96 / 108
第二章
現る
しおりを挟む
「それは、私の言い方が悪くて失礼した、リリアンヌ嬢」
私の目をまっすぐに見て、穏やかな口調で謝るジョルジュさん。
え? 今、二人には想像力や理解力がないって言ってませんでしたっけ?
反応が真逆というか…。
「はあ?! なんだそれ?! リリーには言ってることが全然違うじゃないか!」
ラルフが、怒りを含んだ声で言う。
「当然だ。私にとって興味もわかないおまえたちと、興味をもっているリリアンヌ嬢を同じに扱うわけがない」
と、ジョルジュさんは、ラルフを見据えて冷静に答えた。
あの、ジョルジュさん?! なんてことを言うんですか!
挑発的な発言に、ヒヤヒヤするんだけど…。
アイシャがためいきをついた。
「そこまで、あからさまに言われると怒りすらわかないわね…。それで、お兄様。リリーとドラヤキとやらを同列にしていないのなら、どういうおつもりなの? 理解力のない私にも、わかりやすく説明してくれないかしら?」
「今までは私の中で、音だけだったドラヤキ。それを形づけてくれたのがリリアンヌ嬢だ。つまり、私の中のドラヤキはリリアンヌ嬢の教えてくれたものにすでにすり替わっていると言える。これから先、ドラヤキを思い浮かべる時、私は、必ずやリリアンヌ嬢を思うだろう。だが、リリアンヌ嬢を思い浮かべたとて、必ずドラヤキを思うわけではない。つまり、私にとって、リリアンヌ嬢あってのドラヤキ。ドラヤキあってのリリアンヌ嬢では断じてない。故に同列ではない」
「「「…」」」
部屋が静まりかえった。
ジョルジュさんの言ったことを考えてみる…。考えてみる…。考えてみる…。
が、やはり、わからない…。
わかったことは、私の名前とドラヤキがやたらとでてきたことだけだ。
まず、口を開いたのはアイシャ。
「要は、リリーに属するものがドラヤキということ? リリーに属するドラヤキであって、ドラヤキに属するリリーではない? …って、自分で言って、おかしくなるわ! お兄様の思考を理解しようとすることが無理なのよ」
「理解してもらわなくて結構だ」
即答するジョルジュさん。
「お兄様のドラヤキ問題は理解不能だわ…。こんな変なのを、本当にリリーに推していいのかしら…?」
アイシャがぶつぶつとつぶやく。
そんなアイシャから私へと顔をむけたジョルジュさん。
「リリアンヌ嬢。ドラヤキ試作のために、わざわざ大事な休日を使って、この屋敷に通ってくれると言ってくれて、心より感謝する」
あまりに真剣に言われるので、思わず、私の背筋も伸びた。
「いえいえ、私もどらやきを食べたいですし…」
「あと、リリアンヌ嬢の時間のある時にで良いのだが、私に、ドラヤキのある世界について覚えていることを話してくれないだろうか?」
「あ、そんなことなら、いくらでも! 私も、前世の話ができるのは嬉しいです!」
私におまかせあれ!という気持ちをこめて、にっこり微笑む。
すると、何故だか、ジョルジュさんの瞳がとまどうように揺れた。
自信に満ち溢れたラスボスの時とはまるで違う、子犬のような瞳。
なに、そのギャップ?!
ラスボスが一途な溺愛を見せるヒーローの可能性はわかっていたけれど、まさか、そこにかわいい子犬属性まで入るとは!
新しい大型溺愛ヒーロー候補現る!
※不定期な更新で読みづらいと思いますが、読んでくださっている方、本当にありがとうございます!
お気に入り登録、エールもありがとうございます! 大変、励みになります!
私の目をまっすぐに見て、穏やかな口調で謝るジョルジュさん。
え? 今、二人には想像力や理解力がないって言ってませんでしたっけ?
反応が真逆というか…。
「はあ?! なんだそれ?! リリーには言ってることが全然違うじゃないか!」
ラルフが、怒りを含んだ声で言う。
「当然だ。私にとって興味もわかないおまえたちと、興味をもっているリリアンヌ嬢を同じに扱うわけがない」
と、ジョルジュさんは、ラルフを見据えて冷静に答えた。
あの、ジョルジュさん?! なんてことを言うんですか!
挑発的な発言に、ヒヤヒヤするんだけど…。
アイシャがためいきをついた。
「そこまで、あからさまに言われると怒りすらわかないわね…。それで、お兄様。リリーとドラヤキとやらを同列にしていないのなら、どういうおつもりなの? 理解力のない私にも、わかりやすく説明してくれないかしら?」
「今までは私の中で、音だけだったドラヤキ。それを形づけてくれたのがリリアンヌ嬢だ。つまり、私の中のドラヤキはリリアンヌ嬢の教えてくれたものにすでにすり替わっていると言える。これから先、ドラヤキを思い浮かべる時、私は、必ずやリリアンヌ嬢を思うだろう。だが、リリアンヌ嬢を思い浮かべたとて、必ずドラヤキを思うわけではない。つまり、私にとって、リリアンヌ嬢あってのドラヤキ。ドラヤキあってのリリアンヌ嬢では断じてない。故に同列ではない」
「「「…」」」
部屋が静まりかえった。
ジョルジュさんの言ったことを考えてみる…。考えてみる…。考えてみる…。
が、やはり、わからない…。
わかったことは、私の名前とドラヤキがやたらとでてきたことだけだ。
まず、口を開いたのはアイシャ。
「要は、リリーに属するものがドラヤキということ? リリーに属するドラヤキであって、ドラヤキに属するリリーではない? …って、自分で言って、おかしくなるわ! お兄様の思考を理解しようとすることが無理なのよ」
「理解してもらわなくて結構だ」
即答するジョルジュさん。
「お兄様のドラヤキ問題は理解不能だわ…。こんな変なのを、本当にリリーに推していいのかしら…?」
アイシャがぶつぶつとつぶやく。
そんなアイシャから私へと顔をむけたジョルジュさん。
「リリアンヌ嬢。ドラヤキ試作のために、わざわざ大事な休日を使って、この屋敷に通ってくれると言ってくれて、心より感謝する」
あまりに真剣に言われるので、思わず、私の背筋も伸びた。
「いえいえ、私もどらやきを食べたいですし…」
「あと、リリアンヌ嬢の時間のある時にで良いのだが、私に、ドラヤキのある世界について覚えていることを話してくれないだろうか?」
「あ、そんなことなら、いくらでも! 私も、前世の話ができるのは嬉しいです!」
私におまかせあれ!という気持ちをこめて、にっこり微笑む。
すると、何故だか、ジョルジュさんの瞳がとまどうように揺れた。
自信に満ち溢れたラスボスの時とはまるで違う、子犬のような瞳。
なに、そのギャップ?!
ラスボスが一途な溺愛を見せるヒーローの可能性はわかっていたけれど、まさか、そこにかわいい子犬属性まで入るとは!
新しい大型溺愛ヒーロー候補現る!
※不定期な更新で読みづらいと思いますが、読んでくださっている方、本当にありがとうございます!
お気に入り登録、エールもありがとうございます! 大変、励みになります!
16
お気に入りに追加
721
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
【完結】彼の瞳に映るのは
たろ
恋愛
今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。
優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。
そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。
わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。
★ 短編から長編へ変更しました。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
完結 この手からこぼれ落ちるもの
ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。
長かった。。
君は、この家の第一夫人として
最高の女性だよ
全て君に任せるよ
僕は、ベリンダの事で忙しいからね?
全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ
僕が君に触れる事は無いけれど
この家の跡継ぎは、心配要らないよ?
君の父上の姪であるベリンダが
産んでくれるから
心配しないでね
そう、優しく微笑んだオリバー様
今まで優しかったのは?
立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる