんね。
そして、それを聞いた私は、期待に胸がたかなっていたわね…。すみません…。

「それで、もういい頃だと思い、アリスに婚約解消を告げた。すぐに、王にも連絡がいき、呼びつけられた。俺は、王子になるなら、ピンク色の髪の女を王子妃にすると言った。父はグダグダ言っていたが、やっと王子をやめさせてくれることになった。が、一つ条件として、跡継ぎのいない公爵を継ぐことを言い渡された。それで、今日、公爵家に養子に入り、あとを継ぎ、その足で、アリスに再度、婚約を申し込みに来た」

なんというか、すごい行動力ね…。

マーク兄様も、あきれたように、
「ルイス…。変な方向につっぱしりすぎだろ?」
と、言った。

が、はたと、ここで、根本的におかしいことに気がついた。

「でも、私のことに興味ないですよね。なんで、王子をやめてまで、私と婚約したいんですか?」

マーク兄様は盛大にため息をつき、ルイス殿下は、固まった。

あれ? なんか変な質問したかしら?

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