106 / 108
第二章
アランさん
しおりを挟む
不敵な笑みを浮かべるラルフに、顔は微笑んでいるけれど目がわらっていないアランさん。
ふたりの関係がつかみきれない。
「ええと、二人はお友達とか……?」
と、ラルフに聞いてみた。
「いや違う。ただの幼馴染だ」
「そう、ただの幼馴染ですよ」
「なんか、ふたりが『ただの』をやけに強調しているから、『ただの』幼馴染じゃない感じがプンプンするんだけど……」
思わず、心の声がでた瞬間、アイシャがあきれたように言った。
「リリー、その通りよ。アランとラルフ、私もだけど、同じ年で幼馴染なの。小さい頃から、この二人って、つっかかってばっかりなのよね。今もデジャブかと思ったわ。ほんと成長しないというか……」
「つっかかってくるのは、アランのほうだろ」
と、冷たい笑みを浮かべるラルフ。
「まさか。そっちだよね」
と、にこやかなのに、棘のある口調のアランさん。
なるほど、こういう感じか……。
不穏な雰囲気になってきたので、とりあえず、話を変えよう。
「アランさんは、2人の幼馴染ということは、ロジャン国の方ではないんですか?」
アランさんは、ラルフの時とはちがい、邪気のない笑顔を私に向けて答えてくれた。
「はい。僕は子爵家の次男で、ジョルジュ様とアイシャとは遠縁にあたる家なんです。幼少より、2人とは同じ学園に通っていましたが、僕は甘いものが好きで、将来はデザートを作る料理人になりたいと思っていました。学園をやめて、料理人になるための修行がしたいと言ったのですが、両親が大反対で……。そこで、ジョルジュ様が両親を説得してくださり、ロジャン国に呼んでくださったんです。この別邸でデザート担当の料理人として雇ってくださり、修行もできるように、手配してくださって……。ジョルジュ様のおかげで、僕はここにいます!」
と、熱のこもった口調で一気に話したアランさん。
そこで、ジョッシュさんが大きな声で言った。
「そう、アランの言う通り、ジョルジュ様は慈悲深くて、お優しい、素晴らしいかたなんです、リリアンヌ様!
こんな素晴らしいかたは、この世……いえ、それどころか、あの世を探しても、どこにもおられません! ご結婚されたくなりますよね、リリアンヌ様!」
ジョッシュさん……。あの世を探すって……?
「ジョッシュ。やめろ」
ひんやりとした声でジョルジュさんが止めた。
次の瞬間、ものすごい勢いでジョルジュさんに頭をさげたジュッシュさん。
「申し訳ありません、ジョルジュ様!」
そして、私のほうに向きなおると、またまた、ものすごい勢いで頭をさげてから、言った。
「申し訳ありません、リリアンヌ様! 一秒でも早く、リリアンヌ様にジョルジュ様のすばらしさを知っていただき、一秒でも早く結婚を承諾していただき、一秒でも早く奥様としてジョルジュ様のおそばにお招きしたいと、気が急いてしまいました!」
と、すごい目力で私に語りかけてくるジョッシュさん。
すかさず、ラルフが私の前に立った。
「だから、その妄想、やめろ!」
「ジョルジュ様の望まれることなら、妄想であろうが、なんであろうが、実現するのみ! そのためには、私ジョッシュ・ハルクは全力を尽くします! ラルフ様、ご覚悟を!」
ご覚悟って、何……?
ジョッシュさん、色々、変です……。
そう言いたいのを、ぐっと飲み込んだ私。
不穏な空気をまきちらすラルフとジョッシュさん。
が、その時、ジョルジュさんが時計を見て、淡々と言った。
「ジョッシュ、でかける時間だ」
ジョッシュさんは、「はい、ジョルジュ様!」と返事をしたかと思うと、ラルフからさーっと離れた。
そして、私に向かって、「では、リリアンヌ様、ご夕食を楽しみにしております。もちろん、ジョルジュ様が」という言葉を残し、嵐のごとく去っていった。
※ またまた、更新がものすごく遅くなってしまいました。
忘れ去られるくらい遅い更新のなか、読んでくださったかた、本当にありがとうございます!
次の回は、近く更新する予定です。どうぞよろしくお願いいたします!
ふたりの関係がつかみきれない。
「ええと、二人はお友達とか……?」
と、ラルフに聞いてみた。
「いや違う。ただの幼馴染だ」
「そう、ただの幼馴染ですよ」
「なんか、ふたりが『ただの』をやけに強調しているから、『ただの』幼馴染じゃない感じがプンプンするんだけど……」
思わず、心の声がでた瞬間、アイシャがあきれたように言った。
「リリー、その通りよ。アランとラルフ、私もだけど、同じ年で幼馴染なの。小さい頃から、この二人って、つっかかってばっかりなのよね。今もデジャブかと思ったわ。ほんと成長しないというか……」
「つっかかってくるのは、アランのほうだろ」
と、冷たい笑みを浮かべるラルフ。
「まさか。そっちだよね」
と、にこやかなのに、棘のある口調のアランさん。
なるほど、こういう感じか……。
不穏な雰囲気になってきたので、とりあえず、話を変えよう。
「アランさんは、2人の幼馴染ということは、ロジャン国の方ではないんですか?」
アランさんは、ラルフの時とはちがい、邪気のない笑顔を私に向けて答えてくれた。
「はい。僕は子爵家の次男で、ジョルジュ様とアイシャとは遠縁にあたる家なんです。幼少より、2人とは同じ学園に通っていましたが、僕は甘いものが好きで、将来はデザートを作る料理人になりたいと思っていました。学園をやめて、料理人になるための修行がしたいと言ったのですが、両親が大反対で……。そこで、ジョルジュ様が両親を説得してくださり、ロジャン国に呼んでくださったんです。この別邸でデザート担当の料理人として雇ってくださり、修行もできるように、手配してくださって……。ジョルジュ様のおかげで、僕はここにいます!」
と、熱のこもった口調で一気に話したアランさん。
そこで、ジョッシュさんが大きな声で言った。
「そう、アランの言う通り、ジョルジュ様は慈悲深くて、お優しい、素晴らしいかたなんです、リリアンヌ様!
こんな素晴らしいかたは、この世……いえ、それどころか、あの世を探しても、どこにもおられません! ご結婚されたくなりますよね、リリアンヌ様!」
ジョッシュさん……。あの世を探すって……?
「ジョッシュ。やめろ」
ひんやりとした声でジョルジュさんが止めた。
次の瞬間、ものすごい勢いでジョルジュさんに頭をさげたジュッシュさん。
「申し訳ありません、ジョルジュ様!」
そして、私のほうに向きなおると、またまた、ものすごい勢いで頭をさげてから、言った。
「申し訳ありません、リリアンヌ様! 一秒でも早く、リリアンヌ様にジョルジュ様のすばらしさを知っていただき、一秒でも早く結婚を承諾していただき、一秒でも早く奥様としてジョルジュ様のおそばにお招きしたいと、気が急いてしまいました!」
と、すごい目力で私に語りかけてくるジョッシュさん。
すかさず、ラルフが私の前に立った。
「だから、その妄想、やめろ!」
「ジョルジュ様の望まれることなら、妄想であろうが、なんであろうが、実現するのみ! そのためには、私ジョッシュ・ハルクは全力を尽くします! ラルフ様、ご覚悟を!」
ご覚悟って、何……?
ジョッシュさん、色々、変です……。
そう言いたいのを、ぐっと飲み込んだ私。
不穏な空気をまきちらすラルフとジョッシュさん。
が、その時、ジョルジュさんが時計を見て、淡々と言った。
「ジョッシュ、でかける時間だ」
ジョッシュさんは、「はい、ジョルジュ様!」と返事をしたかと思うと、ラルフからさーっと離れた。
そして、私に向かって、「では、リリアンヌ様、ご夕食を楽しみにしております。もちろん、ジョルジュ様が」という言葉を残し、嵐のごとく去っていった。
※ またまた、更新がものすごく遅くなってしまいました。
忘れ去られるくらい遅い更新のなか、読んでくださったかた、本当にありがとうございます!
次の回は、近く更新する予定です。どうぞよろしくお願いいたします!
42
お気に入りに追加
723
あなたにおすすめの小説

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

王宮勤めにも色々ありまして
あとさん♪
恋愛
スカーレット・フォン・ファルケは王太子の婚約者の専属護衛の近衛騎士だ。
そんな彼女の元婚約者が、園遊会で見知らぬ女性に絡んでる·····?
おいおい、と思っていたら彼女の護衛対象である公爵令嬢が自らあの馬鹿野郎に近づいて·····
危険です!私の後ろに!
·····あ、あれぇ?
※シャティエル王国シリーズ2作目!
※拙作『相互理解は難しい(略)』の2人が出ます。
※小説家になろうにも投稿しております。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

番を辞めますさようなら
京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら…
愛されなかった番
すれ違いエンド
ざまぁ
ゆるゆる設定
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる