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第二章
視線がそらせない
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すごい形相で私に視線をおいたまま、ジョッシュさんがジョルジュさんに聞いた。
「つまり…、ミラベル侯爵家のご令嬢リリアンヌ様は、ジョルジュ様の心をつかんだ方…という認識でよろしいですか?!」
「ああ、そうだ。リリアンヌ嬢は、私が長年、悩んでいた言葉の意味を教えてくれた」
「もしや、それは、ドド…、いや、違う。ドララ…、違う…。そう、…ドドランスキルキ…という言葉でしたっけ?!」
「ドラヤキだ」
と、冷静に訂正するジョルジュさん。
ちょっと、ジョルジュさん! よく、そんな冷静に答えられますね?!
ドドランスキルキ…ですよ? なにそれ…?!
ドラヤキと字数すら、全然違うし!
いや、どうしよう…。笑える…。
私は笑いだしそうになるのを、腹筋に力をこめて耐えていると、ジョッシュさんは、がばっと私に振り返った。
「堅実なミラベル侯爵家のご令嬢、お家柄に申し分なし! 人を信用しないアイシャ様のご親友。お人柄に申し分なし!」
「ちょっと、ジョッシュ! 私に失礼よ?!」
と、アイシャが文句を言うが、ジョッシュさんは私を見たまま。
ジョッシュさん、目力が怖いです…。
それに、見た目も言動も熱い感じ。ジョルジュさんとは真逆というか…。
2人を見比べると、真夏と真冬みたいな感じだよね…。
なんて、考えていると、
「リリアンヌ様!」
ジョッシュさんに呼びかけられた私。
「はいっ!」
圧に押されて、思わず、直立して答える。
「不躾ではございますが、ご婚約者様はいらっしゃいますか?」
「いませんが…」
「それは良かった。では、婚約の申し込みをさせていただいても?」
「え? ジョッシュさんが?!」
「いえ、もちろん、ジョルジュ様です」
「ジョッシュ! そのくだりは終わってる」
「えええっ?! 私のいない間に、そんな急展開が…?! 一世一代のジョルジュ様の婚約申し込みという重大なイベントを見逃してしまうとは…」
嘆くジョッシュさんから、視線がそらせない。
こんな人見たことない…。溺愛小説には使えないキャラだけれど、おもしろい…!!
珍しい生きものを見るように凝視していると、ジョッシュさんが私を見た。
ばちっと目があう。
すると、私に向かって、がばっと頭をさげてきた。
えっと…、今度は、何…?
「リリアンヌ様…、ジョルジュ様のご婚約者様になられていたというのに、大変失礼いたしました!」
「いや、まだ婚約者ではない。断られた」
と、ジョルジュさん。
「まだ、じゃない。永遠にだ。そんな未来はこないからな」
すかさず、ラルフが口をはさむ。
が、次の瞬間、ジョッシュさんが叫んだ。
「…はあああ?! 断られた?! だれがですか? まさか、ジョルジュ様が?!」
ものすごい声量に、部屋が振動する。
「落ち着け、ジョッシュ」
ジョルジュさんが、これまた、淡々と注意した。
「いや、落ち着いてなどいられません! 何故、この完璧なジョルジュ様の申し込みを断られるのですか?! あり得ないですよね?! なにひとつ、断る要素がないですよね?! 一体、何がお嫌なのですか、リリアンヌ様? 私が納得できるご説明をお願いいたします!」
ものすごい勢いで、私に問いかけてくる、ジョッシュさん。
「婚約したくないから、断っただけだろ?」
と、ラルフが鼻で笑った。
その瞬間、ジョッシュさんの怒りのオーラが、舞い上がった。
ラルフとジョッシュさんの間に火花が散る。
怖い、怖い、怖い…!
早く説明しないと、命の危機を感じる!
ということで、私は一気にしゃべった。
「いえ、違います! ジョルジュさんは、どらやきが食べたいから、私に婚約を申し込んだです。でも、そんな身をけずらなくても、どらやきを再現することは、喜んでお手伝いさせていただきます、とお伝えしました!」
「…と、彼女は思い込んでいる。なので、時間をかけることにした。今日は、まだ、初対面だからな」
「説得しても無駄だ! リリーはジョルジュさんの婚約者にはならない!」
と、ラルフがジョルジュさんをにらむ。
ジョッシュさんは、私、ジョルジュさん、ラルフを交互に見たあと、うなずいた。
「なるほど…。状況はわかりました。敵はラルフ様ですね?」
不敵な笑みを浮かべるジョッシュさん。
というか、ラルフが敵…?
ジョッシュさんは、ラルフの前に立った。
「ラルフ様、ジョルジュ様と同じ望みを持つなど、早々にあきらめられたほうがよろしいかと…。ジョルジュ様に何ひとつ勝てなかったラルフぼっちゃま?」
そう言うと、口の端をにーっとあげた。
ちょっと、ジョッシュさん!
なに、盛大にラルフにけんかを売ってるんですか…?!
※ 更新が大変遅くなってしまい、すみません!
不定期な更新のなか、読んでくださった方、本当にありがとうございます!
お気に入り登録、エールもありがとうございます! 励みにさせていただいています!
「つまり…、ミラベル侯爵家のご令嬢リリアンヌ様は、ジョルジュ様の心をつかんだ方…という認識でよろしいですか?!」
「ああ、そうだ。リリアンヌ嬢は、私が長年、悩んでいた言葉の意味を教えてくれた」
「もしや、それは、ドド…、いや、違う。ドララ…、違う…。そう、…ドドランスキルキ…という言葉でしたっけ?!」
「ドラヤキだ」
と、冷静に訂正するジョルジュさん。
ちょっと、ジョルジュさん! よく、そんな冷静に答えられますね?!
ドドランスキルキ…ですよ? なにそれ…?!
ドラヤキと字数すら、全然違うし!
いや、どうしよう…。笑える…。
私は笑いだしそうになるのを、腹筋に力をこめて耐えていると、ジョッシュさんは、がばっと私に振り返った。
「堅実なミラベル侯爵家のご令嬢、お家柄に申し分なし! 人を信用しないアイシャ様のご親友。お人柄に申し分なし!」
「ちょっと、ジョッシュ! 私に失礼よ?!」
と、アイシャが文句を言うが、ジョッシュさんは私を見たまま。
ジョッシュさん、目力が怖いです…。
それに、見た目も言動も熱い感じ。ジョルジュさんとは真逆というか…。
2人を見比べると、真夏と真冬みたいな感じだよね…。
なんて、考えていると、
「リリアンヌ様!」
ジョッシュさんに呼びかけられた私。
「はいっ!」
圧に押されて、思わず、直立して答える。
「不躾ではございますが、ご婚約者様はいらっしゃいますか?」
「いませんが…」
「それは良かった。では、婚約の申し込みをさせていただいても?」
「え? ジョッシュさんが?!」
「いえ、もちろん、ジョルジュ様です」
「ジョッシュ! そのくだりは終わってる」
「えええっ?! 私のいない間に、そんな急展開が…?! 一世一代のジョルジュ様の婚約申し込みという重大なイベントを見逃してしまうとは…」
嘆くジョッシュさんから、視線がそらせない。
こんな人見たことない…。溺愛小説には使えないキャラだけれど、おもしろい…!!
珍しい生きものを見るように凝視していると、ジョッシュさんが私を見た。
ばちっと目があう。
すると、私に向かって、がばっと頭をさげてきた。
えっと…、今度は、何…?
「リリアンヌ様…、ジョルジュ様のご婚約者様になられていたというのに、大変失礼いたしました!」
「いや、まだ婚約者ではない。断られた」
と、ジョルジュさん。
「まだ、じゃない。永遠にだ。そんな未来はこないからな」
すかさず、ラルフが口をはさむ。
が、次の瞬間、ジョッシュさんが叫んだ。
「…はあああ?! 断られた?! だれがですか? まさか、ジョルジュ様が?!」
ものすごい声量に、部屋が振動する。
「落ち着け、ジョッシュ」
ジョルジュさんが、これまた、淡々と注意した。
「いや、落ち着いてなどいられません! 何故、この完璧なジョルジュ様の申し込みを断られるのですか?! あり得ないですよね?! なにひとつ、断る要素がないですよね?! 一体、何がお嫌なのですか、リリアンヌ様? 私が納得できるご説明をお願いいたします!」
ものすごい勢いで、私に問いかけてくる、ジョッシュさん。
「婚約したくないから、断っただけだろ?」
と、ラルフが鼻で笑った。
その瞬間、ジョッシュさんの怒りのオーラが、舞い上がった。
ラルフとジョッシュさんの間に火花が散る。
怖い、怖い、怖い…!
早く説明しないと、命の危機を感じる!
ということで、私は一気にしゃべった。
「いえ、違います! ジョルジュさんは、どらやきが食べたいから、私に婚約を申し込んだです。でも、そんな身をけずらなくても、どらやきを再現することは、喜んでお手伝いさせていただきます、とお伝えしました!」
「…と、彼女は思い込んでいる。なので、時間をかけることにした。今日は、まだ、初対面だからな」
「説得しても無駄だ! リリーはジョルジュさんの婚約者にはならない!」
と、ラルフがジョルジュさんをにらむ。
ジョッシュさんは、私、ジョルジュさん、ラルフを交互に見たあと、うなずいた。
「なるほど…。状況はわかりました。敵はラルフ様ですね?」
不敵な笑みを浮かべるジョッシュさん。
というか、ラルフが敵…?
ジョッシュさんは、ラルフの前に立った。
「ラルフ様、ジョルジュ様と同じ望みを持つなど、早々にあきらめられたほうがよろしいかと…。ジョルジュ様に何ひとつ勝てなかったラルフぼっちゃま?」
そう言うと、口の端をにーっとあげた。
ちょっと、ジョッシュさん!
なに、盛大にラルフにけんかを売ってるんですか…?!
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